《バロック・ライヴ劇場》第7回公演 ル・ポエム・アルモニーク|藤堂清
《バロック・ライヴ劇場》第7回公演
ル・ポエム・アルモニーク
ダンツァ! Danza!
2017年5月23日 王子ホール
Reviewed by 藤堂 清
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
<演奏>
ル・ポエム・アルモニーク(古楽アンサンブル)
ヴァンサン・デュメストル(音楽監督/バロック・ギター)
クレール・ルフィリアートル(ソプラノ)
フィオナ・プパール(ヴァイオリン)
ルカ・ペレス(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
エリーズ・クリスティアンス(ヴィオローネ)
ペレ・オリヴェ(パーカッション)
<曲目>
ブリセーニョ:エスパニョレータ
ブリセーニョ:サラバンダ「さあ踊ろう!サラバンダだ」
作者不詳:世俗歌曲集『トノ・ウマーノ』より 「泣け、泣くがいい、わが両の目よ」
ブリセーニョ:ビリャーノ 「侯爵様の馬は」
ブリセーニョ:パッサカーリェ 「おれが仕込んできたなら、俺の妻を」
マルティン・イ・コル:ガイタの調べによる変奏曲
デ・ラ・バルカ:人生は夢
作者不詳:カナリオ
ル・バイイ:私は狂気
ムリニエ: スペインのエール 「小舟は今、岸辺にあって」
作者不詳:ビリャンシーコ集 『ウプサラ歌集』より 「違う、おれは違うんだ」
作者不詳:そよ風はささやくように
ブリセーニョ:フォリア 「山暮らしのお嬢さん、あなたは両目で」
ブリセーニョ:セギディーリャ 「教えて、何がいやなの?」
——————–(アンコール)————————
作者不詳:バラの花咲く
作者不詳:ファド・メノー
フランスの古楽アンサンブル、ル・ポエム・アルモニーク、2009年以来4回目の王子ホールでの公演。今回のテーマは、「ダンツァ!」17世紀フランスを彩ったスペインの踊り、というもの。国王ルイ13世の時代に輸入された舞曲を中心としたプログラム、当時フランスで活躍していたスペイン人作曲家ルイス・デ・ブリセーニョや、作者が知られていないスペイン語の歌が、切れ目なしに演奏された。
音楽監督であるヴァンサン・デュメストルがバロック・ギターを爪弾き、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、ヴィオローネの3台の弦楽器とパーカッションの器楽に、クレール・ルフィリアートルのソプラノが加わるという6人の構成。
場内の照明を落とした上に舞台も暗めにした空間は、聴衆を17世紀の雰囲気へと導くものであった。
ルフィリアートルの声は少し暗めの音色でヴィブラートは控えめ、低い音域が充実している。ストレートな声がこの時代の歌に合っている。
彼女は、器楽奏者と並んだ位置で歌うことが多かったが、いくつかの曲では舞台前面に移動し、歌詞に合わせた振りを付けながら歌っている。これは、このグループとの共同作業もある演出家バンジャマン・ラザールによって再現された「17世紀におけるフランス人俳優の演技術」によったもの。手や指の動きや脚のステップは、歌の表情を強調する効果が感じられた。
楽器は弦楽器が中心、この時代のアンサンブルであれば通常テオルボが入るのだが、この日はバロック・ギターの高めの音が代わりとなる。
何曲かでは、弦楽器がピッチィカート奏法のような音の出し方をする。その際、通常はチェロと同じように足の間において演奏されるヴィオラ・ダ・ガンバを、横にして膝にのせ弦をはじくという、あまりみることのない方法がとられた。
パーカッションの鈴や太鼓が加わることで、明快なリズムが作りだされる。
ルイス・デ・ブリセーニョはフランスで活躍したスペイン人作曲家、彼のサラバンダ「さあ踊ろう!サラバンダだ」は舞曲に乗って歌われる。このプログラムでは彼の曲を6曲取り上げているが、エスパニョレータ、サラバンダ、ビリャーノ、パッサカーリェ、フォリア、セギディーリャとすべてことなる舞曲。パーカッションに合わせ、足踏みをしたくなる。
演奏者もからだでリズムを刻んでいる、舞曲のような音楽では聴衆もそれにのって楽しむことができる。次第に熱気を帯びる舞台、そして観客席。
17世紀の熱狂(そのほんの一部)を感じながら、楽しい時間をすごした。
時の経過とともに忘れ去られた音楽や舞踏、関連する動き、こういったものを掘り出すには地道で粘り強い研究が必要だろう。でも、ル・ポエム・アルモニークのように我々に伝えてくれる者がいなければ、紙の上だけのものとなってしまう。これからもかくれていた「宝物」を見せてくれることだろう。