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室内楽の魅力 Weekend Concert〜ブラームス第3回|谷口昭弘

ブラームス室内楽の魅力 Weekend Concert ブラームス 第3回
若き日の恋
堀正文ら弦の名手たち with 萩原麻未

2016年5月14日 第一生命ホール
Reviewed by 谷口昭弘 (Akihiro Taniguchi)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

<演奏>
ピアノ:萩原麻未
ヴァイオリン:堀正文
ヴァイオリン:森田昌弘
ヴィオラ:佐々木亮
ヴィオラ:中村翔太郎
チェロ:木越洋
チェロ:宮坂拡志

<曲目>
ブラームス:弦楽六重奏曲第1番 変ロ長調 Op. 18
(休憩)
ブラームス:ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 Op. 25

静的な調和の中に始まった弦楽六重奏の第1楽章では、短いフレーズの受け渡しや反復の中で、少しずつ温もりが伝わってくる。木越洋による力強い第2主題の提示があり、展開部では対話劇が繰り広げられ、そのまま再現部へ。第2主題の再現では、ブラームスの早熟を感じさせる大きな歌が聴かれた。 第2楽章では、第2変奏まで全員が一丸となっていたのが、第3変奏になったとたん嵐のように轟々とした低弦と力強く主題を奏でる高弦に分かれたように、各変奏によって個々の奏者が音楽全体の中でどのような立ち位置にいるのかを周到に見渡していた。変奏に対するそのような機敏な対応により、スケールの大きなうねりを全体に感じることができた。 奏者も情熱を帯びてくる中での第3楽章では、精度の良いアンサンブルに加え、しなやかで柔らかい質感や感情の自在なほとばしりが聴けた。ただ奏者たちの表情を見ると、ホールが柔らかな音響を創りだす以上に、激しい音楽を奏者が求めていたことも拝察された。 第4楽章に関しては、羽目をはずしつつ賑やかな饗宴にすることも可能だろう。しかし今回の演奏では、それまでの基本路線と同様、旋律を大切に弾き、表現の広がりを着実に聴かせていた。真面目に目の前の音符が求めているものに耳を集中し、洗練されたアンサンブルを損ねないような方向性を聴いた。

休憩を挟んで演奏されたピアノ四重奏曲第1番では、大きな身振りでピアノに向かう荻原麻未の音が弦楽の響きに対する良いアクセントとなり、音楽全体の推進力も与えていた。また第1楽章では各楽器の音色が際立つようになり、推進力のついたアンサンブルは特に興奮度の高まった再現部で一気呵成に迫った。ソナタの形式は情熱を盛り付ける器となり、圧巻であった。 第2楽章では弦楽奏者同士の対話、ピアノと弦楽器との対話があり、落ち着いた中にもスリルを秘めていた。自然な歌い込みの第3楽章は多面的な聴かせどころを提示し、時にはアグレッシブで強い情念を湛える場面もあった。そして民俗的味わいを喜びの芸術に昇華した第4楽章は会場の聴衆を最後まで楽しませた。

大変な難物である2つの大作を、しっかりとした形にして聴かせた音楽家たちに敬意を表したい。

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