注目のコンサート|2017年9月
夏の恒例、「耳からウロコ」のサントリーサマーフェスティバルの<ザ・プロデューサーシリーズ>はプロデューサーに企画を任せることによってその個性を十全に発揮させるシリーズ。今回は片山杜秀による「日本再発見」(9/3,4,6,10)。あまり演奏されることのない戦前・戦中・戦後の日本音楽を再見し、さらには大澤寿人のように埋もれていた作曲家を発掘するという彼ならではの企画、大いに期待したい。細川俊夫監修の国際作曲委嘱シリーズテーマ作曲家はゲオルグ・フリードリヒ・ハース(7,11)で、新作が世界初演される。9/2は第27回芥川作曲賞選考演奏会。
9/2~11@サントリーホール
http://www.suntory.co.jp/sfa/music/summer/2017/producer.html
♩9/3 大島莉紗 ヴァイオリン・リサイタル〜パリ・オペラ座からの便り〜
パリ国立オペラ座管弦楽団に所属、ヨーロッパ各地でソロ・室内楽に活躍するヴァイオリンの大島莉紗。英国留学の折、ロシア人の師からスターリン政権下のロシアの生活などの逸話、経験談を通して学び感銘を受けたプロコフィエフをじっくりと聴かせる。ピアノはウィーン生まれの若手ピアニスト S・シュトロイスニック。他にストラヴィンスキー、シューベルト。
9/3@東京文化会館小ホール
http://www.atelier-canon.jp/lisaoshima_japan_tour/
パリからピアノの新星ガスパール・ドゥエンヌが初来日。アンヌ・ケフェレックを母に持ち、パリ・エコール・ノルマル、ザルツブルク・モーツァルテウムで学ぶ。ナントなど各地の音楽祭に招かれ、活躍の場を広げている。バッハから、リスト、シューマン、スクリアビンなど、そのピアニズムの日本での初披露が楽しみ。
9/8@王子ホール
http://www.pacific-concert.co.jp/concert/view/774/
♩9/8、9 日本フィルハーモニー交響楽団 第693回東京定期演奏会
何と言っても話題は山田和樹指揮による石井眞木「遭遇Ⅱ番」。日フィル委嘱シリーズ第23作で、雅楽とオーケストラの遭遇が生み出す大音響世界が繰り広げられる。石井のベルリン時代の師ボリス・ブラッハー作品を前菜に、後半は<海>つながりでイベール「寄港地」、ドビュッシー「海」とフランス物でまとめる。
9/8,9@サントリーホール
http://www.japanphil.or.jp/concert/21730
演奏会形式での上演に力を注ぐバッティストーニによるヴェルディの傑作「オテロ」(演奏:東京フィルハーモニー交響楽団)。今回は、メディアアーティストの真鍋大度率いるライゾマティクスリサーチによる最先端のテクノロジーを駆使したステージが注目を集める。音楽と映像の未知のコラボレーションは必見。
9/8,10@Bunkamuraオーチャードホール
http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/17_otello/
♩9/9,11 モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》全2幕(演奏会形式・字幕つき)
NHK交響楽団の首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィが、このコンビでは初めてとなるオペラ全曲、モーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》をとりあげる。ドンナ・アンナにジョージア・ジャーマン、ドンナ・エルヴィーラにローレン・フェイガンといった若手歌手をキャスティングしており、パーヴォの指揮とともに新鮮な音楽が期待できる。
NHK音楽祭の一環のNHKホールでの公演と横浜での特別公演の二回行われる。
9/9@NHKホール
https://www.nhk-p.co.jp/event/detail.php?id=720
9/11@横浜みなとみらいホール 大ホール
http://www.nhkso.or.jp/concert/concert_detail.php?id=672
♩9/10,11 ハイドン:オラトリオ《天地創造》 Hob.XXI:2
音楽監督である大野和士が指揮する東京都交響楽団の定期演奏会、Cシリーズ、Bシリーズ、二日続けて行われる。曲はハイドンの傑作オラトリオ《天地創造》。ソリストとして名バリトン、ディートリヒ・ヘンシェルが加わることも楽しみだが、スウェーデン放送合唱団の合唱に期待が集まる。その澄み切ったハーモニーがこの名曲を豊かな響きで聴かせてくれるだろう。
9/10@東京芸術劇場コンサートホール
http://www.tmso.or.jp/j/concert_ticket/detail/detail.php?id=3040&year=2017&month=9
9/11@サントリーホール
http://www.tmso.or.jp/j/concert_ticket/detail/detail.php?id=3041&year=2017&month=9
紀尾井ホール室内管弦楽団のメンバーたちによる第1回アンサンブル公演。躍動感あふれる演奏が魅力のピアニスト上原彩子をゲストに迎え、管楽器が活躍する五重奏の魅力を伝える。弦楽四重奏との共演でファゴットの超絶技巧と弦楽四重奏のライヒャの「変奏曲」やレーガーの大作「クラリネット五重奏曲」などを並べた多彩な一夜。
