Pick Up(2018/10/15)|ロンドン交響楽団と日本の子どもたちによるワークショップ成果発表|丘山万里子

ロンドン交響楽団と日本の子どもたちによるワークショップ成果発表

2018年9月29日 サントリーホール ブルーローズ
text by 丘山万里子(Mariko Okayama)
photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

この9月来日のロンドン交響楽団(LSO)は1990年に教育プログラム「Discovery」を立ち上げ、音楽に触れる機会の少ない様々な人々を対象に音楽を提供している。
そのワークショップ・リーダーであるレイチェル・リーチが2名のロンドン交響楽団の演奏家とともに8~9月にかけて来日、曲作りやオーケストラの楽しさを子供たちが体験するワークショップを実施した。その成果発表が LSO9/29公演の開演前に披露された(内容20分、ブリティッシュ・カウンシル主催)。

ワークショップ参加の子供たちはすみだトリフォニー・ジュニアオーケストラと一般公募(ブリティッシュ・カウンシルによる)で選ばれた小学3~6年生のメンバー28名。みんなカジュアルな格好だが、いささか緊張した面持ちでステージに並ぶ。
左右に分かれ、一つはジュニア・オーケストラ団員6名(vn3、fl、cl、tp各1名)と一般公募の子どもたちのミックス組、もう一つは公募のみの組。公募組は、インターナショナルスクールに通う子や英語に興味を持つ家庭の子らだとかで、楽器に日頃馴染んでいる子は全体の約半分ほど、経験皆無もいるそうだ。真ん中の小さなチェリストが飄々と全体を見渡す(個別のワークショップは各組2回、合同リハ1回)。
リーチらの協力のもと、マザーグースを題材にしたラヴェル『マ・メール・ロワ』(LS0本公演曲目)から<眠れる森の美女><パゴダの女王レドロネット><美女と野獣>の物語を選び、自分たちの発想とアイデアで曲を創り上げたとのこと。彼らによれば、「自信作!」。
なるほどお話のイメージを彷彿させる音が色合い豊かに広がる。オーケストレーション、なかなかのもの。ロンドン響の管2人と日本の弦、管奏者3名が笑顔でサポート。
前半は左、後半は右、最後は全員。これまた小さな指揮者が立ち上がり、ひょこひょこ出てきて身構える。脇に垂らした両手をだんだん上に挙げ、さあ行くぞ行くぞ・・・やあっとてっぺんから振り下ろし、一斉にジャーン!で決め。
とっても素朴。いかにも自分たちで作った曲だぞ感。大人による「やらせ感」がほぼない。
この種のワークショップは「音楽ってこんなに楽しいんだよ!」的大人の押し付け胡散臭さがどことなくあったりするが、とにかく実体験が大事なのは確か。
日本の各オーケストラや団体、ホールだってこういうことはちゃんとやっているのだが、メディアはそうそう取り上げない・・・我が身を猛省する。

子どもたちの演奏前に2つの映像紹介があった。
一つは墨田区の障害のある子供たちが通う施設「キッズサポートりま」の子らとのワークショップ。未就学児から高校3年生まで重い心身障害のある児童の通所施設だそうで、6、7人の子供にそれぞれサポートがつき、みんなで音楽を奏でる様子。リーチさんらの合図に合わせて何かを叩いたりこすったり、リズムにのって体を揺らす子、ずっと笑顔の子、いろいろな表情。「なんかいい気持ち」が全身から溢れる。
もう一つはやはり墨田のこちらは秋光園(介護老人保健施設)の高齢者たちとのワークショップ。認知症、内臓疾患などを抱える人たちの日常生活へのリハビリ施設で、音楽療法士による週3回の音楽クラスがあるそうだ。そのクラスから数人の参加で、やはり「気持ちいい、楽しい」が伝わってくる。
高齢者といえば、両親が晩年山梨のケアマンションで過ごしたことから、月々通う中で考えること多々、頼まれて毎年、音大で声楽専攻した妹と歌やピアノ演奏の小さなコンサートをやっており、父が参加する音楽体操クラスにも何度か顔を出し、それが契機で音楽療法を学んだ時期がある。
療法士の資格を目指し、ダウン症や自閉症児たちのクラスでの実習とか、高齢者用の音楽療法CDアルバムを監修したりもしたので、いろいろなことを思い出した。
両親をマンションで看取って以降、遠ざかってしまった・・・。

子らの、高齢者たちの顔を思い浮かべつつ、自問する。
私たちは、何を分かち合え、何を分かち合えないか。
そこに音楽はどのように「ある」のか。自分はその、どこに居るのか。
音楽を語る「責」。

(2018/10/15)