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東京・春・音楽祭 「シャセリオー展」記念コンサート 駒井ゆり子&富岡明子|藤堂清

東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2017
ミュージアム・コンサート
「シャセリオー展」記念コンサート vol.2
駒井ゆり子(ソプラノ)&富岡明子(メゾ・ソプラノ)

2017328 国立西洋美術館 講堂
Reviewed by 藤堂 Kiyoshi Tohdoh
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

<演奏>
駒井ゆり子(ソプラノ)(1)
富岡明子(メゾ・ソプラノ)(2)
赤塚博美(エレクトーン)
陳岡めぐみ(話、国立西洋美術館主任研究員)

<曲目>
ショーソン:蝶々 op.2-3 (1)
フォーレ:蝶と花 op.1-1 (1)
パイジェッロ:もはや私の心には感じない(歌劇 《美しい水車小屋の娘》 より)(2)
ラヴェル:魅惑の笛 (組曲 《シェエラザード》 より)(1)
ショーソン:ハチドリ op.2-7 (1)
ロッシーニ:カンタータ 《ジャンヌ・ダルク》より抜粋 (2)
グノー:宝石の歌(歌劇 《ファウスト》 より)(1)
ロッシーニ:恐れることはない(歌劇《マホメット2世》より)(2)
オッフェンバック:舟歌(歌劇《ホフマン物語》より)(1,2)

 

東京・春・音楽祭の特色の一つであるミュージアム・コンサート、今年も上野に立ち並ぶ5つの博物館、美術館の講堂などで行われた。美術と音楽を同時に味わうという贅沢ができるコンサート。そのうち国立西洋美術館で開催されている「シャセリオー展」を記念し、ソプラノの駒井ゆり子とメゾ・ソプラノの富岡明子の二人によるコンサートを聴いた。
演奏に先立ち、国立西洋美術館主任研究員、陳岡めぐみより、テオドール・シャセリオー(1819-1856)の生涯や作品の特徴などの解説があり、知名度が高いとはいえないこのフランス・ロマン主義の画家と今回の展覧会の意味が述べられた。
歌手二人も、曲目解説とその作曲家とロマン主義といった説明を加え、演奏した。

駒井は厚みのある声でショーソン、フォーレ、ラヴェルの歌曲を、一方、富岡はパイジェッロとロッシーニで低音域を活かした歌声を聴かせた。最後に一曲ずつオペラ・アリアを歌い、ホフマンの舟歌で締めくくった。
赤塚のエレクトーンは様々な楽器の音を用い、オーケストラ伴奏のように彼らの声を彩った。
ショーソンやフォーレの歌曲では、ピアノと共演がふつうなので、テンポがゆったり目となり、少し音楽の輪郭がぼやけたかもしれない。その一方、伴奏の音色が多様になることで、曲全体の色彩感が増していた。とはいえ、駒井の言葉の扱いはていねいで、とくにフォーレの《蝶と花》での初々しさを感じさせる表現は説得力があった。
富岡の歌った《ジャンヌ・ダルク》(通常は《ジョヴァンナ・ダルコ》と表記される)からの抜粋、幅広い音域と細かな音型が必要となる曲、彼女はそれにしっかり対応し、ロッシーニ・メゾソプラノと呼ばれるにふさわしい力量を示した。

コンサートを楽しんだ後は展覧会をどうぞ、というわけだが、このようなミュージアム・コンサート、ルーブル美術館などでも行われているものの、展示との関連性が強い場合もそれほどでない場合もある。東京・春・音楽祭のように毎年テーマが変わる音楽祭と、その時期に行われている特別展につながりを求めるのは簡単ではない。だが、音楽と美術といった分野を超えた共同作業により一つの場を提供すること、そこへの参加者を募ることで、創造の場でも、再現の局面でも、それを受け取る側においても、より深く広い視点を持つことを可能にするだろう。