Menu

撮っておきの音楽家たち|サー・アンドラーシュ・シフ|林喜代種

サー・アンドラーシュ・シフ(ピアニスト)

2017年3月23日 東京オペラシティ コンサートホール
photos & text by 林喜代種( Kiyotane Hayashi)

現在世界で最も注目されているハンガリー出身のピアニストのサー・アンドラーシュ・シフのリサイタルが行われた。アンコール7曲を含めて演奏時間2時間30分を休憩なしで弾き切った。聴く方も実に充実した濃密な時間を過ごした。
1953年ハンガリー・ブダペスト生まれ。リスト音楽院でカドシャ、クルターク等に学ぶ。ロンドンではG.マルコムに師事する。
この日は、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトの4人の作曲家の「ピアノのための最後のソナタ」を演奏。今回の来日公演では「最後から2つ目のソナタ」を別のプログラムで取り上げている。この4人の作曲家の「最後のピアノ・ソナタ」はすでにヨーロッパで演奏されている。日本公演ではベーゼンドルファーの最新モデル280 VCを使用。スイスの調律師が同行した。
シフは世界一流のオーケストラや指揮者と数多く共演しているが、近年はピアノを弾きながら自らオーケストラを弾き振りしている。1999年に自身の室内オーケストラ「カペラ・アンドレア・バルカ」を創設。国際的なソリストや室内楽奏者がメンバーになっている。ヨーロッパ室内管弦楽団も毎年弾き振りしている。
シフは世界中から尊敬されている証拠に、ボンのベートーヴェン・ハウスやウィーン・コンツェルトハウスの名誉会員、ゴールデン・モーツァルト・メダルなどの勲章の受章も多い。2014年6月エリザベス女王の公式誕生日を記念する叙勲名簿の発表に際し、英国よりナイト爵位(サー)が授与された。
シフは決して力まず、しかし作曲家の意図する表現を十分に考慮した演奏。ただひたすらに曲に没入して行く。高音の素晴らしく美しい音色が心に沁みわたる。次第に小鳥のさえずりのように聴こえてきて至福の時を過ごした。疲れ知らずの体力と集中力に感嘆である。