調布国際音楽祭|フランチェスコ・コルティ チェンバロ・リサイタル|藤堂清

調布国際音楽祭 2017
フランチェスコ・コルティ チェンバロ・リサイタル

2017年6月14日 深大寺 本堂
Reviewed by  藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)

<曲目>
ジョヴァンニ・ピエルルイージ・ダ・パレストリーナ:
   第一旋法によるリチェルカータ
ジョヴァンニ・デ・マック:
   風変わりな協和音
   レ、ファ、ミ、ソのカプリッチョ
   ガリアルダ 第1番
ジローラモ・フレスコバルディ:
   トッカータとパルティータ集 第II巻より トッカータ 第7番ニ短調
   カンツォーナ 第1番
   ガリアルダ 第2番
   不協和音のためのカプリッチョ
   ガリアルダ 第5番
アレッサンドロ・スカルラッティ:
   フォリア
ドメニコ・スカルラッティ:
   ソナタ ホ長調 K 215
   ソナタ ホ長調 K 216
   ソナタ ホ短調 K 263
   ソナタ ホ長調 K 264
ジローラモ・フレスコバルディ:
   パッサカリアによる100のパルティータ
—————-(アンコール)——————
作曲者不詳:ラ、ミ、レの上で

 

調布の名刹、深大寺の本堂でのリサイタル、戒壇の前にチェンバロを置き、両側の法事の際に参列者が座るスペースなどに椅子を並べて行われた。天井は高く反響が少ない、チェンバロの直接音を聴く会場、外の鳥の声や参拝者の投げ入れる賽銭の音など環境音も聞こえる。これは調布国際音楽祭の一環で行われたものだが、普通のコンサート会場とは異なる雰囲気を楽しんだ。

フランチェスコ・コルティは1984年イタリア生まれ、チェンバロ、フォルテピアノ、オルガン奏者として多くの古楽グループと共演するとともに、ソロ活動を行い、クープランやハイドンのチェンバロ音楽を録音している。

この日のプログラムはイタリアの作曲家による作品。16世紀に活躍したパレストリーナ、マックから、17世紀のフレスコバルディ、18世紀のスカルラッティ父子と並ぶ。
コルティは曲ごとに間をおかず、全体を一続きのものとして演奏した。当然であるが、作曲家の違いだけでなく、リチェルカータ、ガリアルダ、カプリッチョといった曲想の違いもあり、次々とテンポも、リズムも、音色も変化する。聴く側の意識、集中力はこれにより高まっていたように感じた。
パレストリーナの古雅な響きは、マックの時代を飛び越えるかのような和声で大きく変化する。チェンバロという楽器でこれほどのダイナミクスが得られるのだという驚き、そして多様な音色に感服。フレスコバルディのガリアルダやトッカータでの早めのテンポや個々の音の粒立ちの見事さ。
スカルラッティになると曲想は一変、古典派の前触れのような和声が聴こえる。
そしてふたたびフレスコバルディに戻り、10分近くかかる大作、〈パッサカリアによる100のパルティータ〉でプログラムが閉じられた。

アンコールは5月に亡くなったエリザベト・ホイナツカ(モダン・チェンバロを用いた現代音楽の演奏者)に捧げられた。彼女が「ルネサンス~バロック期の前衛音楽」と題する録音の中で弾いている曲。16世紀の作品なのだが、大きな跳躍があったり、不協和な音があったりと、現代の作品と言われても不思議には思わない、時代を飛び越えたような印象を受けた。

最後に調布国際音楽祭というイベントについてふれておこう。
2013年に、バッハを中心としたクラシック音楽の祭典として、「調布から世界へ、世界から調布へ」という思いで始められ、今年で5年目となる。調布市のグリーンホールや調布市文化会館たづくりなどを会場とし、この日のコンサートも含め、有料、無料のコンサートが8日間にわたって数多く行われた。
音楽祭のエグゼクティブ・プロデューサーの鈴木優人、監修の鈴木雅明等によるコンサート、山下洋輔ジャズ・ナイト、小菅優「ベートーヴェン詣で」、0歳児から入場できるキッズコンサート、市民音楽家によるオープンステージ、桐朋学園大学の学生・卒業生によるミュージックカフェと多様なプログラムが組まれている。
都心から少しはなれた場所での音楽祭、地元の人を巻き込み、幅広い世代へと輪をひろげてきている。調布から、さらなる発展を期待したい。