Back Stage | もっと日本で聞かれて欲しい | 岡村雅子

もっと日本で聞かれて欲しい

text by 岡村雅子(Masako Okamura)

つい先頃、オカムラ&カンパニーは最も忙しい6月を過ごしました。トランペットのベルワルツが神戸市室内合奏団とショスタコーヴィチのピアノ協奏曲(トランペットもソリストです!!)とトレッリのトランペット協奏曲のプログラムで神戸と札幌で演奏。そしてほぼ同時にパリを拠点とするヨーロッパで最も人気の弦楽四重奏団の一つ、ディオティマ弦楽四重奏団(以下、ディオティマ)が最初の公演地松本入り。

続いて6月18日からメキシコの打楽器アンサンブルのタンブッコが、京都入り・・・

ディオティマは、当社アーチストになって最初のツアーが2016年、NHKのテレビ収録もあり、朝日新聞にもいい演奏会評が載った。そして今回2018年は当社アーチストとしては2度目のツアー。横浜みなとみらいでバルトークの全曲演奏。松本、京都、倉敷ではバルトーク2番、望月京作品(彼らのために作曲された『Brains』日本初演)、シューベルト『死と乙女』のプログラム。どの会場でも繊細さを極めた演奏に主催者、聴衆の絶賛の声が聞こえてきた。

とはいえ、弦楽四重奏の集客はなかなか難しい。1987年にカザルスホールが「室内楽の時代がやってきた」との旗を掲げてオープンして以来、この30年のあいだに劇的に変化したかどうか・・・2020年の次の来日まで、いやできるだけ早くになんとか、画期的な方策を見つけたい!!

カザルスホールに続いて、都内には王子ホール、浜離宮朝日ホール、津田ホール、トッパンホール、第一生命ホール、のちにハクジュホールなど多くの室内楽ホールが誕生し、それぞれ独自のプログラムを展開。この時代から制作に携わっていた愛情と行動力溢れた人材や質の高い演奏家による優れた演奏により、室内楽の時代は、実際、やってきていたのです。

この短い歴史の中で、私にとって、そしてカザルスホールにとっても外すことができない弦楽四重奏団がアルディッティ弦楽四重奏団ですね。1988年、武満徹氏が関わっていた現代音楽フェスティバル「Music Today」に彼らが招かれました。初来日。カザルスホールでも1回演奏会を主催することになりました。アルディッティたち4人の圧倒的な演奏に、いつもは苦虫をかみつぶしたような支配人はじめ、制作に関わる人たち全員が、彼らの演奏にまさに圧倒され、ひれ伏すのみ。以降、何回もカザルスホールに招かれるグループとなりました。数々の近現代作品の演奏、いい演奏には説得力があります。ある時は、日本人作曲家委嘱新作特集が開催されたり、完売の演奏会があったり、関わる人全員のやる気を鼓舞してくれるアルディッティたちでした。

アルディッティ弦楽四重奏団
写真提供:2017年トンヨン音楽祭

私が忘れられないのは、カザルスホールが委嘱した作品の一つ、石井眞木さんの『西・金・秋』でした。生まれて初めて音楽から色を体験しました。アルディッティたちの演奏を聴いていると、カザルスホールの天井から、金色のフレークが降ってくるのが見えました。(実は、のちに、東京オペラシティコンサートホールでシャリーノ特集があった時、どの作品かは覚えていませんが、透明の三角錐が、奏者たちの空間に作られたのを見ました。)

170623 撮影:井上嘉和
提供:ロームシアター京都

私の心をつかんだアルディッティ弦楽四重奏団。2000年、彼らの日本での歩みで刺激となったのは、リーダーのアーヴィンから送られてきたある音楽でした。つい先ごろCD録音したばかりというメモ付きの録音でした。日曜日の午後みたいなゆったりした音楽。音符が極端に少ない!もしかしたらダンスとか映像との組み合わせでおもしろいものができるかもしれない・・・その直感は正しかったんです。ジョン・ケージの『44のハーモニー アパートメントハウス1776』。寡黙なダンサー、演出家の白井剛さんに出会いました。素晴らしい演目の誕生です。新しく質の高いおもしろいものに目がない津田ホールの企画制作ご担当楠瀬寿賀子さんの心も射止めました。コンサートホール仕様の『アパートメントハウス1776』ができあがりました。この組み合わせで、10都市以上で上演が実現しました。2017年、白井剛さんは、もう一度アルディッティ弦楽四重奏団と、今度はクセナキスで共演。信頼を寄せていた津田ホールは、残念ながら2015年に閉じられていました。

いい演奏は、きっとみんなにわかってもらえる、喜んでもらえる。それが古くても新しくても。

岡村雅子(株式会社オカムラ&カンパニー代表)

関連評:ディオティマ弦楽四重奏団 バルトーク弦楽四重奏曲全曲演奏会|藤原聡
関連評:ディオティマ弦楽四重奏団 バルトーク弦楽四重奏曲全曲演奏会|齋藤俊夫
関連評:ディオティマ弦楽四重奏団|能登原由美

 (2018/7/15)

—————————————————
公演情報
トーク&コンサートシリーズ vol.6
Noh X Contemporary Music 能X現代音楽
<第1回>
2018年8月16日(木)19時開演
会場:SHIBAURA HOUSE 5F バードルーム(港区芝浦3-15-4)
出演:青木涼子(能)
   山根孝司(クラリネット)
   横島礼理(ヴァイオリン)
   ファビア・サントクフスキー(作曲)
   シュテファン・バイヤー(作曲)
<第2回>
2018年9月6日(木)19時開演
会場:SHIBAURA HOUSE 5F バードルーム(港区芝浦3-15-4)
出演:青木涼子(能)
   松岡麻衣子(ヴァイオリン)
   竹本聖子(チェロ)
   アンナキアーラ・ゲッダ(作曲)
   神山奈々(作曲)パウロ・ブリトー(作曲)
プログラム:
第1部 作曲家よりプレゼンテーション「自分の音楽と能」
第2部 演奏
チケット:2,500円(港区民優待料金2,000円)
★お勧め理由:日本の伝統芸能「能」の謡の可能性を現代に求める企画。
日本だけでなく海外の作曲家が「謡」と青木涼子の声に触発され新しい音楽の可能性を探るユニークさが興味深い。
http://okamura-co.com/concerts/aoki2018/
http://ryokoaoki.net/concert/