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兵庫芸術文化センター管弦楽団 第95回定期演奏会|小石かつら

兵庫芸術文化センター管弦楽団 第95回定期演奏会
〜オール・エルガー・プログラム〜

2017年4月21日 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
Reviewed by 小石かつら( Katsura Koishi)
Photos by 飯島隆/写真提供:兵庫県立芸術文化センター

〈演奏〉
兵庫芸術文化センター管弦楽団
ジョセフ・ウォルフ(指揮)
漆原朝子(ヴァイオリン)

〈曲目〉
エルガー:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 op.61
エルガー:交響曲第1番 変イ長調 op.55

 

エルガーだけの演奏会。しかも、50分以上の大作が2曲。どんな演奏会になるのだろうか、と気が逸る。果たして始まったのは、角張ったところのまったくない、滔々と流れる音楽だった。なによりオーケストラが、悠長で豊かな美しさに満たされていた。

言うまでもなく兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオーケストラ)は、3年任期の若手奏者によるオーケストラだ。楽曲を勉強し、演奏し、ひとつひとつ糧として前進していく。その活気ある若手集団の中に、NHK交響楽団、山形交響楽団、東京交響楽団といった各地のオーケストラの首席奏者たちが、各パートのトップ奏者として入り込んで核となり、全体を牽引していく。このスタイルが、ほんとうにうまくいっていると感じた。基本となる集団が若くて、ゲストとして大先生がやってきてくれる。だからこそ、客席を飲み込むような、ふくよかな音楽が生まれたのだと思う。

ヴァイオリニストでもあるという指揮のジョセフ・ウォルフは、彼もまた若手だが、おおらかで、音楽を、和声の変化を軸に捉える。次々とつながっていく音の響きの移り変わりに、ぴったりと寄り添って、内側から音楽を運んでいく。だからだろう。ていねいに音を紡ぐ漆原朝子、オーケストラ、そしてウォルフ自身という三者が、すうっと一体化していく。
英国の音楽家としてのエルガーの音楽に、英国の指揮者として親密な関係を築く。(そういうスタイルをよしとする表面的なマネージメントには異論があるけれども、)規模の大きい作品に内側から接近していくというウォルフのやり方は、「英国」を強く感じさせるもので、大満足の演奏会だった。今回の演奏会は、「プログラムがエルガーであること」が最大のウリだったはずだ。その結果「またエルガーを聴きたい」という要求をいだいた聴衆を満足させるような、今後のプログラムに期待したい。