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アンサンブル室町 in 歌舞伎町!!|大河内文恵

アンサンブル室町 in 歌舞伎町!!

2017年12月22日 新宿FACE
Reviewed by 大河内文恵(Fumie Okouchi)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)/12/22 リハーサル

<演奏>
鷹羽弘晃(指揮)
ローラン・テシュネ(芸術監督)
Ai(ジャグリング)、青柳呂武(口笛)、浅井信好(ダンス)、市瀬陽子(バロック・ダンス)、伊藤キム(ダンス)、上杉清仁(カウンターテナー)、KAZ(ジャグリング)、神庭広希(ジャグリング)、菊沢将憲(朗読)、斎藤説成(声明)、澤亜樹(ヴァイオリン)、アレッシオ・シルヴェストリン(ダンス)、中山マリ(朗読)、野々下由香里(ソプラノ)、花柳美輝風(日本舞踊)、船木こころ(ダンス)、萬浪大輔(朗読)、山本裕(ダンス)
アンサンブル室町

<曲目>
伊東光介:声明と口笛のための「祝辞」(委嘱作品・世界初演)
張替夏子:追憶の風(2007年委嘱作品抜粋)
篠田大介:TWINE(2007年委嘱作品抜粋)
築田佳奈:NODE(2007年委嘱作品抜粋)
松浦真沙:絡新婦 ~能管・笙・チェンバロのための(委嘱作品・世界初演)
木下愛子:黎明 ~能管、尺八、箏、テオルボ、鼓のための(委嘱作品・世界初演)
齋藤圭子:Intermezzo(委嘱作品・世界初演)
上田真樹:ここ過ぎて(委嘱作品・世界初演)
小林弘人:中務の和歌による素猫((委嘱作品・世界初演)

山下恵:夢遊び(2008年委嘱作品抜粋)
成田和子:Sômon remix 2017(2008年委嘱作品リミックス抜粋)

アラン・モエーヌ:De la nuit(委嘱作品・世界初演)
山本和智:図像学(2010年委嘱作品抜粋)
エディット・ルジェ:Toute la nature sort de l’or…(2010年委嘱作品抜粋)
末吉保雄:JIZO(2011年委嘱作品抜粋)
阿部俊祐:音の影(2011年委嘱作品抜粋)
ジャン=フェリ・ルベル:Les caractères de la danse(1715年抜粋)

権代敦彦:シューニャ(委嘱作品・世界初演)

李義敬:an in-between ; togetherness and separation(委嘱作品・世界初演)
桑原ゆう:Moon Spell for solo shomyo and 6musicians(委嘱作品・世界初演)
増本伎供子:葵乃上(2012年委嘱作品抜粋)
金子篤夫:INTERMEZZO(2012年委嘱作品抜粋)
オレリアン・デュモン:KAIMAMI(2012年委嘱作品抜粋)
網守将平 :OFFULA(2012年委嘱作品抜粋)
一柳慧:ミラージュ(1998年抜粋)
福田恵子:BACH・残照~尺八とバロックチェロのために(委嘱作品・世界初演)
久木山直:Les étoiles -Happy birthday Muromachi-(委嘱作品・世界初演)

エディット・ルジェ:風景の秘密(2013年委嘱作品抜粋)
ブリューノ・デュコル:ワンフォ、あるいは夢の色彩(2013年委嘱作品抜粋)
鈴木純明:ネーレイデスに恋した男~アンサンブルのための(2013年委嘱作品抜粋)
北爪裕道:浮世の絵師(2013年委嘱作品抜粋)

クリストフ・グルック:オルフェオとエウリディーチェ(1774年抜粋)
山根明季子:くるくるおどりゑ(2014年委嘱作品抜粋)
オレリアン・デュモン:黄泉の国から(2014年委嘱作品抜粋)
クリストフ・グルック:オルフェオとエウリディーチェ(1774年抜粋)
黒田崇宏:”Sentence” and “State” do often agree(委嘱作品・世界初演)
坂東祐太:ChillOut Music [After: monologue and crosstalk session 404](委嘱作品・世界初演)
クロード・ルドゥ:Echoing Eyes(委嘱作品・世界初演)
夏田昌和:Sur Sol(委嘱作品・世界初演)

三宅悠太:Amorph ―即興的音風景による庭と追憶―(2015年委嘱作品抜粋)
エドガー・ヴァレーズ:密度21.5(1936年抜粋)
中島夏樹:Interlude(委嘱作品・世界初演)
神本真理:Gouttes de la fête 祭りの雫(委嘱作品・世界初演)

