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Back Stage|「ベートーヴェン・プロジェクト」について|関本淑乃

「ベートーヴェン・プロジェクト」について
On Beethoven Project in Concert Hall Shizuoka

Text by 関本淑乃(Shukuno SEKIMOTO)

静岡音楽館AOIは静岡駅前にある、客席数618を有する室内楽を中心としたホールです。ホールのほか、講演会、発表会など様々な用途でご利用いただける講堂やリハーサル室があります。1995年に開館し、まもなく25周年を迎えようとしています。
野平一郎芸術監督のもと、コンサートシリーズと銘打って、年間15本程度の公演を行うと同時に、講座、講演会、アウトリーチなどにも取り組んでいます。
事業の核を成すコンサートシリーズでは、様々な音楽を聴いていただきたいという思いから、ジャンル、時代の両面から公演を組み立てています。ジャンルの面では、ピアノ、声楽、弦楽器、管楽器、オーケストラなど、多様なコンサートを行っており、中でも、室内楽ホールであることから室内楽をとりわけ重視しています。また、いわゆるクラシック以外にもジャズやワールドミュージック、日本の音楽も紹介しています。そしてもう一方の時代の面では、バロック、古典派、ロマン派から近現代に至るまで、さらに、まさに時代の最先端をいく音楽をお聴きいただこうと、毎年、作曲家に作品を委嘱し、世界初演を手掛けています。

ところで、2020年は東京オリンピックの年です。開催まで1年をきり、ますます盛り上がりを見せてきています。そんな中、ベートーヴェンが生誕250年を迎えます。きっと、日本のみならず世界中でベートーヴェンの作品が聴かれることでしょう。
そこで、AOIでは他に先駆けて、今年度より「ベートーヴェン・プロジェクト」と名付け、ベートーヴェンの作品を特集しています。中心となるのは「オーケストラを聴こう!」というシリーズ。これまでにも「シューマン:交響曲全集」、「ブラームス:交響曲全集」など、ある一人の作曲家の交響曲を全曲お届けしてきましたが、「ベートーヴェン:交響曲全集」として、数年かけてベートーヴェンの交響曲をお聴きいただきます。まず今年度は7月に「ベートーヴェン:交響曲全集Ⅰ」として、交響曲第1番、第3番の2曲を取り上げました。そして来年2月の「交響曲全集Ⅱ」で、交響曲第2番、第6番《田園》、《エグモント》序曲をお届けします。AOIのコンサートに対するアドヴァイスをいただく企画会議委員の1人、沼尻竜典氏の指揮で、毎回異なるオーケストラが登場します。
先日行われたAOIレジデンス・クヮルテット公演では弦楽四重奏曲第5番を取り上げました。レジデンシャル・カルテットであるAOI・レジデンス・クヮルテットは開館と同時に結成され、一部メンバー交代をしながら現在まで活動を続けてきました。現メンバーは松原勝也、小林美恵(ヴァイオリン)、川本嘉子(ヴィオラ)、河野文昭(チェロ)の各氏。いずれもソリストとしても活躍する日本を代表する演奏家です。このカルテットは継続的にベートーヴェンの弦楽四重奏曲に取り組んでおり、ラズモフスキー・セット(弦楽四重奏曲第7~第9番)をはじめ、近年ではop.18、つまり弦楽四重奏曲第1~6番を順番にお聴きいただいていました。そして、今月末に開催するアレクサンドル・タロー ピアノ・リサイタルでは最後のピアノ・ソナタ、第32番を演奏します。

ピアニストのためのアンサンブル講座

公演以外に展開している事業の一つに、アンサンブルができるピアニストを育成しようと実施している「ピアニストのためのアンサンブル講座」があります。全10回で、実技レッスン、アナリーゼ、講義の3本立てのカリキュラムから成り、音源審査により選抜された5名が受講します。講座の最終回、第10回は総仕上げの修了記念コンサートです。第14期を迎えた今年度はヴァイオリンの漆原啓子、チェロの向山佳絵子の各氏、そして野平芸術監督が講師を務め、ヴァイオリンとのデュオ、チェロとのデュオ、ピアノ・トリオに取り組んでいます。これまでピアノ・トリオではモーツァルト、シューベルト、ブラームス、チャイコフスキー、ラヴェルなどを取り上げていましたが、今期はベートーヴェンのピアノ・トリオに絞り、集中して取り組んでいます。この講座は公開されており、レッスンなどをご覧いただくことができます。
メモリアル・イヤー本番の2020年度では交響曲や弦楽四重奏曲に加えてベートーヴェンの人となりにも迫るコンサートも実施し、「ピアニストのためのアンサンブル講座」ではヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタを重点的に取り上げる予定です。どうぞご期待ください。なお、コンサート・シリーズ2020-21の内容につきましては、年明けには発表の運びとなります。今しばらくお待ちくださいませ。

関本淑乃(静岡音楽館AOI 学芸員)

(2019/11/15)

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<公演情報>
◆オーケストラを聴こう ベートーヴェン:交響曲全集Ⅱ
2020年2月2日(日)15:00開演(14:30開場)
全指定 ¥6,000(静岡音楽館倶楽部会員 ¥5,400、22歳以下¥1,000)
L.v.ベートーヴェン:劇音楽《エグモント》op.84 序曲
          交響曲第2番 ニ長調 op.36
          交響曲第6番《田園》ヘ長調 op.68

◆アレクサンドル・タロー ピアノ・リサイタル
2019年11月30日(土)18:00開演(17:30開場)
全指定 ¥4,000(静岡音楽館倶楽部会員 ¥3,600、22歳以下¥1,000)
C.ドビュッシー:《映像》第1集 より ラモーを讃えて
        牧神の午後への前奏曲(A.タロー 編)
L.v.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 op.111 ほか

◆第14期 ピアニストのためのアンサンブル講座
第7回 12月4日(水)13:30~19:30 実技レッスン
第8回 12月5日(木)10:00~12:00 アナリーゼ(楽曲分析)
           13:30~14:30 講義 ピアノをめぐる音響を考える
           14:45~19:30 実技レッスン
L.v.ベートーヴェン:ピアノ・トリオ第4番《街の歌》変ロ長調 op.11
                第5番《幽霊》ニ長調 op.70-1
                第7番《大公》変ロ長調 op.97 ほか
聴講料 一般¥1,000、22歳以下 無料(静岡音楽館倶楽部会員はレッスンのみ無料)