神奈川フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 みなとみらいシリーズ 第343回|藤堂清

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 みなとみらいシリーズ 第343回

2018年10月13日 横浜みなとみらいホール
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
Photos by 藤本史昭/写真提供:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

<演奏>
指揮:川瀬賢太郎(常任指揮者)
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
メゾ・ソプラノ:波多野睦美#
ピアノ:野田清隆#
児童合唱:横須賀芸術劇場少年少女合唱団#
ソプラノ:市原愛*

<曲目>
権代敦彦:子守歌 ~メゾソプラノ・ピアノ・児童合唱とオーケストラのための~#
マーラー:交響曲第4番ト長調*

 

3台のチューブラーベルの音の高まりが強奏するオーケストラをも圧して響く。
権代の《子守歌》は、突然亡くなった子供を偲び悼む曲、レクイエム。2001年、大阪教育大学附属池田小学校における無差別殺傷事件、8名の児童が犠牲となった。その一人の母親が娘にあてて書いた手記を歌詞の一部としている。
曲は三つの部分で構成される。
第1章では、波の音と律動が穏やかに始まり、次第に勢いを増す。それは海で聴くものであり、母の胎内で聴いてきたものかもしれない。「いのち」が「ひかり」のなかに出て、ふたたび「ねむり」に入る。メゾ・ソプラノは、旧約聖書続編「知恵の書」から第4章第7節、16節をラテン語で歌い、「ねむれ」と繰り返す。児童合唱は、「ひかり」「いのち」を何度か歌いながら、こちらも「ねむれ」へとつなげていく。
ピアノに先導されて第2章に入る。メゾ・ソプラノが手記を歌い始め、合唱がそれを引き継ぎ、読み上げる。「こんなことで突然閉ざされるなんて・・・」「一体、何のためにこの世に出てきたのでしょうか?」という投げかけの後に、レクイエムの一部が両者によって歌われる。手記の最後、「心の中にいつもいるから、これからも・・・」という言葉で第3章へと続く。
「ずっと 一緒だからね!」と歌われた後、死者に平安をと祈るレクイエム典礼文が、「ねむれ」「おやすみ」を交えて歌われる。最後にメゾ・ソプラノが「知恵の書」の第4章第10節から14節の日本語訳を語るように歌い、合唱の「おやすみ」「ねむれ」で静かに終わる。
波多野の安定した声、言葉のはっきりした歌は、川瀬の骨太な音楽作りにマッチしている。児童合唱が母親の気持ちを明瞭な発音で伝えていた。また合唱団の中のソロを務めた二人もそれぞれの役割を果たしていた。
音楽面では、作品・演奏ともにすぐれたものであった。気になったのは、独唱、合唱に使われたPAが大きく、オーケストラとのバランスが悪かったこと。合唱のソロでの必要性は分かるが、独唱者への利用は控えめであった方が良いと感じた。

後半のマーラーの《交響曲第4番》も、指揮者の骨格のしっかりとした音楽が聴けた。管楽器が強い音を出すところで音が割れたり、弦楽器のパートの中でばらけることがあるといった点はあったが、川瀬とともに音楽をつくろうという熱意は感じとれた。
第4楽章で〈天上の生活〉を歌った市原愛、きれいなドイツ語がオーケストラの響きにのって響いてくる。ここでの川瀬の大きめなテンポの揺らし方は面白く聴けた。余談になるが、歌詞に仔羊(イエスを指す)を殺すヘロデが登場するなど、天国とは思えないような場面も描かれているのが、いつ聴いても不思議。

最後に筆者の疑問を書いておきたい。まったく信仰を持たない人間だということは最初にお断りしておく。
1曲目の第3章の最後の部分で歌われる「知恵の書」からの抜粋は「彼の魂は御心に適ったので、主は急いで彼を悪の中から、取り去られた。」というもの。こちらの読み方が間違っているのかもしれないが、若くして亡くなった人のことを、それも神のお考えであるというように言っているように感じる。《子守歌》の歌詞を書かれた方は、この部分、どのようにお聴きになったのだろう。

(2018/11/15)