木下正道:Primes/Primitive for 22 players(委嘱作品・世界初演)
青柿将大:Decadestone for 10 players(委嘱作品・世界初演)
エリック・サティ:スポーツと気晴らし「タンゴ」(1914年)
ゼミソン・ダリル:コノソ(2016年委嘱作品)
エリック・サティ:スポーツと気晴らし「ブランコ」「ゴルフ」(1914年)
フロラン・キャロン=ダラス:ポータル(2016年委嘱作品抜粋)
エリック・サティ:ソクラテス(1917年抜粋)
川島素晴:Ten Steps 10の邦楽器と10の西洋古楽器のための(委嘱作品・世界初演)
阿部加奈子:高砂~篳篥とアンサンブルのための(委嘱作品・世界初演)

ジャン=フェリ・ルベル:Les caractères de la danse(1715年抜粋)

 

出演者と曲目を列記するだけですでに紙幅が尽きてしまったことからも明らかなように、盛りだくさんな演奏会だった。アンサンブル室町は2007年にヨーロッパと日本の「古楽器」によるアンサンブルとして結成され、毎年何らかの統一テーマによる公演を重ねてきた。今回は10周年記念として、これまでの公演の回顧と新たに委嘱された初演作品を組み合わせたもので、過去の作品はおおよそ演奏された年代順に並べられ、その間に新作が演奏されるという仕組みである。

30人弱のアンサンブル・メンバーに多彩なゲストが加わっての2時間強を過ごしてみて、真っ先に頭に浮かんだのは「場」という概念である。普段ほとんどない交流のない、西洋古楽器奏者と邦楽器奏者が交わる場を出発点として、そこに新作を作曲する作曲家が加わり、演劇界から朗読者、さまざまなバックグランド(バレエ、コンテンポラリー、バロック・ダンス、日本舞踊など)をもつダンサー、ジャグリング、声明、口笛といった異世界とが繋がり、見たことも聞いたこともない世界を作り出す場。本来交わらないものが一緒になるのだから、そこに摩擦や違和感が生じるのは当然であるが、その中にひょっこり「意外にぴったり」な組み合わせが紛れ込む。

現代洋楽器と邦楽器との組み合わせは、洋の東西を問わず幾多の作曲家が試みてきたものであるから、ある程度察しがつくが、古楽器と邦楽器との組み合わせかたは無数にある上に決まった組み合わせがあるわけではない。どの楽器とどの楽器を使い、どういう奏法をつかって組み合わせるかは作曲家のセンスと運にかかっている。そして、その作品をどれだけ説得力をもって音楽として実現させるかは、奏者と演者の力量にかかっている。今回は大量の作品を演奏したために、過去の作品は抜粋で演奏され、新作はどれもごく短いものとなっている。このように次々といろいろな組み合わせを聴くと、否が応でもそれぞれのよしあしが焙り出される。

作曲の観点からみると、西洋古楽器もしくは邦楽器にもう一方の楽器群を寄せたもの、どちらにも片寄らず新しい響きを作り出しているものとに大きく分けられるが、前者で印象的だったのは、福田作品であった。バッハの無伴奏チェロ組曲をベースに邦楽器とチェロがパラフレーズしていく。バッハ作品のもつ懐の深さゆえか、バッハが解体されているというよりはそれを起点としてさらに豊かな世界が広がっていった。後者でとくに印象に残ったのは山根作品と坂東作品であった。また、権代作品は扱いの難しい声明も含め、ほとんどの楽器を総動員して用いつつ、うまくまとめており、その手腕に唸らされた。純粋に曲としておもしろかったのは北爪作品、また、中島作品がミニマル・ミュージックっぽい作りで楽しめた。

ゲストとの共演で興味深かったのはモエーヌ作品で、非常に切り詰めた音で構成されている音楽をあたかもダンサーが紡ぎ出しているかのように、ダンサーの動きが作品の形成過程を支配していた。ルドゥ作品でもジャグリングが音楽全体を引き締める効果をもっており、1+1が2ではないコラボレーションにやられたという感じであった。

全曲終了後には、作曲家とテシュネが舞台にあがり、全員でサングラスをかけ、コンピュータから流れるテクノ音楽で踊り狂うというお祭り騒ぎ。この「場」が今後どのように展開していくのか、目が離せない。

(2018/1/15)