銀座ぶらっとコンサート #124 通崎睦美 ~にっぽん!~|藤堂清

銀座ぶらっとコンサート #124
通崎睦美 ~にっぽん!~

2017年8月23日 王子ホール
Reviewed by 藤堂 清 (Kiyoshi Tohdoh)
Photos by横田敦史/写真提供:王子ホール

<演奏>
通崎睦美(木琴)
鷹羽弘晃(ピアノ)

<曲目>
服部良一/伊佐治直編:銀座カンカン娘
山田耕筰:「日本組曲」より お江戸日本橋・かっぽれ
長崎伝承曲/野田雅巳編:木琴でんでらりゅう
万城目 正/当摩泰久編:リンゴの歌
海沼 實/野田雅巳編:みかんの花咲く丘
平岡精二/鷹羽弘晃編:学生時代
鷹羽弘晃:木霊〜独奏木琴のための
大中寅二/伊佐治直編:椰子の実
林 光:フルート・ソナタ「花のうた」より 第3楽章
H.スピアレク・平岡養一編:日本狂詩曲〜貴志康一作品による
—————-(アンコール)——————
E.ハッチ:人力車
山田耕筰/矢代秋雄編:赤とんぼ

 

平岡養一、日本だけでなく世界的にみても第一人者であった木琴奏者。その彼が愛用していた1935年製の楽器、特注で4オクターヴ半の音域をカバーするもの。マリンバ奏者、通崎睦美が平岡の遺族から譲り受け、コンサートを続けている。
外見がよく似た打楽器マリンバの奏者は多いが、通崎の言葉を借りれば、「いま木琴のプロ奏者は私一人」という。

この日、プログラムに選ばれた作品の多くは木琴のために編曲され、平岡が演奏し続けてきたもの。テーマである「にっぽん!」に合わせ、昭和の時代に歌われ、演奏された曲が並んだ。
聴衆の中には、実演やテレビなどで平岡のこれらの曲の演奏を聴いた方もおられただろう。
木琴特有の残響の少ない乾いた響き、その一打一打の音の美しさ。トレモロによる響きの継続もコロコロと打音が際立ち、それが魅力となる。マレット(バチ)の固さ、大きさによって、音のタイプがカツンとした響きから柔らかなものにまで大きく変わるのも楽しい。
通崎自身による曲目解説も、「銀座ぶらっとコンサート」にふさわしい和やかな雰囲気づくりに寄与していた。〈お江戸日本橋〉や〈かっぽれ〉は平岡が名刺代わりにしていた曲だろう、一気に時代を巻き戻してくれた。

ピアノを担当した鷹羽の作品、〈木霊〉はプログラムのなかでは唯一の木琴独奏曲、2013年に初演された。固いバチと柔らかいバチを1本ずつ持ち、二本の違いを活かした曲。前者によるカッチリとした音と後者の柔らかな響き、音量の差も大きく、柔らかいバチによる音がエコーのように聞こえる。バチを演奏中に持ち変えることで高音域と低音域の役割を逆転させたり、固いバチでの打鍵の違いにより多様な音色を引き出すなど、彼女とこの楽器のために書かれたことが分かる。

貴志康一の作品に基づく〈日本狂詩曲〉は、「日本的」な曲を求める平岡の依頼で編まれたもの。彼、晩年の十八番であった。打鍵の強弱の幅をもたせ、ダイナミクスを大きくとった演奏で、ピアノと協調したり、競合したり、響きの立ち上がり、継続時間、音色の幅など、この楽器の機能を最大限、発揮していた。

昼下がりのひととき、木琴の音を頭の中に響かせたまま、何かなつかしさをおぼえながら銀座の街を歩いた。

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参照:五線紙のパンセ|その1)木製の曲・ふたつ|鷹羽弘晃