ピエール・アンタイ&スキップ・センペ チェンバロ・デュオ・リサイタル|藤堂 清

ピエール・アンタイ&スキップ・センペ チェンバロ・デュオ・リサイタル

2017年12月8日 武蔵野市民文化会館小ホール
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

<演奏>
ピエール・アンタイ(チェンバロ:ジャーマンタイプ、Jan Kalsbeek 2000年製作、ミートケモデル)
スキップ・センペ(チェンバロ:フレンチタイプ、Ryo Yoshida 1992年製作、18世紀フランスモデル)

<曲目>
ラモー:二台のチェンバロのためのシンフォニー

Ⅰ.

序曲 (《優雅なインドの国々》より) Ouverture [Les Indes galantes, 1735]
ロンド形式のミュゼット(同上より) Musette en rondeau [Les Indes galantes]
メヌエット(同上より) Menuets [Les Indes galantes]
タンブーラン(同上より) Tambourins [Les Indes galantes]
ポーランド人のエール(同上より) Air pour les Polonais [Les Indes galantes]
アフリカの奴隷たちのエール(同上より) Air pour les Esclaves Africains [Les Indes galantes]
ミュゼット(《プラテーまたは嫉妬するジュノー》より) Musette [Platée, 1745]
シャコンヌ (《ダルダニュス》より) Chaconne [Dardanus, 1739]

Ⅱ.

前奏曲(《ダルダニュス》より) Prélude [Dardanus]
ロンド形式のタンブーラン(《エベの祭典またはオペラの才能》より) Tambourins en rondeau [Les Fêtes d’Hébé ,1739]
内気(《クラヴサン合奏曲集》より) La Timide [Pièces de clavecin en concerts, 1735]
ペルーのインカ人のエール(《優雅なインドの国々》より) Air pour les Incas du Pérou [Les Indes galantes]
悪魔たちの踊り(《カストールとポリュックス》より) Air pour les Démons [Castor et Pollux, 1737]
サラバンド (《ゾロアストル》より) Sarabande [Zoroastre, 1749]
トルコの庭師のエール (《優雅なインドの国々》より) Air pour les Bostangis [Les Indes galantes]
マレ(《クラヴサン合奏曲集》より) La Marais [Pièces de clavecin en concerts]

Ⅲ.

優しい二重唱のエール(《ダルダニュス》より)Air tender en duo [Dardanus]
序曲 (《ピグマリオン》より) Ouverture [Pygmalion, 1747]
メヌエット(《イポリートとアリシー》より) Menuets [Hippolyte et Aricie, 1733]
挑発的な女 (《クラヴサン合奏曲集》より) L’Agacante [Pièces de clavecin en concerts]
ヴィエル風のメヌエット(《プラテーまたは嫉妬するジュノー》より) Menuets dans le goût de la vièle [Platée]
未開人(《優雅なインドの国々》より) Les Sauvages [Les Indes galantes ]
おしゃべり(《クラヴサン合奏曲集》より) L’Indiscrète [Pièces de clavecin en concerts]
前奏曲(《ダルダニュス》より) Prélude [Dardanus]
シャコンヌ(《優雅なインドの国々》より) Chaconne [Les Indes galantes]
タンブーラン(《ダルダニュス》より) Tambourins [Dardanus]

—————(アンコール)—————-
シャコンヌ (《ダルダニュス》より) Chaconne [Dardanus]
序曲(《優雅なインドの国々》より) Ouverture [Les Indes galantes]
未開人(《優雅なインドの国々》より) Les Sauvages [Les Indes galantes]

 

ピエール・アンタイとスキップ・センペという世界トップクラスのチェンバリスト二人の協演、ジャン・フィリップ・ラモーのオペラから抜粋した曲を2台のチェンバロ向けに編曲し、演奏。ラモーの曲もすばらしいのだが、アンタイ、センペの掛け合いの妙技に圧倒された。

舞台上にチェンバロをハの字のように並べ、下手側のアンタイはやや舞台向き、上手側のセンペは少し客席向きに座る。アンタイからセンペのチェンバロの鍵盤や動きは見えるが、センペには客席と壁しか見えない配置である。したがって、曲の入りで合わせが必要なケースではセンペが主導し、アンタイが従う。

演奏が始まってまず感じたことは、チェンバロがこれほどまでに鳴りうるのだということ。二人とも無理なく弾いているのだが、そのダイナミクスの幅は大きく、客席数400のホールに音が響くというより、ホール全体が鳴っているという印象。
楽器のタイプが、アンタイはジャーマンタイプ、センペはフレンチタイプと異なるので、音色にも当然違いはあるが、二人の個性がそれをさらに拡大している。アンタイの骨太ながっちりした音に対し、センペの華やかな響き。もっとも、楽器を入れ替えたとしても傾向は変わらなかっただろう。それだけの技量を二人とも持っている。

《二台のチェンバロのためのシンフォニー》を三つのブロックに分け、その間で舞台から一旦下がるがすぐに戻り、休憩を入れることなく弾きとおした。ブロックの中では曲間を空けずに一続きのものとして扱った。
ラモーの初期のオペラ=バレ《優雅なインドの国々》の序曲から、ミュゼット、メヌエット、タンブーランと舞曲が続く。センペからアンタイ、アンタイからセンペといった受け渡し、両者がともに弾く場面、どのような場合でも相手の音を聴きつつ、それぞれの主張を打ち出していく。協調よりも競奏という印象だが、それでも分解してしまうことはなく、ぎりぎりのところまで丁々発止をくりかえしている。聴いている側は曲のさまざまな面を拡大して見せられているようで飽きることがない。

舞台の二人は冷静に弾き続けているのだが、客席の方は熱気に包まれていく。最後のブロックでは〈未開人〉のあたりから、それもピークとなり、座っていながら舞曲の渦に巻き込まれているような気分に。

弾き終えた二人に、文字通り熱い拍手がおくられた。アンコールは3曲。最後は、お約束のように、《優雅なインドの国々》より〈未開人〉。
ラモーの掌のなかで楽しく踊った一夜であった。

(2018/1/15)