Back Stage|音楽は不要不急ではない。 若手音楽家の人生に触れて──|見澤沙弥香
音楽は不要不急ではない。
若手音楽家の人生に触れて──
Text by 見澤沙弥香(Sayaka Misawa)
◆“美竹サロン”とは
若者の街、外国人観光客がもっとも多い街、ITベンチャーが集う街、そんな渋谷宮益坂の中腹、渋谷郵便局の裏側にクラシック音楽の小さなサロンである“美竹清花さろん”があります。
開設されたのは2016年5月、早くも6年目に入っています。
“美竹清花さろん”(美竹サロン)――「みたけ(さやか)さろん」と名付けられたのは、
現在は、この付近は「渋谷一丁目」となっていますが、それまでは「美竹町」だったからです。
美竹サロンでは類似の名称が多かったため、またあくまでも“日本のサロン”をめざすということで「さろん」とし、“清い花”とは、日本から世界に育って行く若手音楽家さんを象徴しています。
日本には世界のトップクラスのクラシック音楽の若手演奏家が多数います。
そうした若者が、日本の伝統、日本の美しい心を自覚し、世界に向けて育って行ってほしい、“美竹清花さろん”という名称にはそんな想いが込められています。
またそうした想いを象徴するために、サロンの大看板に用いているロゴには、京都下鴨神社の神紋に似せた双葉葵(ふたばあおい)を採用しています。
◆主催公演“123シリーズ”コンサート
小さなサロンでの、小さな一歩ではありますが、世界に向けた本物の感動の発信の場になりたい…
クラシック音楽の原点は、大教会の伽藍や大ホールを除けば、比較的小さなサロンでした。
ピアノなども、本来はサロン向けに、せいぜい100名以内の聴衆の範囲で楽しむように作られている楽器です。
1000名以上の大ホールではどうしても臨場感という点で、満足のできないものがあります。
贅沢なことですが、商業的な成功は犠牲にせざるを得ませんが、小さなサロンでの最高の上質な演奏会、それが本来のクラシック音楽の演奏会の理想型と考えてもいいのだと思います。
サロン開設の準備に一年、実際にコンサートスタートしてから、現在6年目、足かけ7年目になりますが、これまでにさまざまな困難も経験してきています。
その最大のものは、何と言っても、現在も続いているコロナ禍です。
半年程度にわたって、一切の催しものを完全に中止せざるを得ない時期もありました。
ですが、演奏家様、お客様、関係者・スタッフの強く、温かい連携によって、そうした一時的な中断を除けば、途切れることなく継続することができています。
◆クラシック音楽は“不要不急”なものなのか…
コロナ禍で完全に中断している際には、「音楽は不要不急なもの、中止が当然」というような言葉も聞こえてきたことがありました。
確かに、人の幸福にとって「健康に生きられる」ということは何よりも大切な条件だと思われます。
しかし、人間のみならずあらゆる生き物にとって“生老病死”はまちがいなく、例外なく、避けることはできないものです。
健康でさえいればよいのか…、病気になってはいけないのか、クラシック音楽は果たして“不要不急”のものなのでしょうか…。
バッハやモーツァルト、ベートーヴェン等々が生涯をかけ、心血を注ぎ、遺した作品が、
世界の人々の心に感動と安らぎを与え続けることができているのはなぜでしょうか。
クラシック音楽の本質には、人をして“生老病死”を超えた何かに心を向けさせる働きがあるのではないでしょうか。
だからこそ、先人が生涯をかけ、命をかけた作品を遺しましたが、そうした作品を、心を尽くし、魂を尽くして演奏する演奏者が次々と現れ、そうした演奏にわたしたちは感動することができるのではないでしょうか。
クラシック音楽は、決して“不要不急なもの”ではないはずです。
日本には、世界の人々に、そうした“不要不急”を超えた本物の音楽の価値を届けることができる、
本物の音楽家の卵、本物の芸術家をめざす多くの若者が存在しています。
◆心・言葉・音楽、そしてコミュニケーション
美竹サロンは今後も当初掲げた「心・言葉・音楽、そしてコミュニケーション」をモットーとし、あくまでも“ほんもの”をめざし、クラシック音楽の原点であるサロンコンサートによって、“ほんもの”である質の高い“生演奏”による“一期一会の感動”を大切にしていきたいと考えています。
コロナ禍で半年近い中断の後、サロンの会員様と音楽家様で企画をしたクローズドの演奏会が開催されたとき、その場に居合わせた方の大半が、音楽家様も、お客様も、そしてスタッフも、自然に目に涙を浮かべ、
「音楽は決して“不要不急”なものではない、今ここに湧き上がってくる感動の正体はなんだろう…」と皆で確認しあったのでした。
クラシック音楽の原点を確認し、今後もクラシック音楽の灯を絶やさないために、このような場が守られ、維持されていかなければならない、そうした想いを痛感しました。
◆ コンクールの結果ではなく本物の“一期一会”の演奏を
最後に、コンクールに挑戦する日本の若手音楽家について、少し触れてみたいと思います。
というのも、多くの音楽家様からコンクールのお話を聞く機会が実に多いのですが、そのコンクールに臨む姿勢にとても興味深いものを感じるからです。
演奏家をめざす方々にとっては、決して無視することはできないと思われる“コンクール”!
日本ではショパン国際ピアノコンクールが人気ですが、3大難関コンクールとされるチャイコフスキー国際コンクール、エリザベート王妃国際音楽コンクール、また、アンサンブルで著名なARDミュンヘン国際音楽コンクールなどもあります。
そうしたコンクールを始めとして、世界には実にさまざまなコンクールが存在しています。
そしてそうしたコンクールは、演奏家として活躍するうえでパスポートになっていることが多いようです。
サロンで演奏してくださっている音楽家様でも、そうした難関コンクールでめざましい活躍をされている方が少なからずいらっしゃいます。
しかし、コンクールでそうした成績を収めることには、さまざまで複雑な幸運の組み合わせが必要になるはずです、体調など、心身の状態はその最たるものでしょう。
コンクールの結果がどうであれ、すばらしい演奏家の演奏は、基本的にすばらしいものです。
コンクールで優秀な成績を収めたからといって、感動を誘う演奏が常にできるかというと、必ずしもそうではありません。
コンクールで世界からの賞賛を浴びながらも、その後、舞台から消えてしまう演奏家もいます。
コンクールの結果にとらわれず、美竹サロンでは、本物の音楽、本物の演奏、本物の感動をお届けしていくことに努めてまいります。
見澤沙弥香 美竹清花さろん 主宰(株式会社ILA)
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◆ 主催公演一覧
https://mitakesayaka.com/concert-page
【残席僅か】2021年 11月 12日 19:00開演 鈴木舞&森本隼太デュオリサイタル
【完売御礼】2021年 11月 23日 14:00開演 安達真理&佐藤卓史 オール・シューベルト デュオリサイタル
【完売御礼】2021年 12月 05日 15:00開演 鐵百合奈ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会<第7回>「いずこへ」
【残席僅か】2021年 12月 07日 19:00開演 鐵百合奈ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会<第7回>「いずこへ」[追加公演]
【残席僅か】2021年 12月 24日 19:00開演 ゴルトベルク変奏曲BWV988特別演奏会2021 ピアノ 入川 舜
【残席僅か】2021年 12月 27日 19:00開演 尾崎未空ピアノリサイタル
◆ 貸会場のお問い合わせ
https://mitakesayaka.com/rental