オッコ・カム指揮フィンランド・ラハティ交響楽団|藤原聡
オッコ・カム指揮フィンランド・ラハティ交響楽団
生誕150年記念 シベリウス交響曲サイクル 第1夜
11月26日 東京オペラシティコンサートホール:タケミツ・メモリアル
Reviewed by 藤原聡(Satoshi Fujiwara)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
<曲目>
シベリウス:交響曲第1番 ホ短調 op.39
同:交響曲第2番 ニ長調 op.43
(アンコール)
シベリウス:組曲「テンペスト」より第2番第6曲
同:行列
同:「ペレアスとメリザンド」より間奏曲
ラハティ交響楽団の来日はなんと9年ぶりだという。ヴァンスカの同オケの音楽監督退任後はサラステが、さらにその後は現音楽監督のオッコ・カムが同ポストに就任。今年2015年は周知のようにシベリウスの生誕150年、そこでオッコ・カムと来日してシベリウスの交響曲全曲を東京オペラシティで演奏したが、筆者はその1日目を聴いた。オケは12型だが、オペラシティのキャパシティにはよく合う(ちなみに、カムは終始椅子に座っての指揮。入退場の姿を見る限りでは足腰に何ら問題があるようには見えないが、負担を掛けないためか。何か抱えているのかも知れない)。
交響曲第1番。一言で言うならば、非常に大柄で素朴な演奏。オケの音色はひんやりとしており、全く独特な厚みのある音がしている。アンサンブルの精度や管楽器の技術は部分によっては綻びがないとは言えない。しかし、このオケ独自の「色」(特に弦楽器)が明確に感じられる。独特の冴え冴えとした音。カムの指揮は、前述のようにディテールを整えるよりは全体の流れを重視しているようで、特にスケルツォ以降の粗野な盛り上がりが見事だった。第2も基本的には同一路線の演奏だが、オケの精度が明らかに上がり、ここでも終楽章、ことにコーダの高揚と手馴れた呼吸が非常にすばらしい。正直に申し上げれば筆者はより緻密にコントロールされたソリッドな演奏を好むが、このローカル色に満ちた当夜の演奏も、いい意味での「洗練のされていなさ」が生きていたと感じる。
しかしながら、この日の収穫は本プログラムよりもむしろアンコールの3曲にあった(始める前にカムが曲名を告げるのだが、これが聴き取りにくいのはご愛嬌)。組曲「テンペスト」より第2番第6曲、行列、「ペレアスとメリザンド」より間奏曲。実演ではなかなか聴くことの出来ないレア曲揃い(「ペレ・メリ」はまだ有名だけれども)。曲の美しさもさることながら、勝手知ったる、と言うか「俺たちの音楽だ」と言わんばかりの確信に満ちた演奏ぶりはまさにフィンランドのオケならではだ。残り2日も聴きたかったのだが行けずに残念。