撮っておきの音楽家たち|ワレリー・ゲルギエフ|林喜代種
ワレリー・ゲルギエフ(指揮者)
2016年8月9日 サントリーホール
photos & text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
20世紀を代表する作曲家で指揮者のレナード・バーンスタインの提唱により、1990年にスタートしたパシフィック・ミュージック・フェスティヴァル(PMF)の今年の芸術監督は昨年に続きワレリー・ゲルギエフである。
この音楽祭は若手音楽家の育成の国際的な音楽祭である。ことしも札幌市で7月中旬から8月上旬までの約1ケ月間、連日アカデミーと室内楽やオーケストラのコンサートが行われた。無料で聴けるリハーサルやセミナー、室内楽コンサートが多数あるのも特徴である。講師陣もウィーン・フィルやベルリン・フィルの名手が指導に当たっている。その芸術監督が指揮者のワレリー・ゲルギエフである。
2015年から6代目のPMFの芸術監督を務めている。PMFの主役はオーディションで選ばれて世界から参加する「PMFアカデミー生」と呼ばれる若手音楽家たち。指導を受けた受講生がPMFオーケストラとして演奏を行う。その成果を示す締めくくりとして、例えが良くないが、焼き鳥の串の大きさの指揮棒でこのオケから絶妙な音を引き出すゲルギエフの指揮で東京公演がサントリーホールで行われた。演奏曲目はメンデルスゾーンの『交響曲第4番イタリア』、ブラームスの『ヴァイオリン協奏曲』(vnソロはレオニダス・カヴァコス)、ショスタコーヴィチの『交響曲第8番』だった。ショスタコーヴィチは今年生誕110年にあたる。
ゲルギエフをはじめ一流の音楽家たちと過ごす夏の1ケ月間は若手音楽家たちにとって刺激的な体験である。音楽性だけでなく人間性に触れることで得るものは大きい。また仲間たちとの切磋琢磨もかけがえがなく有意義である。
ゲルギエフはこの10月にはマリンスキー・オペラを率いて日本公演を行っている。