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撮っておきの音楽家たち|キリル・ペトレンコ|林喜代種

キリル・ペトレンコ (指揮者)
          
2017年9月17日 特別演奏会・会見 東京文化会館    
photos & text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

初来日の指揮者キリル・ペトレンコがバイエルン国立歌劇場とともに来日し、注目のオペラ『タンホイザー』と特別演奏会をおこなった。会見に先立ちペトレンコはバイエルン国立管弦楽団を指揮し、衝撃的な日本デビューを飾った。
しかしペトレンコはオペラ『タンホイザー』ではゲネプロも本番も主催者以外は撮影許可を出さなかった。特別演奏会のあとのバイエルン国立歌劇場の記者会見には姿を見せた。これは異例なことらしい。これまでもインタビューは全て受けていないという。そういう事情で会見ではペトレンコに質問が集中した。
インタビューを受けないのは「理由はいろいろあるが、自分の仕事については語らないほうがいい」「指揮者は指揮台から音楽を通じて皆さんに語りかけるもの。それに私の仕事についてはなるべく秘密があった方が良いと思う」と語る。「一番大切にするのはリハーサル。リハーサルの準備段階の時にオーケストラと一つになることが大事。コンサートの本番では指揮者は単に音楽を伝える役割だと思っている」。
録音が少ないことについては「ライブでの演奏の方がより重要で価値がある。ライブだと音楽を生き生きとその場でしか出来ないことが伝えられる」と返答。初めての日本の印象は「素晴らしい国。そして食事が美味しい」と。
ペトレンコは西シベリアのオムスク生まれ。1990年ヴァイオリニストの父がフォアアールベルク交響楽団に移籍したのにともない、18歳でオーストラリアに移住。2001年マイニンゲン歌劇場の「リング」を当時ドイツで最年少の音楽監督として指揮。2002年ベルリン・コーミッシェ・オーパーの音楽監督に就任。ウィーン国立音楽大学卒業と同時にフォルクスオーパーに採用される。2013/14シーズンからケント・ナガノの後任としてバイエルン国立歌劇場の音楽総監督に迎えられた。2015年、サイモン・ラトルの後任としてキリル・ペトレンコが2019年からベルリン・フィルの次期首席指揮者兼音楽監督に就任すると発表された。バイエルン国立歌劇場の任期は2019/20シーズンまである。ベルリン・フィルとバイエルン国立歌劇場を兼任する時期がある。

関連評:バイエルン国立歌劇場 歌劇《タンホイザー》|藤堂清