撮っておきの音楽家たち|ホアキン・アチュカロ|林喜代種
ホアキン・アチュカロ(ピアニスト)
2015年5月22日 武蔵野市民文化会館
2016年9月20日 浜離宮朝日ホール
photos & text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
ホアキン・アチュカロが昨年に続き今年も来日した。水が静かに川を流れて行くように、ピアノの音がホールに満ちて消えていく。居心地のいい音空間をつくりだす。83歳のスペインの最高峰ピアニスト、ホアキン・アチュカロの演奏である。「アリシア・デ・ラローチャの亡きあとのスペインのピアノ界を代表する演奏家」との評もある。
今回の演奏会では前半にピアノの名曲であるベートーヴェンの『ピアノソナタ第10番』、ショパンの『幻想即興曲』『ポロネーズ 英雄』を、後半はスペインの作曲家たちで、モンポウ『12の前奏曲』より3曲、グラナドスの『ゴイェスカス』より1曲、アルベニスの『スペイン』より<タンゴ>、『イベリア』より<港>と<エル・アルバイシン>を弾く。
アチュカロは1932年スペイン・バスクのビルバオで生まれる。早くからスペイン、フランス、イタリア、スイス等の国際コンクールで賞を多く得ている。1959年リヴァプール・ピアノ国際コンクールで優勝して本格的に活動を始める。世界の著名オーケストラ200以上、指揮者350人以上と共演。昨年のシーズンは北米、南米、ヨーロッパ、アジアなど12ヶ国で演奏。ヴェルビエ音楽祭にデビュー。2016年も登場予定。リスボンのサンカルロス劇場では10日間に4つの異なる協奏曲を演奏し大成功を収める。
ホアキン・ロドリーゴの唯一の『ピアノ協奏曲』をソニーよりリリース。サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルでファリャ『スペイン庭園の夜』の演奏と、マドリード・テアトロ・レアルのリサイタルの演奏がDVD『ファリャ&フレンズ』(Euroarts)に収録されている。ファリャ『スペイン庭園の夜』はヘスス・ロペス=コボス指揮読響でこの9月に演奏している。2003年、当時のスペイン国王フアン・カルロス1世より国家功労十字勲章を授与される。イタリア・シエナのキジアーナ音楽院名誉教授。2008年ダラス市にて若いピアニストの助成を目指した「ホアキン・アチュカロ」財団を創設。
アンコールで弾いたスクリャービンの左手のための小品より『ノクターン』も印象に残る演奏だった。