ラ・ルーチェ弦楽八重奏団 第5回公演|平岡拓也

ラ・ルーチェ弦楽八重奏団 第5回公演

2019年1月4日 東京文化会館 小ホール
Reviewed by 平岡拓也(Takuya Hiraoka)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

<演奏>
ラ・ルーチェ弦楽八重奏団
ヴァイオリン:大江馨、城戸かれん、小林壱成、毛利文香
ヴィオラ:有田朋央、田原綾子
チェロ:伊東裕、笹沼樹

<曲目>
ブラームス:弦楽六重奏曲第2番 ト長調 Op. 36
 (1stVn:城戸、2ndVn:大江、1stVa:田原、2ndVa:有田、1stVc:笹沼、2ndVc:伊東)

ブルッフ:弦楽八重奏曲 変ロ長調 Op. Posth
 (1stVn:大江、2ndVn:小林、3rdVn:城戸、4thVn:毛利、1stVa:田原、2ndVa:有田、1stVc:笹沼、2ndVc:伊東)

グリエール:弦楽八重奏曲 ニ長調 Op.5
 (1stVn:小林、2ndVn:毛利、3rdVn:城戸、4thVn:大江、1stVa:有田、2ndVa:田原、1stVc:伊東、2ndVc:笹沼)

~アンコール~
J. シュトラウス2世(山中敦史編曲):ラルッチ・ラルッチェ・ポルカ
メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調 Op. 20 より 第4楽章

 

2013年結成、2014年から弦楽五重奏以上の編成で演奏会シリーズを行うラ・ルーチェ弦楽八重奏団。その第5回目となる演奏会を聴いた。

七人の侍ならぬ八人の若武者、天晴れ見事な駆け抜けぶりであった。若人特有の尽きせぬエネルギーが全編満ち満ち、アンコールに至るまで「自分たちがまず楽しみ、聴衆も楽しませる」サービス精神も旺盛。
弦楽八重奏という編成は決して曲数の多いジャンルではない。その中でも実演機会稀少なブルッフとグリエールの作品がこれほど輝いて聴こえたのは、ひとえに彼らの凝縮された演奏に依るところが大きいであろう。

長寿に恵まれたブルッフが、その死の年(作曲時82歳)に完成させた『弦楽八重奏曲』。変ロ長調という格調高い調性、憂いを湛えた旋律など、1920年という成立年代を疑いたくなるような後期ロマン派の逸品である。この曲で第1ヴァイオリンを務めた大江馨は、持ち前の艶やかで気品のある美音で全体を無理なく牽引。全曲の導入部を担うヴィオラ2人も実に美しかった。第2楽章で静かな哀しみが綴られたのち、再び前を向き歩みを進める終楽章では低弦が威勢良く躍動。

続くグリエール作品こそは、今夜の白眉であったろう。構成美と土俗的迫力を兼ね備えるこの秘曲に挑んだラ・ルーチェ、アンサンブルにはこれまでの流麗さに荒々しいユニゾンの凄味が加味された。ブルッフの第3楽章でその片鱗を見せた中低弦(有田・田原のヴィオラ、伊東・笹沼のチェロ)はその威力を全開にする。どれだけテンポが速くなり音楽が高潮しても、太い幹としての彼らがブレない。よって高弦はより大胆に舞えるのだ。その合奏の迫力、分厚さは16型の弦合奏を想起させるほどであった。

前半、ヴァイオリンが減じて各楽器2人ずつとなるブラームス『弦楽六重奏曲第2番』も流麗で美しい演奏であったが、現在のラ・ルーチェと抜群の相性を示したグリエールに比すると最終的な印象はやや薄い。

アンコール1曲目は、新年を祝う『トリッチ・トラッチ・ポルカ』を彼ら仕様に編曲した『ラルッチ・ラルッチェ・ポルカ』。シュトラウス2世の他作品やパガニーニ的技巧が忙しなく現れ、遂にはパガニーニそのものまで登場するという洒落の効いたアレンジ。ラ・ルーチェの腕利きぶりを存分に活かしてくれた。2曲目のメンデルスゾーンでは再び落ち着きを取り戻し、調和のとれた響きを聴かせた。

全3曲+アンコール、実に闊達で情報量の多い演奏であった。それぞれの楽器の第1奏者が入れ替わることでアンサンブルの攻守や閃きの在り方が微妙に変化し、良い意味で次の展開が予測不能なのも面白い。奏者自身が筆をふるうプログラム・ノートも含め、演奏会全体にメンバーの青春の一こまが刻み付けられているような印象すら受けた。熱気充分、されど爽やかな余韻を残す一夜だ。

(2019/2/15)