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撮っておきの音楽家たち|ニコラ・アルトシュテット|林喜代種

ニコラ・アルトシュテット(指揮&チェロ奏者)

photos & text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

1982年にニコラ・アルトシュテットは一方はドイツ系、もう一方がフランス系のルーツを持つ家庭に生まれた。同世代の音楽家の中でもエキサイティングに成功した若手アーティストである。ステージに現れたアルトシュテットはタキシードでなく、モダンなデザインの衣装で、せわしなく動きの速い指揮をする。オール・ハイドン・プログラム。今回率いてきたオーケストラは「ハイドン・シンフォニー」、約45名のメンバーはチェロを除いて全員立ったままの演奏スタイル。このオケは1987年に指揮者アダム・フィッシャーのもと、ウィーン・フィルとハンガリー国立フィルのメンバーによって設立された。2015/16シーズンからチェリストであるニコラ・アルトシュテットが音楽監督を務める。
オーケストラの名称も「ハイドン・シンフォニー」とだけ表記される。本拠地はアイゼンシュタット、エステルハージ城内のハイドン・ザール (ハイドンが多くの曲を生みだした場所) に置かれている。
ニコラ・アルトシュテットの師は高名なロシアのチェロ奏者であるボリス・ぺルガメンシコフの最後の弟子である。その後エバーハルト・フェルツのもとで研鑽を積む。アルトシュテットは今回の公演ではハイドンのチェロ協奏曲第1番を弾き振りした。オーケストラの前面中央で客席に向かってチェロを弾く。指揮の忙しい動作とは違ってとてもきれいな音と優雅さを聴かせる。指揮とはまた別の魅力を垣間見せる。ユニークな存在感を感じさせる。
彼はいくつかの国際音楽コンクールで優勝したあと、2009年ボルレッティ=ブイトーニ財団賞を受賞。2010年クレディ・スイス・ヤングアーティスト賞に輝き、ルツェルン音楽祭に於いてシューマンのチェロ協奏曲をグスターボ・ドゥダメル指揮ウィーン・フィルと共演する栄誉を与えられた。2010年9月BBCの新世代アーティスト・スキームの仲間入りをしている。
2012年からはギドン・クレーメルのすすめでロッケンハウス室内楽フェスティヴァルの新芸術監督としてクレーメルの後任者となる。2017年BBCミュージックマガジン誌の「協奏曲賞」を受賞。コンチェルトの録音では常に評価が高い。2019年1月には山田和樹指揮読響でラロのチェロ協奏曲を演奏予定。

(2018/7/15)