日本フィルハーモニー交響楽団 第695回 東京定期演奏会|藤原聡

日本フィルハーモニー交響楽団 第695回 東京定期演奏会 

2017年11月17日 サントリーホール 
Reviewed by 藤原聡(Satoshi Fujiwara) 
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi) 

<演奏>
ピエタリ・インキネン指揮/日本フィルハーモニー交響楽団 

<曲目>
ラウタヴァーラ:In the Beginning(日本フィル共同委嘱作品/アジア初演)
ブルックナー:交響曲第5番 変ロ長調 WAB105 

 

インキネンは日本フィルにおいて既にブルックナーの交響曲を2曲――『第7番』と『第8番』――演奏している。今年の4月にはブラームスの交響曲全曲を、そして5月にはワーグナーの『ラインの黄金』をも演奏会形式で(しかも特別演奏会ではなく定期演奏会で)取り上げている。この辺りの独墺系レパートリーは正直に申し上げて日本フィルがさほど得意としているようにも思えないのだが(特にワーグナー)、ここに日本フィルの首席指揮者に就任したこの指揮者の本気を見るのは筆者だけではあるまい。そしてこの日はブルックナーの『交響曲第5番』、この作曲家の交響曲の中では1、2を争う厄介な曲だろう。この曲の持つ堅固な構成を明確に表出しなければその本質が明らかにならないが、先述した『第7』、『第8』においては角の取れたスマートな演奏となっていた記憶がある。このやり方を『第5』に持ち込むと(持ち込まないかも知れぬが)どうなるのか。期待と不安。 

結果、その演奏は『第7』や『第8』ほどのテンポの遅さは感じず中庸に近く(それでも遅いが)、インテンポを基調とした端正な爽やかさがある。それに加えて曲が曲だけに明らかにメリハリと響きの力感に富んでいた。この響き自体の質の違いが前2曲と今回の大きな差と思う。がしかし、トロンボーンを初めとする強力な日本フィルの金管はこの日は迫力はあれど粗く全体の清澄さと見通しをいささか悪くしていた感があり、それは終楽章で明らかだったように感じる。金管が弦をマスキングしてしまってバランスが悪い。また、指揮者の造形がいささか緩いために響きが悪い意味で芒洋としがちに。この曲のキモは何と言っても前3楽章の構成要素が収斂する終楽章にあるのだから、ここがまずいと具合が悪い。コーダは普通の意味では非常に盛り上ったのだが、より均整の取れた響きが望ましい。インキネン&日本フィルの当夜の演奏、その真摯な演奏には敬意を評しながらも更なる洗練を期待したいところ。ちなみに、全曲中で最高の演奏はオケが咆哮しない(苦笑)第2楽章だろう。ここではいささか情緒に流れる気配があれども、あるいはそれゆえに極めて美しいものとなっていた。このシルキーでなめらかな肌触りは独墺系の典型的な演奏とはかなり隔たっているが、これはインキネンの得意とするシベリウス的、と言えなくもない。 

「シベリウス的」という事で言えば、順序は逆になったがブルックナーの前に演奏されたラウタヴァーラ作品はまさにそれで、シベリウス的に短い動機が積み重ねられて徐々に発展していくような流れは中期~後期シベリウス的と聴いたが、それが唐突に終わってしまうのが筆者にはやや腰砕けな印象が残った。ユニークな佳品には違いない。休憩を挟まずブルックナーを続けて演奏。