Back Stage|木のホールに満ちる、合唱音楽の響き

木のホールに満ちる、合唱音楽の響
〜神奈川県立音楽堂〜

text by 安田珠与(Tamayo Yasuda)

9ca1ec74283dd14d32771ec01c68a244ef371404std神奈川県立音楽堂は、1954年、公立施設としては日本で初めて本格的な音楽専用ホールとして開館しました。当時、終戦直後の大空襲の傷跡が残る神奈川県で「民生の充実、民心の安定」を目的として、隣の神奈川県立図書館とともに建設されました。設計は、建築の巨匠ル・コルビュジエの弟子にあたる前川國男。ロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールをモデルに、最高の音響効果をあげるように設計されたホールは、ホール内の壁面すべてが「木」で作られており、「木のホール」の愛称で親しまれています。まるで楽器のようなアコースティックな響きは、開館当時「東洋一の響き」と絶賛されました。また、当時としては珍しいガラスやコンクリートなどの新しい材料を使っており、現在でも“新しさ”を感じる建物です。1999年には20世紀の重要な文化遺産である建物としてDOCOMOMO(ドコモモ:近代運動にかかわる建築・環境形成の記録調査および保存のために設立された国際的組織)より「日本におけるモダン・ムーブメントの建築20選」に選ばれ、国内や海外の建築学科の学生さんたちが見学に来ることも多々あります。しかし座席の狭さや階段しかないなど古い建物ならではの障壁はありますが、ソフト面や小さな工夫をし、そして、多くの皆さまにご利用いただけることで61歳の今でも現役で頑張っております。

「木のホール」の愛称のほか「合唱の殿堂」としても親しまれており、開館当初から合唱の演奏会を開催しています。長寿公演で言えば、主催公演では今年で51回目を迎える「音楽堂クリスマス音楽会『メサイア』全曲演奏会」、共催公演ですが今年で56回目を迎える「音楽堂・おかあさんコーラス」。この他にも多くの県民の合唱団の皆さまが演奏会を開いております。合唱とともに長年歩んできた神奈川県立音楽堂では、今年から5年間に渡り、「音楽堂アフタヌーン・コンサート 山田和樹指揮 東京混声合唱団 特別演奏会」を平日午後に開催します。

34f4193324b1fd4939792fb7ec26ffc5b2810d7fstd神奈川県出身の山田和樹さんは、今や世界を駆け回るマエストロ。彼はTOMATOフィル(現・横浜シンフォニエッタ)や、横浜市立大学管弦楽団の演奏会などでも神奈川県立音楽堂の舞台に立っており、とても親しみのある方です。2014年9月には彼が音楽監督を務める東京混声合唱団との演奏会を開催し、合唱音楽に満たされていく世界を多くのお客さまとともに体感いたしました。(この回は満席でした!)

df6c927b066fc7dc76e1ff0343574fb145273198std2年後の2016年9月6日(火)、このコンビが神奈川県立音楽堂に戻ってきます。5年間にわたる演奏会は、山田和樹さんのプロデュースによるもの。
一年目の今年は、“歌い継ぎたい日本の歌”と題し、「春の小川」や「おもちゃのチャチャチャ」など誰もが一度は耳にしたことのある、なつかしく、心があたたまる合唱名曲を中心に構成しています。上田真樹さん作曲、林望さん詩による「混声合唱団とピアノのための組曲『夢の意味』」(2007年東京混声合唱団委嘱作品)では、日本を代表するプロの合唱団による本格的なコーラスをご堪能ください。また、今年は作曲家・柴田南雄さんの生誕100年、没後20年にあたります。この記念すべき年に、日本の芸能に新しい息吹を与えた、「萬歳流し-秋田県横手萬歳によるシアターピース-」(1975)をお届けします。現在では横手市での継承者が途絶えてしまい、合唱作品として唯一残っている「萬歳流し」を当日はステージの上のみならず、客席を練り歩き、お客さまを巻き込んでお贈りします。ホール全体が歌声に包まれ、きっとコンサートホールにいることを忘れるような感覚になるでしょう。
ピアニストには若手実力派の小林有沙さんをお迎えし、ピアノの音色と歌声のハーモニーを木のホールの響き中、存分にお楽しみください。そして、マエストロの軽妙なトークはスタッフ一同とても期待しております。

人間の身体から声として出てくる音楽の神秘さ、面白さ、一人ひとりの表情やあふれ出る魅力を1054席の親密な空間で、身体の感覚を全て使って味わっていただければと思います。

今年は、合唱とピアノをお届けしますが、来年以降についてもみなで机を囲んで話し合っています。山田和樹さんと東京混声合唱団と神奈川県立音楽堂ならではの、多くの方々に楽しんであたたかな気持ちになってもらえるような演奏会を練っております。2017年がどのような演奏会になるのかどうぞ楽しみに見守っていてください。

JR桜木町駅から徒歩10分、急な坂道の上。
春は桜が咲き、夏は蝉が鳴き、秋は紅葉に包まれ、冬は背筋が正される風が吹いて。
神奈川県立音楽堂は、これからも変わらぬ姿でみなさまをお待ちしております。

安田珠与(神奈川県立音楽堂)
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公演情報
音楽堂アフタヌーン・コンサート
山田和樹指揮 東京混声合唱団 特別演奏会
“歌い継ぎたい日本の歌”
2016年09月06日(火) 14:00開演 (13:30開場)
http://www.kanagawa-ongakudo.com/detail?id=34249
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