追悼 アーノンクール|林喜代種
ニコラウス・アーノンクール(指揮者)
photos & text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
2010年10月25日 ホテルオークラ
10月26日 サントリーホール
11月3日 東京オペラシティ
世界的指揮者で古楽演奏のパイオニアとして知られるニコラウス・アーノンクールが今月5日に死去した。86歳だった。
2010年10月、80歳のとき、最後の海外ツアーの最後の公演地として日本を選んだ。自ら創設した<ウィーン・コンツェントス・ムジクス>(CMW)を率いて4年振りの来日を果たした。バッハ『ロ短調ミサ曲』、ハイドン『天地創造』、モーツァルト『ポストホルン・セレナード』ほかを演奏した。純粋に音楽の本質を見つめた演奏と評された。
1980年に初来日。以来「幻の巨匠」として知られていたが、26年後の2006年に、CMWとウィーン・フィルと共に再来日が実現した。そして2010年の来日は「4年前の日本のホールと聴衆がすばらしく、最後に再び会いたかった」と語っている。
1929年ベルリンに生まれる。強制されたナチス青少年組織への入隊は少年アーノンクールに深い傷として残った。17歳のとき、ラジオのベートーヴェンの交響曲第7番を聴いて音楽家の道を決意する。チェロを学ぶためウィーン国立音楽院に進学。教師に反発したが、古楽だけは素直に学んだ。卒業後、チェロ奏者としてウィーン交響楽団に入団する。40歳で退団し、ヴァイオリニストの妻・アリスさんと1953年古楽演奏の<ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス>を創設。古楽の巨匠グスタフ・レオンハルトと200曲に及ぶバッハのカンタータを録音している。モーツァルテウム音楽大学の教授を20年以上務める。数々の国際賞を受けているが、2005年、世界でも有数の芸術賞である京都賞も受賞。