Pick Up(16/10/15)|柴田南雄音楽評論賞第3回選考発表|丘山万里子

柴田南雄音楽評論賞第3回選考発表

Reported by 丘山万里子(Mariko Okayama)
Photos by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)2016年9月24日@日本工業倶楽部

2013年度より桐朋学園がアリオン音楽財団から引き継いだ柴田南雄音楽評論賞第3回選考会が行われ、3年目にしてようやく奨励賞二人となった。受賞者は仲辻真帆と新田愛。本賞はなし。
今回は従来の 2 編の演奏会評以外に、柴田のメモリアル・イヤーにふさわしく、柴田という存在そのものをテーマにした音楽時評ないし音楽評論の執筆が条件となった。応募作は8編。
船山隆選考委員長の講評によれば、寄せられたこれらの文章には没後20年にして、柴田の音楽や音楽観が若い世代にも着実に浸透しているのが実感できたとのこと。
仲辻は東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程在学中の28歳、新田は愛知県立芸術大学4年生21歳。

以下は船山選考委員長の講評(web版)より。
仲辻は柴田の《優しき歌-柴田南雄と立原道造の「時間的建築」》とのタイトルで、その音楽のリリシズムと立原のポエジーを分析した評論。しばしば登場する〈時間的建築〉というコンセプト自体の定義が不充分ではあるが、柴田の著作と音楽に丹念につきあい、その特質を《優しき歌》に関して明らかにした点は高く評価できた。
個評は、オーケストラ・ニッポニカのコンサートと〈信時潔没後 50 周年コンサート〉で、仲辻の近代日本音楽への一貫した興味が示されていて好感をもった。
新田の《柴田南雄のポストモダニズム》は、柴田の《ゆく河の流れは絶えずして》とシュニトケの《交響曲第 1 番》の比較を通して今日における多様式主義を明らかにしようとした論考。テーマ設定そのものには目新しいところはないが、この問題の論点を整理し、正面から誠実に論じようとする点、そのまじめな態度は評価できた。そのまじめさは、わかりやすい素直な文体によくあらわれており、資料の収集の仕方からも受け取れた。
個評は愛知県立芸術大学の学生オヘラ《フィガロの結婚》と名古屋フィルハーモニー交響楽団のシュニトケとショスタコーヴィチだったが、鋭い批評意識は感じられず、いささか平凡であった。

個人のブログで昨夜のコンサートについて語るのが日常となっている昨今、批評の機能がどこで、誰に必要とされるか。
奨励賞が二人、本賞は3年間なし、という結果とともに、批評の今後を改めて考えさせられる。
詳細:http://www.tohomusic.ac.jp/toho-arion/m_shibata_prize.htm

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船山隆審査員長、新田、中辻

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