9/11@紀尾井ホール
http://www.kioi-hall.or.jp/20170911k1900.html
合唱の盛んな北欧からまた実力派が来日。エストニアのペルトに始まり、スウェーデンのサンドストレム、同じくヴィカンデル、ポーランドのペンデレツキ、ロシアのシュニトケ、と北欧・東欧の作曲家の名が連なっているのが興味深い。ヴィカンデル以外は皆1980年台以降の作品。世界の現代合唱曲に直に触れる貴重な機会となろう。
9/14@東京オペラシティ コンサートホール
http://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=8030
♩9/15〜24 サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン2017
サントリーホールのブルーローズで開催される<チェンバーミュージック・ガーデン>も今年で7回を迎える。幕開けは<堤剛プロデュース2017>として原田幸一郎らかつての東京クヮルテットのメンバーを含むゴージャスな面々でブラームス。<アジアンサンブル@TOKYO>には成田達輝、宮田大、ハオチェン・チャンの若手トリオでシューベルト、ラヴェルなど室内楽の醍醐味をたっぷり味わえる。
9/15~24@サントリーホール ブルーローズ
http://www.suntory.co.jp/suntoryhall/feature/chamber2017/
オムロン パイプオルガン コンサートシリーズvol.60<世界のオルガニスト>に登場するのはヴェルサイユ宮殿王室礼拝堂オルガニスト、フランソワ・エスピナス。伝統と革新を引き継ぐフランスの名手である。ドイツとフランス様式を統合した京都コンサートホールのオルガンでフランス・バロックから師であるイゾワール作品までを披露、この貴重な機会は聞き逃せない。
9/16@京都コンサートホール
http://www.kyotoconcerthall.org/calendar/business.php?y=2017&m=09#key15234
♩9/17・20・23 ウィーン・ムジークフェスト2017 ルドルフ・ブッフビンダー
いずみホールがウィーン楽友協会と提携してフェスティバルを開催する。ウィーン生まれの正統派ピアニスト、ルドルフ・ブッフビンダーを迎え、3夜にわたりピアノ・ソロ、ピアノ・トリオ、コンチェルトによる公演を企画。彼が得意とするベートーヴェンのほか、モーツァルトやシューベルト、メンデルスゾーンなどの作品を取り上げる。このほか、22日にはウィーン楽友協会の芸術総監督トーマス・アンギャンを迎え、いずみホール音楽ディレクター礒山雅との対談形式の講演もあるとのこと。まさにウィーンづくしの1週間となりそうだ。
9/17 ピアノ・ソロ@いずみホール(大阪)
http://www.izumihall.jp/schedule/concert.html?cid=1489&y=2017&m=9
9/20 ピアノ・トリオ
http://www.izumihall.jp/schedule/concert.html?cid=1490&y=2017&m=9
9/23 コンチェルト
http://www.izumihall.jp/schedule/concert.html?cid=1491&y=2017&m=9
♩9/18 第46回サントリー音楽賞受賞記念コンサート/広上淳一と京都市交響楽団
第46回サントリー音楽賞を受賞した広上淳一と京都市交響楽団の受賞記念コンサート。広上淳一が常任指揮者、ミュージック・アドヴァイザーに就任以来、飛躍著しい京都市交響楽団、攻めの姿勢が常に注目を集めるオーケストラだ。武満徹「フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム~5人の打楽器奏者とオーケストラのための~」、ラフマニノフ「交響曲第2番」というプログラムでその真価が発揮されよう。
9/18@サントリーホール
http://www.kyoto-symphony.jp/concert/detail.php?id=641&y=2017&m=9
♩9/20 みなとみらいクラシック・マチネ 伊藤亜美&佐野隆哉
みなとみらいクラシック・マチネの9月はローザンヌ高等音楽院、イギリス王立北音楽院などで研鑽を積み活躍するヴァイオリンの伊藤亜美とパリ国立高等音楽院で学んだピアノの佐野隆哉の共演。プーランク、ドビュッシー、イザイ、ラヴェルナドソロとデュオで名曲、秘曲を聴かせる。実力派同士のスパークが楽しみ。
9/20@みなとみらい小ホール 午前・午後2公演
http://www.yaf.or.jp/mmh/recommend/2017/09/post-237.php
エウローパ・ガランテの主宰者として大活躍のビオンディ、日本でのリサイタルは実に18年ぶりとのこと。エウローパ・ガランテで絶妙な通奏低音を聴かせているチェンバロ奏者パオラ・ポンセとの共演とあっては、聴かねばなるまい。イタリア・バロックの真髄を味わう一夜。
9/21@王子ホール
http://www.ojihall.jp/concert/lineup/2017/20170921.html
