室内合唱団 日唱 第22回定期演奏会|佐野旭司

室内合唱団 日唱 第22回定期演奏会
=バッハ思考=
~カンタータとマタイ受難曲~

2018年10月3日 豊洲シビックセンターホール
Reviewed by 佐野旭司 (Akitsugu Sano)

<演奏・出演>
山崎滋 (指揮)
室内合唱団 日唱 (合唱)
日唱室内アンサンブル (管弦楽)

<曲目>
J. S. バッハ:カンタータ第4番《キリストは死の縄目につながれたり》BWV 4
J. S. バッハ:カンタータ第106番《神の時こそいと良き時》BWV 106
J. S. バッハ:《マタイ受難曲》BWV 244 より抜粋

 

1963年に設立され、55年間活動を続けている日本合唱協会(通称、室内合唱団 日唱)。2014年に一般社団法人として新たにスタートして以来、先月までに定期演奏会を22回開いており、ルネサンスやバロックの作品からベンジャミン・ブリテンやジョン・ラター、さらには日本の合唱曲と、そのレパートリーは幅広い。
そして先月開かれた第22回定期演奏会ではJ. S. バッハに焦点を当て、教会カンタータ2曲と《マタイ受難曲》を取り上げていた。
合唱、器楽ともに少人数であったが、演奏はいわゆる古楽的なものではなく、「ロマンティック」な表現であった。

プログラム前半の曲目はカンタータ第4番と第106番。
1曲目のカンタータ第4番は、シンフォニア(第1曲)に始まり第2~8曲で《キリストは死の縄目につながれたり》という7節からなるコラールを、1節ずつ歌うコラールカンタータである。そして今回は4声の曲(第2,5,8曲)だけでなく、二重唱(第3、7曲)や1声の曲(第4、6曲)もすべて独唱ではなく合唱で歌っていた。それにより、合唱と独唱の対比的な性格が見られない代わりに、簡素ながらも重厚で厳かな音色を生み出したといえる。このカンタータは復活祭第1日のために作られたが、復活の喜びよりもキリストの受難やその背後にある人々の罪を顧みる内容で、厳粛な曲調が支配的である。この演奏ではそうした性格が、上述の試みにより効果的に表されたといえよう。

2曲目のカンタータ第106番は、リコーダーとヴィオラ・ダ・ガンバ(各2本)に通奏低音という編成だが、本公演では通奏低音にチェンバロを含む以外はすべてモダン楽器を用いており、リコーダーのパートはフルートで、ヴィオラ・ダ・ガンバのパートはヴィオラでそれぞれ代用していた。しかし古楽的な要素が全く無視されているわけではない。ことにフルートは決して音が強くならず、むしろトラヴェルソを思わせる音色といっても過言ではないだろう。

プログラム後半は《マタイ受難曲》。周知のようにこの曲は2群の合唱とオーケストラからなるが、今回は合唱、器楽ともに前半のカンタータと同じメンバーで演奏していた。少人数によるアンサンブルで、ソプラノとアルトが各6名、テノールとバスは各4名、フルート、第1、第2ヴァイオリン、ヴィオラが各2名に通奏低音(チェロ、コントラバス、チェンバロが各1名)という編成であった。しかも第1曲と終曲ではなんとこれを2群に分け、さらに第1曲ではソプラノ2名がリピエーノのパートに回っていたのである。しかしそれでも重厚さや一体感が損なわれることなく、合唱はむしろカンタータの時よりもまとまっていたくらいだ。
またこの曲では「ロマンティック」なアプローチがさらに際立っていた。特にコラールはア・カペラであったが、これでもかというくらい“エスプレッシーヴォ”に歌っていたのが印象的である。
オーケストラも公演全体を通して、そのような表現に見合った豊かな響きであり、モダン楽器の良さを十分に生かしていたといえよう。

(2018/11/15)

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佐野旭司 (Akitsugu Sano)
東京都出身。青山学院大学文学部卒業、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程および博士後期課程修了。博士(音楽学)。マーラー、シェーンベルクを中心に世紀転換期ウィーンの音楽の研究を行う。
東京藝術大学音楽学部教育研究助手、同非常勤講師を務め、オーストリア政府奨学生としてウィーンに2年留学、2018年7月帰国。