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東京二期会オペラ劇場公演 オッフェンバック:《天国と地獄》|藤堂清

東京二期会オペラ劇場
NISSAY OPERA 2019提携 
ジャック・オッフェンバック:《天国と地獄》(《地獄のオルフェ》新制作) 
オペレッタ全2幕、日本語訳詞上演(歌唱部分のみ日本語字幕付き)
Tokyo Nikikai Opera Theatre / J.OFFENBACH:ORPHÉE AUX ENFERS 
Presented by Tokyo Nikikai Opera Foundation with Nissay Theatre 
(Opera buffa in two acts, Sung in Japanese language)

2019年11月22日 日生劇場
2019/11/22 Nissay Theatre (Tokyo, Japan)
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)撮影:11月20日(ゲネプロ)

<スタッフ>      →foreign language
指揮:大植英次
演出:鵜山 仁
装置:乘峯雅寛
衣裳:原 まさみ
照明:古宮俊昭
振付:新海絵理子
合唱指揮:根本卓也
演出助手:上原真希
舞台監督:菅原多敢弘
公演監督:加賀清孝

<キャスト>
プルート:渡邉公威
ジュピター:三戸大久
オルフェ:山本耕平
ジョン・スティクス:相山潤平
マーキュリー:児玉和弘
バッカス:志村文彦
マルス:的場正剛
ユリディス:高橋 維
ダイアナ:廣森 彩
世論:塩崎めぐみ
ヴィーナス:中野瑠璃子
キューピッド:熊田アルベルト彩乃
ジュノー:三本久美子
ミネルヴァ:吉田愼知子
合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 

オッフェンバック生誕200年を締めくくるにふさわしい演目。1858年にブーフ=パリジャンで初演が行われ大成功を収め、その後1874年に増補改訂、大劇場であるゲテ座で上演されている。
今回の公演はジャン・クリストフ・ケックの校訂による1858年版に基づくが、1874年版からの追加もあり、またカール・ビンダーが1860年ウィーン上演に際し編曲した有名な序曲も始めに演奏されている。二期会としては12年ぶり4回目、すべて日本語上演である。

物語は、オペラの登場以来なんども取り上げられている「オルフェオとエウリディーチェ」のパロディー。
オルフェ(オルフェオ)はヴァイオリニスト、妻のユリディス(エウリディーチェ)はその音が大嫌い。二人はともに愛人を持つが、世間体を気にするオルフェに対し、ユリディスはアリステへの想いをかくさない。
「世論」という登場人物がオルフェの行動を見張り、ストーリーを動かしていく。
ユリディスはオルフェの仕掛けた毒蛇に咬まれ、アリステ、実は地獄の王プルートとともに地獄へ行く。オルフェは厄介払いと喜ぶが、世論が許さず、彼女を取り返す許しを得に天国へ向かう。
天国では、ジュピターの支配に対する革命が起こっている。そこへオルフェと世論が到着。彼等の申し立てを聞いたジュピターは、ユリディスを夫に返すべしとし、それを確実にするべくみなで地獄へ行く。新たな刺激を喜ぶ神々、落胆するオルフェ。
地獄では一人抛っておかれたユリディスが嘆いているところへ、ジュピターがハエに変身して忍び込み意気投合、逃げ出すことを計画。地獄での宴会中に決行するが、プルートに阻止される。ジュピターはくだんの条件を付けて彼女をオルフェに渡すが、三途の川を渡りきる直前に雷を落とし振り向かせる。「駄目な亭主」と落胆する世論、ユリディスはバッカスの巫女となり。他の3人がどう考えたかは不明な結末。
演出に時事ネタを仕込んだりといったことがいくらでもできそうな筋書きだが、鵜山はその点には興味を示さず、永遠と死といった重いテーマをしっかりと笑いのオブラートでくるんで見せた。
舞台装置は比較的簡素なもので、幕をうまく使い転換をスムーズに行った。

演奏は充実していた。
ユリディスは高い声やアクロバットなところのある役だが、高橋維が声の色合いも豊富に歌い分けた。オルフェの山本耕平は厚めの声を活かしていた。ヴァイオリンを弾くさまも決まっていた。ジュピターの三戸大久は、威張っているとき、問い詰められているとき、変身しているとき、それぞれの表情が的確で楽しい。
その他の歌手の歌う場面は多くはないのだが、それぞれの持ち場、<マーキュリーのサルタレッロ><変身のロンド><キスのクプレ><ボイオディア王のクプレ>といったところでしっかりと聴かせた。
今回感じたのは、多くの歌手の歌う日本語が聴き取りやすいこと。12年という時間経過はこの点では大きな進歩をもたらしたといえるだろう。
大植英次の指揮、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏、しっかりと骨太な感じ。多少重ったるい点もあったが、まとまっていたと思う。

オッフェンバックという作曲家の作品、1880年に亡くなったあと常に演奏され続けてきたわけではない。1999年にOffenbach Edition Keck(OEK)の刊行が始まり、それまでうずもれていた曲にも光があたるようになってきた。アニバーサリイヤーの今年を契機とし、さらなる拡がりがあることだろう。
この10月に名古屋二期会が《ホフマン物語》を上演しているが、ここでは最新版のケイ&ケック版が用いられた。このような取り組みが新たなオッフェンバック像に結びついていくことを期待したい。

この《地獄のオルフェ》も、1858年版、1874年版の校訂版での演奏を(原語で)日本で聴ける日を待ちたい。

(2019/12/15)

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<STAFF>
Conductor:Eiji OUE
Stage Director:Hitoshi UYAMA
Set Designer:Masahiro NORIMINE
Costume Designer:Masami HARA
Lighting Designer:Toshiaki KOMIYA
Choreographer:Eriko SHINKAI
Chorus Master:Takuya NEMOTO
Assistant Stage Director:Maki UEBARU
Stage Manager:Takahiro SUGAHARA
Production Director:Kiyotaka KAGA

<CAST>
Aristée-Pluton:Koi WATANABE
Jupiter:Hirohisa SANNOHE
Orphée:Kohei YAMAMOTO
John Styx:Junpei AIYAMA
Mercure:Kazuhiro KODAMA
Bacchus:Fumihiko SHIMURA
Mars:Masataka MATOBA
Eurydice:Yui TAKAHASHI
Diane:Aya HIROMORI
L’Opinion publique:Megumi SHIOZAKI
Vénus:Ruriko NAKANO
Cupidon:Ayano KUMADA-ALBERT
Junon:Kumiko MIMOTO
Minerve:Machiko YOSHIDA
Chorus:Nikikai Chorus Group
Orchestra:Tokyo Philharmonic Orchestra