オペラ クラブマクベス|藤堂清

マクベスオペラシアターこんにゃく座公演
   高瀬久男追悼公演
オペラ クラブマクベス

2016年2月12日 吉祥寺シアター
Reviewed by 藤堂 清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 青木司

<曲目>
オペラ《クラブマクベス》
原作:ウィリアム・シェイクスピア(小田島雄志訳による)
台本:髙瀬久男
作曲:林光

<スタッフ>
演出:眞鍋卓嗣
美術:伊藤雅子
衣裳:山下和美
照明:金英秀
振付:新海絵理子
擬闘:栗原直樹
舞台監督:八木清市
音楽監督:萩京子

<出演>
男:大石哲史
男の妻、マクベス夫人:山本伸子
門番、将校、暗殺者、従者、シートン:井村タカオ
マクベス、召使い:佐藤敏之
バンクォー、医者、使者:髙野うるお
マクダフ:富山直人
魔女1:梅村博美
魔女2:豊島理恵
魔女3、マクダフ夫人:鈴木裕加
ヘカティー:岡原真弓
ロス:佐藤久司
マルカム、暗殺者:島田大翼
レノックス、暗殺者、マクダフ夫人を殺す兵士:北野雄一郎
ダンカン、シーワード:武田茂
ドナルベーン、侍女:小野崎有香
フリーアンス、マクダフ夫人を殺す兵士:泉篤史

<演奏>
フルート:姫田大
パーカッション:高良久美子
ピアノ:寺嶋陸也

シェークスピアの劇『マクベス』が上演されている“クラブ・マクベス”に、観客として招き入れられた男、テーブルに一人座り、劇をみていたが、いつしかその中に入り込んでいく。マクベス役と一体となり、男の妻(=マクベス夫人)とともに、王となるという野望を多くの者を殺すことで実現していく。しかし結局、魔女たちの予言に翻弄され、殺害される。劇の終わった後、クラブの客席に残されていたのは男の屍。
台本作者の髙瀬久男の演出で2007年に上演されたオペラの眞鍋卓嗣による新演出公演。
シェークスピアと現代の男を結びつけることで、バーチャルとリアルが混在する状況を作り出し、男の隠されていた欲望や不満があばかれていく。押さえつけていたそういった思い、他との関係を知ってしまえば、現実の世界に戻れず、虚構の世界に居続けることとなる。クラブに男を呼び込んだ門番が男の死を確認していう言葉、「こういう人、多いんだよね。」は「あちらの世界」へ同化してしまう人を指していたのだろうか。

こんにゃく座は今年創立45周年を迎える。そこで上演されてきている「オペラ」は、大劇場で「オペラ歌手」によって歌い上げられる類のものとは別物。小劇場での演劇と音楽が一体化したものといってよいだろう。ブレヒト、ヴァイルの『三文オペラ』に近いという印象。
林の音楽は日本語が聞きとりやすく、劇の進行が自然に感じられる。魔女たちの歌のようにかなり早い言葉さばきが必要な曲でも、歌い演じる人が苦労しているようにはみえなかった。シェークスピアの作といっても、日本語への訳、台本化を経ているわけで、どれほど原作の持つ言葉の力が活きているだろうかと思っていたが、「苦労も苦悩も火にくべろ」といったように類似した言葉を重ねたり、それに同じ音型をあてたりと、細かいところまで気配りが行き届いている。異なる歌詞を同じメロディーで歌っても聞きとれることに感心した。
歌を支える演奏者は三人だけ、メロディー楽器としての役割の多くはピアノが受け持つが、パーカッションも大きな転換点では印象的。
演技者としてどのように評価するかという点については、私自身が基準を持っていないので多くを語る資格はない。そういった前提をつけたうえで言えば、門番の井村タカオ、ヘカティーの岡原真弓の存在感に引き付けられた。

林の音楽を聴いていて、昔、見た劇の中で歌われていた歌が思い出された。林光の名前で調べてみたら、劇のタイトルは『森は生きている』、オペラ化される以前の音楽劇で聴いた記憶が掘り起こされたようだ。50年以上前のことを引き出してくれる音楽の力におどろくとともに、林の音楽作りの一貫性にも感慨をおぼえた。

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