バンベルク交響楽団|藤原聡

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2016年11月3日 サントリーホール
Reviewed by 藤原聡(Satoshi Fujiwara 
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi

<演奏>
指揮・ヘルベルト・ブロムシュテット

<曲目>
シューベルト:交響曲第7(8) ロ短調 D759『未完成』
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 op.68『田園』
(アンコール)
ベートーヴェン:劇音楽『エグモント』op.84序曲

2012年以来4年ぶりとなるバンベルク交響楽団の来日は、前回同様終身名誉指揮者のブロムシュテットに率いられてのもの。まずはその日程を見て驚いたのだが、10月26日から11月5日までの11日間に、韓国はソウルから日本各地(福岡、宮崎、京都、名古屋、東京)で何と9回ものコンサート。当初はいくら壮健とは言え、指揮者の89歳という年齢を考慮するに随分な強行軍だといささか心配にもなったのだが、結果それは杞憂に終わったようだ。3日のコンサートはまさに王道中の王道プログラム。であるからこそ、このコンビが今改めてどういう演奏を聴かせてくれるのか、と大いに期待。

89歳という年齢が俄かには信じ難いような颯爽とした足取りで登場したブロムシュテット(昨年のN響登壇時より元気そうに見える)。オケは弦14型(対向配置)と前半の『未完成』の編成はかなり大きい。昨今の演奏スタイルからすればもっと刈り込んだ編成が主流と思われ、これから想像するにいささか大ぶりな表現の同曲演奏となるのだろうか、と考えていたところその予想はあっさりと覆される。古典的にして端正な造形だ。そして、弦楽器がほぼノンヴィブラートなのである。テンポはキビキビしており、リズム的な緩みは全くない。また、沈滞していく箇所と咆哮する箇所との表現のメリハリが大きい。全体としては「厳しい」演奏とも言えるのだが、歌には絶妙なニュアンスが溢れ、歌い交わす弦楽5部には低弦を主体としたすばらしい立体感が付与されているので、厳しさと豊穣さが2つながらにして生きている。

後半の『田園』でも14型。ティンパニはバロック仕様のものに変更。ここでも弦楽器はノンヴィブラートだが、大きな編成なので、響きはすっきりとしながらも決して音が痩せては聴こえない。特筆すべきは第5楽章の演奏である。ここでは冒頭の主題が形を変えつつも様々な楽器に受け継がれながらその豊穣さを増して行くのだが、それがここまで1本の線のように有機的に繋がって聴こえた例をほとんど知らない。そして、良くない演奏で聴くとしばしば退屈してしまう『田園』が、表面的な牧歌性といかにもベートーヴェンらしい構築性とを奇跡的なレヴェルで融合しえた作品なのだ、と改めて思い知る。ブロムシュテットに感謝。

熱狂的な喝采による何回かのカーテンコールの後、ホルンが2名ステージ上に登場、想像していた通りエンコールに『エグモント』序曲。この曲では4年前の来日公演を京都コンサートホールで聴いた際に圧倒された記憶がいまだ生々しいのだけれど、今回もまた素晴らしい。まず冒頭のfのトゥッティから徐々に音量が減衰していく箇所を聴いただけでもこの演奏の高みが分かろうというものだが、この壮大さと深遠さ、これ見よがしでない迫力を伴った演奏はなかなか聴けるものではなかろう。

ちなみに、バンベルク響の響きにはいわゆる「輝かしさ」ないが、その代わりに独特の雑味成分を伴った繊細な味わいがあり(特に弦楽器)、重厚でありながらも少し違った感触を秘める。これがこのオケのルーツであるチェコ(プラハ)由来のものなのかは分からぬが、メカニカルな技術の巧拙とはまた違った魅力を秘めるオケであることは明白である。ブロムシュテットとのコンビでの再来日を期待しておこう。

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