♩9/21,25,28 リヒャルト・ワーグナー:歌劇《タンホイザー》全3幕
バイエルン国立歌劇場の来日公演、《タンホイザー》と《魔笛》の二演目を上演する。注目されるのは今回が初来日となる歌劇場の音楽監督キリル・ペトレンコの指揮による《タンホイザー》、この5月に現地ミュンヘンでプレミエが行われた演目。ロメオ・カステルッチの演出は賛否が分かれたようだが、初演から時を開けずに観られるのは楽しみ。ペトレンコ自身も、次期ベルリン・フィルハーモニー首席指揮者に選出され話題となっており、その手腕に期待したい。
9/21,25,28@NHKホール
http://www.bayerische2017.jp/tannhauser/
♩9/23 アンサンブル・ノマド 第59回定期演奏会:饗宴Vol.1~20世紀の華
今年で結成20周年を迎えたアンサンブル・ノマド、今年は「饗宴(シンポシオン)」と年間テーマを名付け、メンバー全員がソリストとして登場する趣向である。このvol.1ではフェルドマン、ヴァスクス、クセナキス、武満、と世界と時代を越えた選曲で挑む。いずれも一筋縄ではいかない作品であるが、ノマドならば期待できる。
9/23@東京オペラシティ リサイタルホール
http://www.ensemble-nomad.com/concert/regularConcert/regularConcert_59-62.html
2015年長年務めた東京フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスターを退き、現在日本センチュリー交響楽団首席客演コンサートマスター、東京音大で指導に当たる荒井は結成25周年を迎えるモルゴーア・クァルテットでプログレッシブ・ロックを弦楽四重奏に編曲などに腕をふるう、刺激に満ちたヴァイオリニスト。今回は清水和音とともに王道のプログラムを組んだ。ベートーヴェン、ブラームス、シューマン、シューベルト、聴きものである。
9/23@王子ホール
http://miy-com.co.jp/events/arai_kazune/
ヴィオラの今井信子が開く「夢」の第5回はヴィオラ・クァルテット。小樽で毎年行っているマスタークラスでの経験からヴィオラ4本のアンサンブルの魅力を披露したいと、若手と共に多彩なプログラムを組んだ。野平一郎によるバッハ「シャコンヌ」を基とした「トランスフォルマシオンⅠ」からバルトーク、ピアソラまで、
ヴィオラの協奏をじっくり楽しみたい。
9/24@紀尾井ホール
http://amati-tokyo.com/performance/20110909.html
第一生命ホール<645コンサート〜充電の60分>に登場するのは津軽三味線の兄弟ユニット<吉田兄弟>の兄、吉田良一郎発案で結成された新・純邦楽ユニットWASABI。邦楽界を代表する4人、吉田良一郎(津軽三味線) 美鵬直三朗(太鼓・鳴り物)、元永拓(尺八)、市川慎(箏・十七絃)が生み出す新感覚のグルーヴを体感したい。オリジナルから民謡まで、楽器体験コーナーもあり。
9/27@第一生命ホール
http://www.triton-arts.net/ja/concert/2017/09/27/2354/
♩9/28,10/3,12 アンナ・ネトレプコ スペシャル・コンサート
アンナ・ネトレプコが1年半ぶりに来日、東京と大阪でコンサートを行う。夫でテノール歌手のユシフ・エイヴァゾフやオーケストラ(指揮: ミハイル・タタルニコフ)との共演を予定。成熟期に入った彼女の声と歌が楽しみ。プログラムの詳細は未定だが、新たなレパートリーも加えてくれることを期待したい。
9/28,10/3@東京オペラシティ コンサートホール(東京フィルハーモニー交響楽団)
http://www.kajimotomusic.com/jp/concert/k=634/
10/12@大阪 ザ・シンフォニーホール(関西フィルハーモニー交響楽団)
♩9/30 オペラ「Four Nights of Dream」
東京文化会館の舞台創造事業・夏目漱石生誕150年記念として ニューヨークのジャパン・ソサイエティーとの共同制作「Four Nights of Dream」ニュープロダクションが日本初演される。漱石の「夢十夜」を原作に、NYを起点に活躍する作曲家長田原の作曲・台本で演出アレック・ダフィー、指揮謙=デーヴィッド・マズア、歌手陣はジャパン・ソサイエティーのオーディションで選ばれた若手6名。「こんな夢を見た」の書き出しから始まる漱石文学には珍しい幻想世界がどう描かれるか興味深い。
9/30,10/1@東京文化会館小ホール
http://www.t-bunka.jp/old//sponsership/spo_170930_1001.html
1989年台湾生まれ。2008年メニューイン・コンクール優勝。2009年エリザベート王妃国際コンクールで最年少ながら圧倒的な評価を得て優勝。2011年トッパンホールにてバッハ無伴奏作品の全曲演奏に挑戦、今回もバッハの無伴奏ソナタ・パルティータ全6曲を弾く。ごまかしやハッタリのきかないバッハ無伴奏世界での音の飛翔やいかに。
9/29@ザ・シンフォニーホール
9/30@サントリーホール
http://www.concert.co.jp/concert/detail/1478/