パリ管弦楽団と紀尾井シンフォニエッタ東京の名手たちによる 室内楽版 マーラー 交響曲第4番|藤堂清

%e7%b4%80%e5%b0%be%e4%ba%95紀尾井シンフォニエッタ東京メンバーによるアンサンブル 
パリ管弦楽団と紀尾井シンフォニエッタ東京の名手たちによる
室内楽版 マーラー 交響曲第4

20161129日 紀尾井ホール
Reviewed by 藤堂清(Kiyoshi Tohdoh
Photos by 林喜代種(Kiytane Hayashi)

<出演者>
千々岩英一(Vn)
井上静香(Vn)
篠﨑友美(Va)
エリック・ピカール(Vc)
池松 宏(Cb)
ヴィセンス・プラッツ(Fl)
蠣崎耕三(Ob)
フィリップ=オリヴィエ・ドゥヴォー(Cl)
綱川淳美,前田啓太(Perc)
高橋博子(Harm)
長尾洋史(Pf)
小林沙羅(Sop)

<曲目>
ドビュッシー/B.ザックス編:牧神の午後への前奏曲
J.シュトラウス2世/A.シェーンベルク編:南国のバラ
J.シュトラウス2世/A.シェーンベルク編:皇帝円舞曲
—————(休憩)—————
マーラー/E.シュタイン編:交響曲第4番ト長調
————(アンコール)—————
マーラー/E.シュタイン編:交響曲第4番ト長調 より 第2楽章

紀尾井シンフォニエッタ東京メンバーによるアンサンブル・シリーズ全3回の第2回、紀尾井シンフォニエッタ東京のコンサートマスターでパリ管弦楽団の副コンサートマスターを務める千々岩英一を要に、両団体の名手たちが集い、20世紀初頭のウィーンの会員制サロンコンサート(私的音楽演奏協会)を再現したプログラム。
私的音楽演奏協会は、アルノルト・シェーンベルクが1918年に設立し、演奏機会が少ない当時の「現代」音楽を多くの人に聴いてもらう試みであった。1921年にオーストリアの経済的危機により活動を休止するまで、117回の演奏会を催し154作品を取り上げたという。

この日のプログラムは、ドビュッシーの《牧神の午後への前奏曲》、ヨハン・シュトラウス2世のワルツ《南国のバラ》、《皇帝円舞曲》、マーラーの《交響曲第4番》の4曲。曲ごとに楽器編成が異なり、また、編曲者の違いもあって、音色の変化で楽しませてくれた。
一番小編成な《南国のバラ》は、弦楽四重奏とピアノとハーモニウム。《皇帝円舞曲》は1925年に編曲された版で、ハーモニウムに代わりにフルートとクラリネットが、弦楽パートにはコントラバスが加わる。
《牧神の午後への前奏曲》は、打楽器のみアンティーク・シンバルの一人、他は全員演奏に加わる。マーラーの《交響曲第4番》はすべての器楽奏者とソプラノによる演奏。1993年にアレクサンダー・プラットが改変した版で、管楽奏者はピッコロ、コールアングレ、バス・クラリネットの持ち替えを行う。
この日使用されたハーモニウムは、フランスのミュステル社が20世紀初めに製造していたモデルという。

シェーンベルクの編曲した二曲は耳にする機会もあるが、ドビュッシー、マーラーの室内楽版の演奏頻度は高くない。その点でも貴重なコンサートであり、また演奏自体も充実したものであった。
《牧神の午後への前奏曲》は、原曲がフルートなど独奏楽器が活躍することもあり、弦の編成が小規模となっても、ドビュッシーのオリジナルの響きをかなり保っている。その中で、エリック・ピカールのチェロが曲の流れ、ダイナミクスの核となり、全体を千々岩とともに形作る。この曲では、ヴィセンス・プラッツのフルートに惹きつけられた。
《南国のバラ》では、ハーモニウムが原曲における管楽器の音色をこの編曲に取り込む役割を果たしている。編曲楽譜の販売でコンサートの活動資金を得ようという目的もあったというが、家庭や「ホイリゲ」のような酒場での演奏も視野に入れた小規模な編成であり、もう少し小さ目のホールの方が合っていただろう。それでも、弦楽四重奏を中心とする緊密なアンサンブルが楽しめた。
《皇帝円舞曲》は管楽器が加わり低音が強化されていることもあり、コンサート・ホールでの演奏も問題はない。原曲を思い出しながら、シェーンベルクの編曲との違いを楽しんだ。
マーラーの《交響曲第4番》は、大規模な編成からの編曲ということもあるだろう、13人で演奏される(ピアノは4手の指定だが、今回は一人で対応)。冒頭の鈴から違和感なくマーラーの世界に連れていかれる。第2楽章での調弦を変えたヴァイオリン・ソロは千々岩が弾く、その間のオーケストラ・パートは井上等に割り振られる。持ち替え楽器を使用していることもあり、この規模で演奏しているにも関わらず、よく原曲を再現していると感じた。第3楽章のフィナーレも十分なダイナミクスを持っている。第4楽章「天上の生活」の小林沙羅のソロ、歌詞をしっかりと伝え、ゆったりとした部分、リズミックにたたみかけるところなど表情付けもきちんとしていた。

パリ管弦楽団と紀尾井シンフォニエッタ東京という二つのオーケストラの団員が協調、共演したコンサート、準備の時間は多くはなかっただろうが、実力のある人たち、見事なアンサンブルを聴かせてくれた。

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