神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会第324回|齋藤俊夫

みなとみらい_4 ol神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会 みなとみらいシリーズ第324回

2016年11月18日 横浜みなとみらいホール
Reviewed by 齋藤俊夫(Toshio Saito)

<演奏>
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン:加藤知子(*)
指揮:秋山和慶

<曲目>
武満徹:3つの映画音楽
伊福部昭:ヴァイオリン協奏曲第2番(*)
チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調

最初を飾った武満徹、今回の秋山による再現は1音1音ごとに音がたわみ、ねっとりと絡みついてきて、従来になく妙にねばっこく甘い解釈であった。特に「他人の顔」のワルツの甘さたるや言うに難いほどである。確かに新しい解釈なのだが、しかし筆者には武満の理性的な側面が弱まって聴こえてきたように思えた。

没後ますます耳にすることの多くなってきている伊福部昭であるが、今回の『ヴァイオリン協奏曲第2番』は彼の作品の中ではマイナーな作品と言っても良いだろう。強音で勢いに乗って演奏してしまえばまあ悪い再現にはならない(がそれだけではいささか物足りない)、というのが多くの伊福部作品に共通する長所とも短所とも言える特徴であるが、本作品はそのような演奏では真価が発揮されないという点で、彼の作品群の中では異質な存在なのである。しかして今回の演奏は、と言うと、加藤知子のヴァイオリンの、太く、雄渾で、濁りを含んだジプシー的な音色はまさに伊福部の音楽に相応しいものであったが、今ひとつ作品全体の起承転結や序破急といった構成がはっきりしない。アレグロの箇所でもアダージョの箇所でも加藤が奮闘しているのはよくわかったのだが(アダージョでのヴァイオリンソロの高音の美しさは特筆すべきだろう)、だが奮闘の矛先がぼやけており、音楽の豊かさには繋がらない。いささか残念であった。

そしてメインであるチャイコフスキーの『交響曲第4番』、これは非常に面白い演奏であった。第1楽章の時点で妙に角ばってぎこちない、だが各楽器の出入りは「正確な」アプローチであると感じ、そしてそれはチャイコフスキーにしては歌心に欠けると感じたのである。しかし第3楽章の高速ピチカートでも、この「正確な」再現が乱れることなく整然となされたのを聴いて、その迫力に感心し、そのまま第4楽章のアレグロに入って、やはり「正確な」ままで一糸乱れぬ大乱舞を繰り広げられてまさに有頂天の気分になった。なるほど、このための「正確な」アプローチであったのかと合点がいった。終わり良ければ全て良し、終曲後挙がったたくさんのブラボーは当然の賛辞であろう。何か全身の血の巡りが良くなったような心地よさに包まれて帰路についた。