Back Stage|びわ湖ホール オペラへの招待 「ミカド」~劇場専属の歌手がいてこそ~|初田 靖   

びわ湖ホール オペラへの招待 「ミカド」〜劇場専属の歌手がいてこそ〜 

text by 初田 靖(Yasushi Hatsuda) 

<はじめに>

大ホールホワイエ

びわ湖湖畔にたたずむ滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、<舞台芸術を創造し、発信する劇場>として、1998年9月5日に開館。これまでにオペラ、バレエ、コンサート、演劇、舞踊、古典芸能、近年では音楽祭の開催と幅広く事業を展開してきた劇場です。

つい先日(3月)ですが、看板事業のプロデュース・オペラで、ワーグナーの超大作《ニーベルングの指環》(四部作)を4年かかりで上演するプロジェクト<びわ湖リング(指揮:沼尻竜典、演出:ミヒャエル・ハンペ)>がスタートし、1作目(序夜)の「ラインの黄金」を大盛況に終えたばかりです。多方面からご支援いただき、また、マスコミにも多く取り上げられたこともあり、全国からオペラファンが集結、大入りの2日間となりました。館長の山中隆は【日本のバイロイト】といわれたいと抱負を語っています。

ラインの黄金

こうしたことから[東の新国立劇場、西のびわ湖ホール]と期待を込めた評価もいただけるようになっています。開館当初は、待望のオペラハウスとして期待する声も多く寄せられる一方、お客さんはいるの?滋賀県でオペラ?などと揶揄が多かったのも事実ですし、存亡の危機といわれた時もあります。
初代芸術監督の若杉弘氏(~2006年度のシーズン)は、ヴェルディの日本初演シリーズに取り組んでいる中、〝継続は価値を生むんだよ。いずれよく解るときが来るよ〟と、よく語っておられたのが昨日の様です。

<オペラの裾野を広げる オペラへの招待 ~座付きの声楽アンサンブルあってこそ~>
さて、大劇場(大ホール)で上演するオペラと並行して大切なオペラ・プロダクションがあります。
オペラの裾野を広げることを主たる目的とし、中ホールで上演している<びわ湖ホール オペラへの招待>です。2006年度より始め、これまでに「フィガロの結婚」や「カルメン」などのよく知られたスタンダードなものや、「ヘンゼルとグレーテル」のような子ども達にむけたオペラ、「ルサルカ」や「ドン・キホーテ」の様な日本ではニッチ的な作品を制作・上演してきました。

びわ湖ホールの中ホール、実はなかなか魅力的です。
およそ欧州の中規模程度のスペックで、ピット使用時は客席数およそ700席、オーケストラピットでは50名規模のオーケストラが演奏できます。上演中は、キャストの表情も息遣いも演技もよ~く楽しめ好評です。オペラグラスなしでも全く問題なし、フルスクリーンを目の前に感じます。
また、このシリーズでは、若いときからオペラを感じてもらうためにびわ湖ホールの子ども達の会員組織、びわ湖ホールシアターメイツを対象として、稽古現場が赦す範囲で稽古見学会も実施し、現場からファンづくりを進めています。

※今夏の上演目は、アーサー・サリヴァンの「ミカド」です。
8月5日・6日にびわ湖ホール、8月26日・27日には、新国立劇場の中劇場で上演します。
新国立劇場は、地域招聘公演として呼んでいただけるもので3年前のクルト・ヴァイルの「三文オペラ」に続いて2度目となり実にありがたい機会です。
(おかげさまでびわ湖公演のミカドはチケット売れ行き好調です。)

びわ湖ホール声楽アンサンブル

ここが肝心、キャストを務めるのは劇場専属、いわゆる座付きのびわ湖ホール声楽アンサンブルです。SATBそれぞれ4名の体制。全国から選りすぐりの若手の歌手が集まっています。欧州の中劇場に所属する劇場付きのSolisden(ソリスト達)のイメージです。オペラの上演回数は欧州にかないませんが、1年を通じて充実のメニューが組まれており、第一線の出演者、スタッフと出会い、研鑽を積んでいます。いつも顔を合わせているメンバー同士が切磋琢磨して本番に臨むことができますし、オペラに限らず経験を積めば積むほど着実に自分のレパートリーになります。現制度では、最長5年間の在籍、卒団後は、ソロ登録メンバーとしてオペラのキャスト等で活躍していて、今回の「ミカド」でもタイトルロールのミカド役(松森治)や王子役(二塚直紀)などが卒業生です。

連隊の娘

今年2月ですが、テノールの超難関アリアのある「連隊の娘」を上演しましたが、卒業生の山本康寛が名刺代わりのアリアといわんばかりに披露し、お客さんも関西圏を超えた地域からお見えいただき大盛況に終わりました。こうした卒業生と一緒に舞台を経験する現役メンバーはとてもいい刺激を受けますし、次の目標が定まるきっかけにもなっています。

2017年の声楽アンサンブルは、合唱としても素晴らしいプロダクションで出演します。
10月には、沼尻竜典オペラセレクションとしてベッリーニ「ノルマ」(ノルマ:マリエッラ・デヴィーア)で藤原歌劇団と、また、11月には、特別公演歌劇「アッシジの聖フランチェスコ(演奏会形式、全幕上演日本初演)」で新国立劇場合唱団とともに歴史的な公演に参加します。

<最後に>
びわ湖ホールは、来年2018年には、大きな節目の20周年を迎えます。
最近、初めてびわ湖ホールで子役や児童合唱で出演した当時の子ども達が、今大人になってびわ湖ホールのステージに立つ機会があったり、お客様として出会う機会も増えました。
同時に、建物は本格的な改修をしないといけない時期でもあり、ますます支援者の輪が必要な時期でもあります。これからも<創造&発信><チャレンジと連携>を可能な限りし続ける劇場に注目いただければ最高です。
いつか、特設湖上ステージでコンサートかオペラをドローンが中継するような時代を迎える夢を見てみたいものです。

滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 広報マーケティング部 部長代理 初田 靖

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公演情報
<びわ湖ホール オペラへの招待 >
サリヴァン作曲 コミック・オペラ 『ミカド』 (全2幕)(日本語上演/日本語・英語字幕付)
2017年8月5, 6日(土、日)中ホール 14:00開演 13:30開場
 https://www.biwako-hall.or.jp/performance/2016/12/27/-5-1.html