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みなとみらいクラシック・マチネ|谷口昭弘

みなとみらいクラシック・マチネ
MINATO MIRAI Classic Matinée

2020年8月31日  横浜みなとみらいホール 大ホール
2020/8/31 YOKOHAMA MINATO MIRAI HALL Main Hall
Reviewed by 谷口昭弘 (Akihiro Taniguchi)
Photos by 藤本史昭/写真提供:横浜みなとみらいホール 

<演奏>        →foreign language
ヴァイオリン:郷古 廉
チェロ:横坂 源
ピアノ:北村朋幹
<曲目>
[第2部]
ヘンツェ:室内ソナタ
ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番ロ長調 Op. 8s

 

この日の3人のコンサートは2部構成で、第1部が12:10に、第2部が14:30に開演。それぞれを別々に発売ということで、筆者はフォーレやラヴェルといったフランス物ではなく、濃厚なドイツの作品を扱う第2部を堪能した。

ヘンツェの室内ソナタは、各楽章で様々に移り変わる楽想に応じた真剣勝負を楽しんだ。第1楽章は艶かしさと力強さが3人のアンサンブルから伝わってくる一方で、作品の悶々とした感覚を残す。第2楽章は慎重に絡み合う郷古と横坂、音楽を前進させていく北村が線と面を緊張した中で映し出し、第3楽章では渾然一体の歩みのなかで、おのおのが、その役割を果たして音を紡いていく。話し言葉のようなニュアンスに富んだ第4楽章に続き、有無をいわさぬ緊張感ほとばしる第5楽章は、やがて透き通った音の結晶となって結ばれた。

ブラームスの三重奏曲は横坂の渋みのある音色に導かれ、柔らかく輪が広がりながら展開する。そして断片的楽想を対話しつつ全体を構築するブラームスの濃厚な味わいが生み出されていった。そのシンフォニックな器の中に果敢にリリシズムが盛り込まれていた。
細やかに音を操りつつ歌う喜びにも溢れたスケルツォは、凝縮された美しさのロングトーンで、そのまま第3楽章へ。やさしく寄り合う郷古と横坂の流麗さ、北村の奏でる細やかな粒。それらは一体となって賛美歌風の楽想を縫っていく。瞑想的な後半はさらに冒頭の印象を深めていった。圧倒的な推進力で迫るフィナーレは、彼らの演奏を第1部から聴きたかったという後悔を筆者に持たせることになった。

               (2020/9/15)


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<Performer>
Sunao Goko, violin; Gen Yokosaka, cello; Tomoki Kitamura, piano

<Program>
H. W. Henze: Kammersonten
J. Brahms: Piano Trio No. 1 in B Major, Op. 8