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神奈川フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 音楽堂シリーズ第7回|谷口昭弘

神奈川フィル神奈川フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 音楽堂シリーズ第7回

2016年4月23日 神奈川県立音楽堂
Reviewed by 谷口昭弘(Akihiro Taniguchi)
Photos by 藤本史昭(写真提供:神奈川フィルハーモニー管弦楽団)

<演奏>
鈴木秀美指揮:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

<曲目>
C. P. E. バッハ:シンフォニア 変ロ長調 Wq. 182/2、H. 658
ハイドン:交響曲第95番 ハ短調 Hob. I: 95
(休憩)
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 Op. 68《田園》

(アンコール)
シューベルト:《ロザムンデ》間奏曲第3番

チェンバロを編成に含んだC. P. E. バッハの《シンフォニア》は、冒頭からすごい勢いで弾いたかと思えば急にテンポが緩む。そのような急激な変化に変則的な転調を伴い、第1楽章はスリルに満ちていた。緩徐楽章にしても激しいコントラストや大きな旋律の跳躍、テンポの移り変わりに驚かされた。休みをおかずに演奏される第3楽章にはゼクウェンツを多用し、バロック音楽の名残も感じられる。いずれの楽章においても、前向きな、キビキビとした音楽を堪能した。

ハイドンの《交響曲第95番》は、アクセントをはっきりとさせた硬質の響き。ホールのおかげかもしれないが、音の立ち上がりが実によい。啓蒙された聴衆のための実験精神に富んだ傑作だが、その聴かせどころを鈴木は熟知しているのか、こまかな指示を出していたのが印象に残った。

メインの《田園》の第1楽章は足早に進められながらも、特に展開部においては各パートが際立って聴こえてくる。コントラバスの脈動に載せて、オーケストラ全体に躍動感が満ち溢れる。第2楽章においても、ホルンの弱起のフレーズなどの反復する動機を浮き立たせ、ただきれいな旋律が流れるだけでは表出できない生命力みなぎる時間感覚を呼び起こす。 時折1拍目に強いアクセントを配しテンポを落とさないように進める第3楽章につづき、嵐を描く第4楽章では、コントラバスやチェロの音響効果を最大限に生かすため、グリッサンドのように弾かれることもあるこれらの楽器の音型を明確に出していたのが印象に残った。またピッコロの音色が稲妻のように聴こえてきたのも面白かった。 フィナーレでは、単調にも思える旋律が、ビブラートを抑えただけで、こんなにも美しく響くものかと感動し、その澄んだ響きに心を奪われながら、幸せにこの曲を終わりまで聴くことができた。

神奈フィルの演奏は継続的に聴いてきているが、指揮者が変わるとこんなにもオーケストラの性格が変わるものだと改めて実感させられた。「鈴木秀美の指揮の回は要注目」と心に決めた演奏会であった。

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