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コンティヌオ・ギルド(通奏低音組合)第5回公演 息吹き~ギャラント音楽を彩る通奏低音の世界~|大河内文恵

コンティヌオ・ギルド(通奏低音組合)第5回公演 息吹き~ギャラント音楽を彩る通奏低音の世界~
Continuo Guild 5th concert, featuring galant music

2020年2月3日 近江楽堂
2020/2/3 Oumi-Gakudo
Reviewed by 大河内文恵(Fumie Okouchi)
写真提供:コンティヌオ・ギルド

<演奏>        →foreign language
コンティヌオ・ギルド:
山縣万里(チェンバロ)
山根風仁(チェロ)
坂本龍右(13コースリュート)
ゲスト:
菅きよみ(フラウト・トラヴェルソ)

<曲目>
J. J. クヴァンツ:フルート・ソナタ ハ長調QV1:8
S. L. ヴァイス:序曲 変ロ長調
J. S. バッハ:ラルゴ・エ・ドルチェ(ソナタBWV1030初期稿より)
C. Ph. E. バッハ:フルート・ソナタ イ短調H. 555
~休憩~
G.B. プラッティ:フルート・ソナタ ト長調Op. 3-2
C. Ph. E. バッハ:ヴュルテンベルク・ソナタ 第5番変ホ長調H. 34
J. F. クラインクネヒト:フルート・ソナタ ロ短調Op. 1-6
~アンコール~
ドメニコ・スカラッティ:ソナタ K.208 (フルートと通奏低音のために、コンティヌオ・ギルドによる編曲)

 

「パンがなければケーキを食べればよい」と宣ったマリー・アントワネットのごとく、「演奏機会が少ないのならば作ればよい」と自主企画を立ち上げ、興味深い活動を繰り広げている奏者たちの演奏会を、近年多く見かけるようになった。その1つ、「通奏低音組合(コンティヌオ・ギルド)」の第5回公演に足を運んだ。

2017年2月に始動した「通奏低音組合」は、リュートの坂本とチェンバロの山縣によって結成され、毎回さまざまな楽器奏者や声楽家らをゲストに呼んで公演をおこなっている。今回はチェロの山根を加えた3人の通奏低音体制に、フラウト・トラヴェルソの菅をゲストに迎えての公演。ここのメルクマールはチェンバロとリュートがデフォルトであるこということである。弦楽器や管楽器が入った小アンサンブルの場合には、チェンバロとリュートの両方が入っている編成もみかけるが、ここまでミニマムな編成でチェンバロとリュートとが入ったものは、少なくとも日本ではあまり見かけない。

じつは今月は結果的に近江楽堂で似たような編成の演奏会3つを聴くことになったのだが、三者三様の様相になっていて興味深かった。今回でいえば、リュートの存在が大きい。たしかにリュートは音量が小さく、他の楽器と一緒に演奏するとほとんど音が聞こえない。だからといって、編成に入っている意味がないかといえば、そうではない。リュートの音としては聞こえていないのだが、通奏低音の響きの厚みが増し、音響の充実度が格段にあがっている。聴き終わったときには、たった4人のアンサンブルを聴いていたとは思えないたっぷりとした満足感があった。

演奏者による自主企画の場合、(筆者がそういった企画を好んで取り上げていることもあるが)ただ演奏したい曲を並べるというよりは、しっかりしたコンセプトを持ち工夫が凝らされたプログラミングがなされていることが多い。今回は、「ギャラント音楽」をテーマとし、フラウト・トラヴェルソ奏者がゲストであることから、フルート愛好家として知られるフリードリヒ大王とその時代の作曲家をめぐる選曲がなされていた。

冒頭のクヴァンツはまさにフリードリヒ大王のフルート教師として名高い人物で、フルートの作品を多く残している。演奏が始まった当初、ちょっとした違和感があった。1人1人はきちんと弾けているし、決して合っていないわけではないのだが、かみあっている感じがうすい。フラウト・トラヴェルソの音はこんなに聴こえないものだっただろうか。各自が自分のパートに集中し過ぎていて全体のバランスが取れていないように聞こえた。だがそれも、第3楽章あたりから改善されて、フラウト・トラヴェルソの音も聞こえるようになった。

リュート独奏の2曲目をへて、3曲目のJ.S.バッハはリュートとフラウト・トラヴェルソのみ。これはフルート・ソナタとして知られるBWV1030の初期稿(短三度低い調で書かれチェンバロ・パートのみ現存)にもとづき、おそらくフラウト・トラヴェルソは現存するBWV1030を3度下げ、初期稿のチェンバロをリュート用に編曲して2楽章のみが演奏された。このあたりからアンサンブルの醍醐味が味わえるようになってきた。

本日の演奏がとくにそうだったのだと思うが、この2楽章、J.S.バッハの曲だとわかって聴いていてもバッハの曲に聴こえないほど洒落ている(実際、1・3・4楽章はバッハらしい曲になっている)。ギャラント音楽のプログラムにこの曲をもってくるとは、なかなかのセンスである。

後半はプラッティのフルート・ソナタから。非常にわかりやすく聞きやすい曲。第3楽章の通奏低音がチェロだけになる部分がとても良かった。もちろん、他の箇所同様チェンバロやリュートを入れても何ら問題ないのだが、そこを敢えて他が沈黙することによって、チェロの良さが引き立ち、チェロ作品を多く書いているプラッティの書法の冴えが効いていた。

ギャラントらしさ全開のC.P.E.バッハのチェンバロソロ曲をへて、最後はクラインクネヒトのフルート・ソナタ。フルートの音色と通奏低音の倍音豊かな音響が相俟って、幸せな音空間が形成されると同時に、第2楽章ではチェロの職人芸を堪能した。いったいどうやったらあの急速なパッセージを他の楽器と同じテンションでいとも簡単そうに弾けるのか。最高潮に盛り上がった本篇につづきアンコールで演奏されたのは、ドメニコ・スカルラッティの鍵盤ソナタをアレンジしたもの。フラウト・トラヴェルソの音色がメロディーに合っていて、チェンバロで弾くと空疎に聞こえてしまいがちな低音もチェロで補強してそこにリュートが加わると、千人力。元が鍵盤曲だったとは思えないほど、しっとりと歌いあげて幕を閉じた。今後どのように展開していくのか楽しみな団体がまた1つ増えた。

(2020/3/15)


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<performers>
Continuo Guild :
Mari Yamagata (cembalo)
Futo Yamane (cello)
Ryosuke Sakamoto (lute)
Guest solist :
Kiyomi Suga (flauto traverso)

<program>
Johann Joachim Quantz: Sonata C-dur QV 1:8
Silvius Leopold Weiss: Ouverture B-dur
Johann Sebastian Bach: Largo e dolce(aus Sonate BWV1030, frühe Fassung)
Carl Philipp Emanuel Bach: Sonata a-moll H. 555
–Pause–
Giovanni Benedetto Platti: Sonata G-dur op. 3-2
Carl Philipp Emanuel Bach: Württemberg Sonata Vta Es-dur H. 34
Jakob Friedrich Kleinknecht: Sonata h-moll op. 1-6
–Encore—
Domenico Scarlatti: Sonata K.208 (arranged by Continuo Guild, for flauto traverso and basso continuo)