撮っておきの音楽家たち|リュカ・ドゥバルグ|林喜代種

リュカ・ドゥバルグ(ピアニスト) 

2018年2月14日・18日 サントリーホール
   2月20日  トッパンホール
photos & text by 林喜代種 (Kiyotane Hayashi)

2月に来日したフランスの新鋭ピアニストのリュカ・ドゥバルグはすでにゲルギエフ、フェドセーエフ、ギドン・クレーメル等の著名音楽家との共演者として招かれている。
1990年生まれ。11歳でピアノを学び始める。一度ピアノから離れ、パリ第七大学で理学と文学の学士号を取得。再びピアニストになる決意をする。そしてリュエイル=マルメゾン音楽院でレナ・シェレシェフスカヤと運命的な出会いを果たす。教授はドゥバルグの優れた才能と将来性を確信し、パリのエコール・ノルマル音楽院の自分のクラスに入学させる。同時にパリ音楽院でもジャン=フランソワ・エッセールに学び、2015年ピアノ演奏において学士号を取得。2014年アディリア・アリエヴァ国際ピアノコンクールに優勝。2015年チャイコフスキー国際コンクールでは1位の前評判が高かったが4位。が、参加者のあこがれの「音楽批評家協会特別賞」をただ一人受賞。その時の審査員の一人が5月に来日公演をするアレクサンドル・トラーゼである。
2016年6月にはギドン・クレーメルと来日公演を行なっている。その時のクレーメルのドゥバルグに対する気配りは記憶に新しい。今回の演奏はクレーメルのクレメラータ・バルティカの室内オーケストラとの共演、クレーメルとのデュオ、ショパンのプログラム中心のリサイタルの各日。
ドゥバルグは文学、絵画、映画、ジャズ等に関心をもつ。ある雑誌のインタビューで、「素晴らしい音楽作品や文学作品に出合うと平常心を保つことができず、不眠や食欲減退などの一種の興奮状態に陥る」「大学時代図書館に入り浸り、神学、美学の本を多く読む。哲学は人間味も神秘性も感ぜず興味を持てなかった」「作家ではバルザックとドストエフスキーが自分の心をつかんだ作家」「愛読書は数え切れないほどあるが、フランス文学ではプルーストの『失われた時を求めて』、スタンダールの『赤と黒』『パルムの僧院』他多数」「映画は古い作品をよく見る。よく見る日本映画の『生きる』は普遍的な説得力がある」「人々とコミュニケーションするには演奏というツールだけでは不十分とも感じ、作曲にも意欲を持っている」「書くことは思いに適した言葉を見つけて思考を明確にし、気持を整理する一番の方法」と答えている。探究心旺盛なリュカ・ドゥバルグの演奏はこんなところに裏打ちされている。人間的にも興味深い演奏家である。

(2018/3/15)