Pick Up (19/9/15)|ソッリマと100人のチェリストたち|丘山万里子

ソッリマと100人のチェリストたち
Giovanni Sollima & 100 cellos concert

2019年8月12日 すみだトリフォニーホール
2019/8/12 SUMIDA TRIPHONY HALL
Reviewed by 丘山万里子(Mariko Okayama)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)
     三浦興一/写真提供:すみだトリフォニーホール
     石田昌隆/写真提供:プランクトン

<演奏>        →foreign language
ジョヴァンニ・ソッリマ
エンリコ・メロッツィ
レイラ・シルヴァニ、リカルド・ジョヴィーネ、カルロ・マリア・パウレス、ジョヴァンニ・クリスピーノ
100人のチェリスト(公募/奏者合計129人)

<曲目>
ヘンデル:サラバンダ
ザ・ベスト・ロック・リフ
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 プレリュード
イタリア伝統舞曲:ピッツィカ・インディアヴォラータ
ヴィヴァルディ:主が家を建てられるのでなければ
デヴィッド・ボウイ:世界を売った男
ワーグナー:テンポ・ディ・ポラッツィ
メロッツィ:サウンド・オブ・フォーリング・ウォールズ
〜〜〜〜〜〜〜〜
ソッリマ:チェロよ、歌え!
パーセル:冷たい歌
ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 第3楽章
ピンク・フロイド:アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール
ニルヴァーナ:スメルズ・ライク・ティーン・スピリット
アフリカ讃歌 Nkosi Sikelel’ iAfrica 神よ、アフリカに祝福を

(アンコール)
ギリシャ伝統音楽:シルタキ・コフト
レナード・コーエン:ハレルヤ

ステージには溢れんばかりのチェロ、チェロ、チェロ・・・。
照明の落ちた客席のドアが開いた(らしい)。なんか聴こえる。
スポットライトとともに、な、なんとソッリマがチェロを弾きながら歩いてくるではないか(クラシックでは初体験ゆえ唖然だが、思えば欧米街角の楽士などで見た気が。が、宴も半ばで寝っ転がって腹上での超絶技巧演奏に至っては、やはり唖然)。
で、煽るのだ、ステージ上のカラフルチェロを振り上げ相方のメロッツィが。客席これに応え一気に狂騒、歓呼、足踏み、ロックライブの盛り上がりでいざ開幕。

いちいちの説明など野暮ゆえ省く。
むろん、130近くのチェロが鳴り響くシンプルな大迫力と美しさはヘンデルやバッハに味わえたし、一方、はちゃめちゃなグルーヴとノリ、楽器振り上げダンス、足踏み、叫声、などなど、ロック系での噴火ぶりにも丸ごともって行かれたが、どんなシーンでもソッリマの灼熱マグマが全員を沸き立たせ、あるいは豊かな情愛(というほかない)が音楽と人とをはろばろ包み込む様は、お堅いステージでは得られない「ズン」とくるものだった。

(C)石田昌隆/写真提供:プランクトン

もっとも、前半プロは変化に富み、一つ一つがそれぞれの顔立ちを見せ、メロディアスだったり、シンフォニックだったり、様々なアレンジで楽しめたものの、後半、耳が慣れるとやや一辺倒に。北斎の『神奈川沖浪裏』をスクリーンに映写もあって、北斎画をテーマの作曲作品公募、ステージで発表のそれか、と思ったが、中止になったと後で知る。この企画、かなり期待していたので残念。
長い曲に中途で飽きたりはしたものの(ブラームス・・・)、筆者はそんな時、居並ぶ老若男女のチェリストたち(8歳~70代)の様子をチェック、これがなかなか興味深かったのである。

やたら筆者の目を引いた前列の若者一人。嬉しくて、幸せで、ソッリマに全身吸い付き離れない。視界から彼が外れると振り向いて追う。一緒に弾いている喜悦が半端なく「天にも昇る気持ち」とはこんなことであろう。普段は(筆者が接する)見かけぬ猛烈熱量、強烈引力を奏者にまざまざ実感する。
後半途中でソッリマに「二人のキッズが参加!」と紹介され立ち上がった小学生と思しき少年少女。その弾きっぷりはいわゆる天才児のそれではないわけで、公募に応じて混じった巷の生徒然。アッチェルランドについて行けなくなるところなど、実に心あったまる。それでいい、それがいい。練習は3日間だったと聞く。

そうして最後、忘れがたい光景が。
『アフリカ讃歌』だ。反アパルトヘイトの象徴歌とされ、南アフリカ共和国国歌でもあるという。教会で歌われる賛美歌の一つとして作詞作曲(1897)されたもの。
メロッツィがスマホを取り出す。「みんな、手を挙げ、音楽と一緒にこれを振って!」
客席の暗い海に、青緑の光が波のように揺れる。
綺麗だ、ものすごく綺麗だ。
一人一人の、光なんだ。
それが、一緒に揺れているんだ。

(C)三浦興一/提供:すみだトリフォニーホール

闇と音と光の大波小波、その神々しいまでの大海原の中、筆者もまた振り続け、声を合わせ歌い続けたのだった。

ジャンル越え、とか、多様性、とか、いろいろ言うけど、そんなことはどうでもいい。
世の中は、危ないことだらけだ。
けれど、光はある。
「光あれ」と神は言ったが、そうじゃない。
「光たれ」なのだ。
ソッリマとともにこの時間を過ごしたすべての人々、あの若者、少年少女は決してこの光の実在を忘れないだろう。
それが、ソッリマだ。

 (2019/9/15)

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<Artists>
Giovanni Sollima, cello
Enrico Melozzi, cello
100 cellists

<Program>
Händel : Sarabanda
The Best Rock Riffes
J.S. Bach : Cello Suite No. 1 Prelude
Italian traditional dance : Pizzica indiavolata
Vivaldi : Nisi Dominus
David Bowie : The Man Who Sold The World
Wagner : Tempo di Polazzi
Melozzi : The Sound of Falling Walls
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Sollima : Violoncelles, Vibrez!
Purcell : The Cold song
Brahms : Piano Concerto No. 2 Ⅲ mov
Pink Floyd : Another Brick in the Wall
Nirvana : Smells Like Teen Spirit
African singing  Nkosi Sikelel ‘iAfrica

(Encore)
Greek Traditional Music : Sirtaki
Leonard Cohen : Hallelujah