鈴木秀美のガット・サロンVol. 12 シューマンの室内楽|大河内文恵

~オリジナル楽器で聴く珠玉の室内楽~鈴木秀美のガット・サロンVol. 12 
シューマンの室内楽<弦の音色、木の響き>

2018年11月11日 Hakuju Hall
Reviewed by 大河内文恵(Fumie Okouchi)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayasi)

<演奏>
岡本誠司(ヴァイオリン)
成田寛(ヴィオラ)
鈴木秀美(チェロ)
小倉貴久子(フォルテピアノ)

<曲目>
R.シューマン:花の曲 変二長調 作品19
       おとぎの絵本 作品113
       ピアノ三重奏曲(幻想小曲集) 作品88

~休憩~

R.シューマン:ヴァオリンソナタ第3番 イ短調 WoO27
       ピアノ四重奏曲 変ホ長調 作品47

~アンコール~
ブラームス:ピアノ四重奏曲第3番 第3楽章

 

鈴木秀美のガット・サロンのシリーズは2007年にロマン派の室内楽のシリーズとして始まり、当初からオリジナル楽器での演奏を掲げている。その12回目、シューマン・プログラムの回に足を運んだ。

近年、これまで古楽器といわれてきた範疇の楽器は、「ピリオド楽器」「オリジナル楽器」と呼ばれるようになることで、バロック時代あたりまで(18世紀半ば頃まで)だけでなく、古典派・ロマン派の「同時代の楽器」にも拡大して使われるようになった。今年9月、ポーランドにおいて「第1回 ショパン国際ピリオド楽器コンクール」が開催されたことに象徴されるように、「オリジナル楽器」という概念はもはや、「古楽器奏者」だけでなく、一般の演奏家にとっても無視することのできないところまできていると言えるだろう。などとつらつら考えながら開演を待つ。

1曲目はフォルテ・ピアノのソロによる『花の曲』。小倉による演奏は、モダン・ピアノと異なり、細かいニュアンスが繊細に表現されていた。とりわけ転調する部分では、調の変わり目でがらっと雰囲気が変わるのが非常によくわかるにもかかわらず、そこにあざとさがなく自然に聴こえるのが印象的であった。フォルテ・ピアノがモダン・ピアノに変わっていく際に削ぎ落とされてしまったものが取り戻されたような、フォルテ・ピアノらしさが堪能できる時間だった。

つづく『おとぎの絵本』はヴィオラとフォルテ・ピアノによる演奏。冒頭の跳躍音程に力みがなくナチュラルに聞こえたのはガット弦のお陰か。またガット弦のせいか、音域が変わると音色が変わるのが興味深く、逆説的だが、とてもヴィオラらしい音だなと思いながら聴いた。前半の最後に演奏されたヴァイオリン、チェロ、フォルテ・ピアノの三重奏では、第2楽章から俄然生き生きとしてきて、楽しめる演奏だった。

後半はヴァイオリン・ソナタから始まった。モダンの楽器で弾くとかなり劇的な始まりかたをする曲だが、ガット弦だからかアタックをつけずにスルッと始まる。テンポが速くディナーミクが強いところでは、楽器の性能を演奏が上回ってしまっているのではないかと思われる箇所があったが、2楽章はとても良かったと思う。

プログラムの最後はピアノ四重奏曲。今回のプログラムの中では最も知られた曲であろう。それまで伴奏に徹してきた鈴木が、2楽章でソロをとるとやはり安心して聴ける。3楽章、4楽章ともに素晴らしい演奏だった。アンコールは今回唯一のブラームス。ここではチェロの長いソロがあり、鈴木の音色を心ゆくまで堪能できた。

今回のヴァイオリンの岡本とヴィオラの成田はオリジナル楽器に造詣はあるものの、基本的にはモダンの奏者である。おそらく、モダンの奏者にオリジナル楽器を実際に演奏して知ってもらうこともコンサートの目的の1つだったのではないかと思われる。メンバーをすべて古楽器奏者で揃えることも可能であろうところを、敢えてそうしていないというところに、鈴木の矜持を感じた。

(2018/12/15)