注目の1枚|シベリウス:交響曲第6番 ニ短調 op.104、同第7番 ハ長調 op.105、アンダンテ・フェスティーヴォ|藤原聡
シベリウス:交響曲第6番 ニ短調 op.104、同第7番 ハ長調 op.105、アンダンテ・フェスティーヴォ
尾高忠明(指揮)札幌交響楽団
text by 藤原聡(Satoshi Fujiwara)
録音:2015年2月13日、14日 札幌コンサートホールkitara(交響曲)、
2月17日 サントリーホールでのライヴ録音
フォンテック 番号:FOCD6049
価格:\2,408+税
SACDハイブリッド
尾高忠明&札幌交響楽団によるシベリウスの交響曲シリーズ完結編は第6番と第7番。私見では過去3枚の名演をも上回るシリーズ中の最高傑作と思う。第1や第2、あるいは第5といったシベリウスの交響曲中でもよりロマン派的な語法とドラマが求められる曲においては、尾高のアプローチは非常に実直ですばらしくはあるものの、その生真面目さゆえかいささか起伏と遊びに乏しい面があったのは否めない。しかし、第6と第7ではインティメートさを身の上とする曲の性格ゆえかその心配はない。札響のひんやりとして清冽な弦楽器の音はそれ自体大変美しいが、その合奏を尾高は緻密なバランス構築で見事に整え、室内楽的に「聴き合う」ことを徹底的に要求する。その結果、例えば第6番の第3楽章に聴かれるような恐るべき一体感を獲得することに成功している。しかしさらに見事なのは、合わせることそれ自体がいささかも目的化することなく、結果として自然に音楽的な呼吸がピタリとはまっていることだ。であるから音楽はただ緊密なだけでなく生き生きと「呼吸」する。ハ長調の属和音からffでドに到達する第7番のあの宇宙的なコーダ。その音楽は内側から徐々に高揚していき、遂にはこの世のものとも思えぬような響きとなるけれど、この箇所をこれだけ格調高く表現した演奏はなかなか思い浮かばない。筆者が実際にサントリーホールで聴いていた「アンダンテ・フェスティーヴォ」も(東京公演のライヴ)会場でそのあまりの美しさに涙が出そうになったのをありありと思い出す。ともあれ、シベリウスのファンは尾高&札響のこの全集はマストバイと言う他ないし、そうでなくとも尾高&札響の水準の高さをぜひ味わって欲しい。日本が世界に誇るべき全集。