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サントリーホール30周年記念 国際作曲委嘱作品再演シリーズ  タン・ドゥン~Takemitsu へのオマージュ|藤堂清

summerfes2016サントリーホール30周年記念 国際作曲委嘱作品再演シリーズ
武満 徹の《ジェモー(双子座)》
タン・ドゥン~Takemitsu へのオマージュ <武満 徹没後20年>

2016年8月26日 サントリーホール
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)
写真提供:サントリー芸術財団

<演奏>
指揮:タン・ドゥン
指揮:三ツ橋敬子⑴ ⑵
フルート:神田勇哉⑶
オーボエ:荒川文吉⑴
トロンボーン:ヨルゲン・ファン・ライエン⑴
バス:スティーブン・ブライアント ⑵
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

<曲目>
武満徹: ジェモー(双子座)
-オーボエ独奏、トロンボーン独奏、2つのオーケストラ、2人の指揮者のための(1971~86)〈サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ第1回委嘱作品〉⑴
—————-(休憩)——————-
タン・ドゥン: オーケストラル・シアターⅡ:Re
-2人の指揮者と分割されたオーケストラ、バス、聴衆のための(1993)〈サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ 第17回委嘱作品〉 ⑵
武満徹: ウォーター・ドリーミング-フルートとオーケストラのための(1987)⑶
タン・ドゥン: 3つの音符の交響詩(2010)

サントリーホール開館30周年を記念し、国際作曲委嘱作品を再演する企画、その第一回委嘱作品である武満徹の《ジェモー(双子座)》が作曲家タン・ドゥンの企画により演奏された。武満の没後20年もあわせて記念するものであった。

武満の《ジェモー》では、二管編成の同規模の二つのオーケストラが別の指揮者の下で演奏を行う。それぞれがオーボエとトロンボーンの独奏を伴っており、二つの協奏曲が同じ舞台上で同時に演奏されているかのようである。とはいうものの、両者が協調する部分、互いに自己主張する部分があるし、独奏楽器以外の楽器が浮き上がってくることもある。武満が初演時のプログラムに、「これは管弦楽作品というよりは、むしろ大規模な室内楽作品の集合」と書いているが、その言葉が自然に受け止められる演奏であった。

二曲目はタン・ドゥンの《オーケストラル・シアターⅡ:Re》。この曲では、バス独唱以外にも声を出すことが要求されている。二人の指揮者、オーケストラ全員、それだけでなく、聴衆も二度にわたり声を出すことになる。彼の言葉を借りれば、「演奏家と聴衆が明確に区別されている芸術音楽」から「儀式としての、娯楽と信仰の友としての音楽」へと立ち戻らせる手段ということになる。メインのオーケストラは三ツ橋が、二階客席の各所に配置されたオーケストラ奏者、聴衆はタン・ドゥンが指揮した。音源が会場全体に分散していることは、音に包まれる感じがして興味深かったが、聴衆が意味の分からない言葉(「ホン・ミ・ラ・ガ・イ・ゴ」)を繰り返すことが タン・ドゥンの目指す儀式への参加とは素直に受け止められなかった。紙や水といった、この作曲家がよく用いる特殊音も効果的に使われているが、いささか既視感をおぼえる。

《ウォーター・ドリーミング》はフルート・ソロが提示する主題をもとに展開する。オーストラリア西部、Papunyaの画家による「Water Dreaming」という絵画に触発され、「主題から派生した多くの旋律的亜種と色彩的な修飾で成立」した作品という。私は後者の「色彩的な修飾」、オーケストラの楽器が組み合わせを変え、音色に変化を持たせながら「流れていく」様に強く惹かれた。

最後の曲、《3つの音符の交響詩》は「ラ-シ-ド(A-B-C)」の音符による主題をもとに展開する。オーケストラの楽員は演奏以外に、大声を出したり、足を踏み鳴らしたりといったことを要求される。利用可能な音はなんでも使うというのは分かるが、必然性がどこにあるか疑問を感じた。

武満とタン・ドゥン、前者がアイデアを音化、内面化しているのに対し、後者はアイデアの音による外形的意味づけに力点を置く。二人の作曲家の個性がよく分かるコンサートであった。

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