プロイセンの宮廷から~フリードリヒ大王の宮廷楽士たち~|大河内文恵

プロイセンの宮廷から~フリードリヒ大王の宮廷楽士たち~

2018年3月2日 杉並公会堂小ホール
Reviewed by 大河内文恵(Fumie Okouchi)
Photos by やすだなお/写真提供:古楽アンサンブル「プティ・ヴィオロン」

<演奏>
古楽アンサンブル「プティ・ヴィオロン」
佐藤駿太(指揮・ヴァイオリン独奏)
吉崎恭佳(フラウト・トラヴェルソ)

<曲目>
C. H. グラウン:歌劇《チェーザレとクレオパトラ》序曲
J. G. グラウン:シンフォニア ニ長調
J. J. クヴァンツ:フルート協奏曲 ホ短調

~休憩~

J. G. ヤニチュ:シンフォニア 変ロ長調
F. ベンダ:ヴァイオリン協奏曲 ハ長調
C. P. E. バッハ:シンフォニア ト長調

~アンコール~
フリードリヒ2世:フルート協奏曲第1番ト長調より 第3楽章

 

フリードリヒ大王に焦点を当て、当時のプロイセン宮廷に関わりのある音楽家の作品を並べた意欲的なプログラムは、弦楽器3人とチェンバロによる開演チャイムで始まった。まず初めに、1742年にベルリンの歌劇場(現在のシュターツオーパー)の杮落しで上演されたC.H.グラウンのオペラ《チェーザレとクレオパトラ》の序曲が演奏され、コンサートの幕があがる。プロイセン宮廷の黄金時代の始まりを告げる、またとない選曲である。管楽器が入らない編成ということもあり、全体的に軽めの演奏で軽快にさくさく進む。つづく兄J.G.グラウンの曲は装飾音がフランス風に華やかに奏され、フランスものを得意とするこのアンサンブルの良さが活かされていた。

フラウト・トラヴェルソ奏者の吉崎を迎えてのクヴァンツの協奏曲が始まった途端、「音が変わった」と思った。急に「大人の音」になったのだ。ソリストが加わるだけでアンサンブルの音がこうも変わるのかと驚くと同時に、吉崎の音にしっかり追随できるだけの技量を持ち合わせていることにも気づかされた。トゥッティ(総奏)のときには時折アンサンブルに埋もれがちなフラウト・トラヴェルソだが、カデンツの素敵なことと言ったら。だんだん耳が慣れてくると、トゥッティのときにもフラウト・トラヴェルソの音がきちんと聞こえてくるのが不思議である。

後半はヤニチュの『シンフォニア』から。現在ほとんど知られていない作曲家ではあるが、なかなかの佳曲である。18世紀半ばに特徴的な快速の1楽章、J.S.バッハを思わせる憂いを帯びた2楽章、そして3/8拍子の早い舞曲の3楽章と、まさに時代が大きく動いている様相が如実に反映されており、過渡期独特の魅力が詰まっている。

主宰でありソリストでもある佐藤の独奏によるF.ベンダのヴァイオリン協奏曲は、器楽的ではない曲想が印象的であった。弓の技巧が要求される部分で苦戦している様子が一瞬垣間見られたものの、艶やかな音で、まるで歌唱旋律のようなメロディーを堪能させてくれた。

最後に演奏されたC.P.E.バッハの『シンフォニア』は完成度という点でも聴き映えという点でもやはり群を抜いていた。疾走し、変幻自在な和声を行き交う上声部にそれをしっかり下支えする中・低音楽器群とのバランスが非常によく、このアンサンブルの底力が最もよく発揮された。3楽章のメヌエットはフランス風のふわっとした感じと3拍子から逸脱した部分の洒脱さをよく出しており、さすがと思わされた。

当日配布された冊子の作品解説や主宰のインタビューから、よく準備された演奏会であることが察せられた。若手の集まりであるこのアンサンブル、今後の更なる飛躍を期待したい。

(2018/4/15)