東京都交響楽団 第809回 定期演奏会Aシリーズ|藤堂清

都響東京都交響楽団 第809回 定期演奏会Aシリーズ

2016年6月8日 東京文化会館大ホール
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 堀田力丸/写真提供:東京都交響楽団

<演奏>
指揮:大野和士
テノール:イアン・ボストリッジ *
管弦楽:東京都交響楽団

<曲目>
ブリテン:歌劇《ピーター・グライムズ》より<4つの海の間奏曲>op.33a
ブリテン:イリュミナシオン op.18 *
—————–(休憩)——————-
ドビュッシー:《夜想曲》より「雲」「祭」
スクリャービン:法悦の詩 op.54 (交響曲第4番)

2015年に、大野和士が東京都交響楽団の音楽監督に就任し、ほぼ1年が経った。今年度、彼がこのオーケストラを指揮する最初のコンサートがこの日であった。 プログラムの中核となるのは、ブリテンの《イリュミナシオン》とスクリャービンの《法悦の詩》、光や色をイメージさせる選曲。独唱者イアン・ボストリッジがオーケストラからどのような反応を引き出すかという点にも興味がわく。

第1曲目の「4つの海の間奏曲」、出だしからオーケストラの表情がかたい。指揮に従って合わせようとするためか、パート内でずれてはいけないという意識が強いためか、音に弾みがない。間奏曲4曲とも、同じような傾向が続いてしまった。

2曲目に入り、ボストリッジが加わるとオーケストラも変化する。ボストリッジの歌は、言葉に応じ微妙にテンポを変化させる。それに対応するため、歌を聞き、他のパートを聞き、自主的に判断する割合が高くなり、弦楽パートだけではあるが奏者の自発性が引き出されたように感じた。
《イリュミナシオン》は、アルチュール・ランボーの詩によるフランス語の歌曲集、全9曲からなる。もともとソプラノ独唱のために書かれた曲だが、高音域から低音域まで声質が変わらず、ダイナミックレンジの広いボストリッジは、この曲の再現者として適任といえる。
第1曲<ファンファーレ>の躍動感、第5曲<海の絵>の勢い、第7曲<美しい存在>の皮肉めいたたっぷりとした歌いくち、第8曲<客寄せ道化>でのたたみかけるフレーズ、第9曲<出発>の静謐さ。20分ほどのこの曲から多彩な世界を描き出した。

後半に入ると再び1曲目と同じような探り合いに戻ってしまった。
破綻は少ないのだが、音色の変化にとぼしく、とくに 《法悦の詩》では音量の変化も「決められた手順に従っておこなっています」といった印象を受けた。

東京都交響楽団のオーケストラとしてのポテンシャルの高さは分かるし、指揮者の要求に応える力もある。ただ、演奏するという行為が、奏者一人一人にとって、音<楽>をする時間であってほしいと思う。

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