ザクセン声楽アンサンブル・神戸市混声合唱団|小石かつら 

%e3%82%b6%e3%82%af%e3%82%bb%e3%83%b3神戸秋の音楽祭
ザクセン声楽アンサンブル・神戸市混声合唱団
珠玉のア・カペラ ジョイントコンサート

20161027 神戸市東灘区民センター うはらホール
Reviewed by 小石かつら( Katsura Koishi
写真提供:神戸市民文化振興財団 東灘区民センター 

<演奏>
指揮:
マティアス・ユング
松原千振

合唱:
ザクセン声楽アンサンブル
神戸市混声合唱団

<曲目>
【神戸市混声合唱団】指揮 松原千振
S.Leek:コンダリラ
小山清茂:江差追分
間宮芳生:のよさ

【ザクセン声楽アンサンブル】指揮 マティアス・ユング
J.S.バッハ:主に向かって新しき歌をうたえ
     :恐れることなかれ われ汝とともにあり
     :御霊はわれら弱きを助けたもう
     :来たれ、イエスよ来たれ

【合同演奏】 指揮 マティアス・ユング
R.シューマン:ロマンスとバラードより「トゥーレの王」
      :二重合唱のための4つの歌 作品141
      「星に寄せて」「おぼろな光」「確かな期待」「お守り」

平日の昼間、木曜日の午後三時から、という時間帯に区民ホールで行われた演奏会。それがほぼ満席だった。これを見て最初の曲が始まる前にまずびっくり。そして最初の曲、オーストラリアの作曲家シュテファン・リークの「コンダリラ」でまたびっくり。女声団員が会場にちらほらいると思っていたら、その場で歌い始めたのだ。合唱曲では、会場内に散らばって歌うという手法は珍しくはないものの、冒頭から派手に開始したことで会場はザワザワ。そのザワザワが「滝における自然音を自由に発する」という楽曲となぜかうまく合って、心憎い効果を発揮。舞台から客席への一方向の音の流れではなく、会場の方々から音が湧き上がり、それがぽたぽたと雨のしずくのように落ちてきて、湿度が高い空間に音が濃く響くイメージをつくりだす。この曲をずっと聴いていてもいいな、と思ってしまった。

「江差追分」、「のよさ」と民謡が続いたのは、ドイツの合唱団とのジョイントだからだろう。本演奏会は、ザクセン声楽アンサンブル設立20周年を記念して行われた日本公演の初日であった。

神戸市混声合唱団は1989年に設立されたプロの合唱団で、地元神戸市を中心に多くの演奏会に出演している。一方のザクセン声楽アンサンブルは狭義のプロではない。団員は音楽大学出身者というわけではなく、別に仕事も持っている。しかし広範かつ過密に活動し、演奏会だけでなくCD録音も20枚以上に及び、それらは絶大な評価を受けている。

神戸市混声合唱団のしっとりと湿った演奏のあと、黒色に統一はしているものの自由な衣装で登場したザクセン声楽アンサンブルは、すっきりと乾いたハーモニーで、バッハをまるで民族音楽のように歌った。ヨーロッパのクラシック音楽の定義ってなんだったっけと思わせる鮮烈な個性。いや、神戸市混声合唱団が民謡を聴かせてくれたからこそ、その土の香りの空気に包まれたのかもしれない。ザクセンのバッハのモテットは透明かつ純粋でにごりがなく、天上の星のように輝いていた。

だから両者が合同で舞台に乗ったシューマンの二重合唱は圧巻だった。作品に応じて並び順を変え、両団体のひとりひとりが各々交じり合って立つ。前日にドイツから到着して午後に合わせただけだと指揮者がインタビューで語っていたが、その状況はいくら想像してもわからない。旧知の間柄で、常時合同練習しているように思われた。まるで魔法。そして悲しいことに、集中度があまりに高くて、演奏は一瞬で終わってしまった。きっと会場中がそう思ったのだろう。割れんばかりの拍手。最後に演奏されたシューマンの曲の途中から、アンコールとしてもう一度聴かせてくれた。こういうアンコールの仕方、素朴でいいなあと大満足。夕方の通勤ラッシュに巻き込まれて演奏会から帰るのはおかしな感じだったけれど、それも魔法の内という気がした。

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