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スウェーデン放送合唱団|藤堂清

Concert Review

swedenスウェーデン放送合唱団

2015年10月20日 東京オペラシティ コンサートホール
Reviewed by 藤堂 清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

<演奏>
スウェーデン放送合唱団
指揮:ペーター・ダイクストラ

<曲目>
J.S.バッハ:モテット『主にむかいて新しき歌をうたえ』BWV225
ペルト:トリオディオン(1998)
シェーンベルク:地には平和を op.13
———————-(休憩)——————–
ブラームス:祝辞と格言 op.109
マルタン:二重合唱のためのミサ曲
——————–(アンコール)—————-
伝承曲(M.ホーガン編):ジェリコの戦い
アルヴェーン:そして乙女は輪になって踊る
スウェーデン民謡:すべての山と谷をめぐり

スウェーデン放送合唱団によるア・カペラ(無伴奏合唱)のコンサートを聴く。ペーター・ダイクストラが2007年に首席指揮者となってからのこの団体を聴くのは初めて。トヌ・カリユステが率いていた時代の「透明な」ハーモニー、そして幅広いレパートリーを受け継ぎ、ダイクストラがどのような変化をもたらしたかという点に興味を持って会場に向かったのだが、コンサートが進むにつれそんなことはどうでもよくなってきた。

この日の曲目はすべてキリスト教に関わるテキストに基づくもの。作曲者はバッハからペルトまでと、オペラシティの主催シリーズ「B→C(ビートゥーシー):バッハからコンテンポラリーヘ」とも呼応する。

一曲目のバッハのモテット、”Singet”という歌いだしから子音の明晰さ、安定した音程、そして響きの透明感に安心する。第二節のアリアを歌う4人を舞台右前に出し、コラールとの対比をつけていた。

アルヴォ・ペルトは今年80歳をむかえたエストニア出身の作曲家、宗教的な合唱作品も多い。『トリオディオン』は正教会の頌歌で、キリスト、マリア、ニコラウス(正教会聖者)に救いを求める内容で、歌詞は英語である。安定した低声部に支えられ、響きが重なっていく。私はまったく信仰をもたないので作曲者の意図とは異なるかもしれないが、声というか音楽というか、がじかに体にしみこんでくるように思われ、それだけで気持ちがほぐれていくように感じられた。

三曲目のシェーンベルクの『地には平和を』はこの合唱団の技術の高さを示すものであった。声部ごとの音程の安定感、そしてそれらの生み出すハーモニー、”Friede, Friede auf der Erde!”と歌われるリフレーンの美しさ。今回の来日では東京都交響楽団の定期演奏会に出演しており(指揮はダイクストラ)、そこではこの曲のオーケストラ付の版を演奏した。いずれ放送される予定になっているので、違いをたしかめてみたい。

後半の曲目では、マルタンの『二重合唱のためのミサ曲』が圧巻。この合唱団が得意としている曲でもあり、ダイクストラも録音していることもあるのだろう。二十世紀前半に通常のミサ典礼文を歌詞として書かれた作品。弱声部でもホールを満たす響き、ダイナミクスの大きさ、人の声の美しさと偉大さを感じた。

アンコールは三曲。最初は黒人霊歌として知られる『ジェリコの戦い』、有名な曲ではあるが、この合唱団が歌うとは・・・。精緻さと迫力を兼ね備えた演奏。二曲目、三曲目は、合唱団のお国もの、楽しんで歌っていた。

全体としてみると、以前より個人の声を活かす方向に向かっているように感じられた。パートごとの響きの均質さにこだわるより、各人の声の違いを残したまま、各声部を、そして全体を積み上げている。ピュアな響きという側面は多少後退しているかもしれないが、32人の合唱とは思えない迫力や機動力は向上している。ダイクストラが目指しているのは、多機能性、多様性なのだろうか?

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