NHK交響楽団 第1907回定期公演Cプログラム|谷口昭弘

NHK交響楽団 第1907回定期公演Cプログラム

2019年 2月16日 NHKホール
Reviewed by 谷口昭弘 (Akihiro Taniguchi)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

<演奏>
アレクサンダー・ガヴリリュク(ピアノ)
パーヴォ・ヤルヴィ指揮:NHK交響楽団

<曲目>
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
(ソリスト・アンコール)
ラフマニノフ(コチシュ編曲):ヴォカリーズ
(休憩)
プロコフィエフ:交響曲 第6番 変ホ長調 作品111

 

ピアニストは当初予定されていたカティア・ブニアティシヴィリが健康上の理由により来日不可能となったため、ソリストはアレクサンダー・ガヴリリュクに変更になった。
まずラフマニノフは、ガヴリリュクが冒頭から奏でる、ずしりとした剛気の低音から耳を惹きつけられた。そして金管楽器が入るまでは、中低音におけるオケとピアノの一体感に唸らされる。そのため、ピアノの高音域が、これら一体化したふくよかな空気に意識的にきらびやかな音色を与えていることを逆説的に知ることになった。また、この曲においては弦楽器のアルコやトレモロの線的楽想が一方に、ピアノのアルペジオによる点の連なりが他方にあり、そのどちらを聴かせるのか、あるいは両方聴かせるのかが綿密に練られ、明確に捉えられていた。
第2楽章は、そういった独奏楽器とオケの絶妙なバランス上のやり取りとは打って変わり、自然なアゴーギクの中に放たれる情感豊かなピアノが中心に据えられていた。ガヴリリュクが奏でるアルペジオが常に聴こえ、彼の演奏経験の豊かさを引き出すオーケストラだった。第3楽章はスマートでシャープな進行の中にピアノがたっぷりと歌い、オーケストラはフゲッタの部分を含め、旋律提示の中で音色が細やかに移り変わる部分も聴こえた。アンサンブル全体も自然に真ん中に集まっていき、大きく鳴らしても決して暴発しないのは、指揮者の統率力のなせる業なのか、ヤルヴィらしさなのか。

休憩を挟んでのプロコフィエフの第6交響曲はきびきびとしたタクトがフットワークの軽さを生み出していた。ソナタ形式を取りつつも、セクションごとの新たな個性的な楽想に耳を傾けたくなる展開だ。音色の面白さ、テンポの切り替わり、不協和音の扱い方により、各々の箇所が他所からしっかりと分離して聞こえてくる。決然とした音のスピード感が心地よい。
分かりやすいモティーフを提示しつつ、第2楽章はカオスなオープニングから、すわり心地の悪い緩徐楽章となっていた。音楽に浸ることが許されないような不思議な転調と騒々しさもあった。きっとこれがプロコフィエフらしい音楽と呼ぶべきものなのだろう。そして第3楽章は冒頭からチェロの刻みが気持ち良い。ダウンビートをずしりと鳴らしつつ、第1楽章同様、きびきびとした流れだ。木管とトロンボーンの応答など遊び心も満載で、聴き手を終始楽しませた。これは実演で接することができてうれしい一曲だった。

(2019/3/15)