フライブルク・バロック・オーケストラ mit キャロリン・サンプソン|藤堂清
フライブルク・バロック・オーケストラ mit キャロリン・サンプソン(ソプラノ)
2018年10月22日 トッパンホール
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林 喜代種 (Kiyotane Hayashi)
<曲目>
ヨハン・ベルンハルト・バッハ:管弦楽組曲第2番 ト長調
J.S.バッハ:カンタータ《わが心は血の海に泳ぐ》BWV199
——————–(休憩)———————-
J.S.バッハ:オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1060a
J.S.バッハ:結婚カンタータ《今ぞ去れ、悲しみの影よ》BWV202
—————–(アンコール)——————-
山田耕筰:からたちの花
J.S.バッハ:カンタータ《わが心は血の海に泳ぐ》BWV199-8.アリア
<演奏>
キャロリン・サンプソン(ソプラノ)
アンネ・カタリーナ・シュライバー(音楽監督&ヴァイオリン)
カタリーナ・アルフケン(オーボエ)
フライブルク・バロック・オーケストラ
(弦楽:4×4×2×2×1、リュート、オーボエ、ファゴット、チェンバロ/オルガン)
ドイツの古楽アンサンブル、フライブルク・バロック・オーケストラが来日、ソプラノのキャロリン・サンプソンを迎え、ヨハン・セバスチャン・バッハの作品をメインとするコンサートを行った。
1曲目の《管弦楽組曲第2番》の作曲家ヨハン・ベルンハルト・バッハは、大バッハの「はとこ」にあたり、彼と同じ時代にアイゼナハでチェンバリスト、オルガニストとして活動した。
この曲は、大バッハの管弦楽組曲と同様、序曲とそれに続くガヴォット、サラバンド、ジーグといった舞曲で構成される。なかなかの佳曲で、フライブルク・バロック・オーケストラのはずみのある演奏もあり、体全体をほぐしてくれるよう。
カンタータ《わが心は血の海に泳ぐ》は、J.S.バッハのワイマール時代の作品。”Mein Herze schwimmt im Blut” という悲痛な言葉で始まるレチタティーヴォ、みずからの罪を恥じ、神の赦しを乞う。最後のアリアでは、神の赦しを得られた喜びを歌う。
サンプソンの声はどの音域でも、どれほど強弱をつけても、聴き手をあたたかく包んでくれる。アルフケンのオーボエが、どこか懐かしさを感じさせる音でそれに寄り添う。
シュライバーが大きな動作でオーケストラに指示を出しているが、それで合わせているという印象はなく、全員が互いに聴きあい、音を作っている。
休憩後の1曲目、《オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調》は、もともとの作品は失われており、編曲された《2台のチェンバロのための協奏曲 ハ短調》から復元されたもの。オーボエとヴァイオリンには技巧が要求される。アルフケンとシュライバーの独奏部分での絡みや、その音色は古楽器を聴く喜びを感じさせてくれた。
同じ演奏会で聴き比べると、ヨハン・ベルンハルト・バッハと大バッハとの違い、楽器の音の重ね方、リズムの変化による表現の多様化といった点で、曲を構築する能力の差がはっきり分かってしまう。
結婚カンタータ《今ぞ去れ、悲しみの影よ》は、いつ、だれのために作られたのか分かっていないが、世俗カンタータの代表作として演奏されてきている。ソプラノに、ヴァイオリン、オーボエが絡み合い、明るい曲想を彩る。
サンプソンの言葉に対する感性の細やかさが、レチタティーヴォで特に感じられる。
アンコールは2曲。《からたちの花》は、昨年12月王子ホールでのリサイタルでもアンコールでとりあげた。日本語がわかっているかのような表情付けに感嘆。最後に《わが心は血の海に泳ぐ》から8曲目のアリア、赦しに対する感謝の喜びをもって締めくくった。
キャロリン・サンプソン、バッハ・コレギウム・ジャパンとのコンサートもよいが、フライブルク・バロック・オーケストラとの今回の共演、よりのびのびとしているように感じられた。
(2018/11/15)