東京室内歌劇場小劇場シリーズ第2回 みるなの座敷|大河内文恵

%e3%81%bf%e3%82%8b%e3%81%aa東京室内歌劇場小劇場シリーズ第2回 みるなの座敷

2016年118日 渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール
Reviewed by 大河内文恵(Fumie Okouchi)

<演奏>
石島正博(指揮)
橋本英志(演出)

おゆき:新藤昌子
幸吉:新津耕平

ソプラノ:小池芳子・栗田真希子
メゾ・ソプラノ:内田裕見子・梶沼美和子
テノール:島田道生・曽根雅俊
バリトン:清水一成・塙翔平

ピアノ:塚田真理

ヴァイオリン:河野彩
チェロ:奥村景
フルート:鈴木芽玖
クラリネット:鈴木悠紀子

<曲目>
第I部 コンサート「石島正博の世界」 ピアノ:塚田真理

石島正博:夜の祈りをささぐれば(1984) 大手拓次詩、栗田真希子
     片恋(1989) 北原白秋詩、梶沼美和子
     どうしてあなたは(2012) 鮫島貞雄詩、塙 翔平
     夜のパリ(新作初演) J.プレヴェール詩 小笠原豊樹訳詩、塙 翔平
     わらう(新作初演) 谷川俊太郎詩、内田裕見子
     逸題(新作初演) 井伏鱒二詩、清水一成
     八木重吉の詩による歌曲集(2011) 八木重吉詩、小池芳子

(休憩)
第II部 オペラ《みるなの座敷》 (室内楽ハイライト版) 東京初演

3.11から5年が過ぎ、石巻で生まれ育った作曲家・石島がその想いをどのように音楽にしたのか、それを確かめるために渋谷に向かった。

前半は新作初演3曲を含む、独唱歌曲のコンサート。後半のオペラでアンサンブルをつとめる歌い手がソロを聴かせるという趣向である。大手拓次・北原白秋といった明治・大正に活躍した詩人から谷川俊太郎、フランスの詩人プレヴェールに至るまで、さまざまな詩に作曲された歌曲が並び、それぞれの詩の世界に寄り添った音楽がつけられている。歌い手はそれぞれに素質を持ち合わせていることが窺えたが、音色の変化に乏しかったり、曲の世界観が充分に表現できていない演奏が時折みられたのが残念だった。

オペラ《みるなの座敷》は越後の民話「みるなの座敷」を大きな枠組みとして使い、そこに震災・復興のエピソードを組み込んでつくられている。これは3.11後につくられたものではなく、平成8年作と20年も前の作品であるが、プログラムノートに石島が書いているように、「新潟中越地震、東日本大震災、そして今年の熊本と鳥取」とその後に起きた出来事を経てさらに聴き手の心に迫るものとなっている。

今回は、元々2時間半のオペラを、編成を小さくし1時間ほどに短縮した「室内楽ハイライト版」で上演された。序曲の間は、熱い指揮をする石島と小編成の奏者との間に温度差を感じたが、歌が始まるとまったく気にならなくなった。というよりもむしろ、幸吉役の新津が素晴らしく、それに楽器奏者が引っ張られて熱量があがったようにみえた。

新津は声がよかっただけでなく、演技という面でも幸吉という役がもつ明るさと悲哀の両面を余すところなく表現していた。おゆき役の新藤は、はかなげな娘を可憐な演技と歌唱で好演しており、アンサンブルもそれをよく支えていた。長岡での公演から携わってきたという曽根(彼だけは第1部のコンサートには出演せず)のソロが光っていたことは特筆に値する。

1つ1つ開けられていく部屋を表現した映像はそれぞれ美しく、13番目の悲劇との対比をさらに強めていた。そして何と言っても13番目の部屋が開いてからの幸吉の大切な人を失った喪失感の大きさと後悔してもしきれない苦しみを、そういった感情の押し売りではなく聴かせた<幸吉のアリア>は胸に迫るものがあり、小規模オペラでここまで人を感動させることができるのかと驚くばかりであった。

最後はまさかの夢落ちなのだが、それが救いとなったように感じられるためには今回のハイライト版は短過ぎるように感じた。幸吉の過去をこれだけ丁寧に描くのであれば、「再生する光」(プログラムノートより)に包まれた人々がこの先どのように進んでいくのか、あるいは進もうとするのか、それこそが見たかった。そのもう一工夫があったなら、石島の音楽の美しさがもっと活かせたのではないかと思われる。

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編集部註)石島正博「五線紙のパンセ」