東混・八月のまつり 37|藤堂清

まつり東混・八月のまつり 37
林光メモリアル
東混創立60周年記念 連続定期演奏会No.1

2016年8月9日 第一生命ホール
Reviewed by 藤堂 清(Kiyoshi Tohdoh)

<演奏>
指揮:大谷研二
ピアノ:斎木ユリ
合唱:東京混声合唱団

<曲目>
林光:原爆小景(詩:原民喜)
  水ヲ下サイ/日ノ暮レチカク/夜/永遠(とわ)のみどり
—————-(休憩)——————-
林光:宮沢賢治の詩による混声合唱曲集
  無声慟哭
    鳥のように栗鼠のように/二疋の大きな白い鳥が/蜂が一ぴき・・・/きょうのうちに
  わたくしという現象は
  北上川は熒気をながしィ
  冬と銀河ステーション
新実徳英:祈りの虹
  I.”炎”/II.”業火”より/III.(Vocalise)/IV.”ヒロシマにかける虹”
—————-(アンコール)——————-
新実徳英:重なり合う手と手
宮沢賢治:星めぐりの歌(林光編曲)

東京混声合唱団が毎年8月に行ってきた「八月のまつり」、林光の《原爆小景》を中心としたプログラム、今年はこの合唱団の創立60年ということで、それを記念した連続定期演奏会の第1回として行われた。原民喜の詩による《原爆小景》の作品成立過程、「八月のまつり」の由来などは、丘山編集長のカデンツァ|オバマの広島と林光『原爆小景』|(http://mercuredesarts.com/2016/06/06/カデンツァ|オバマの広島と林光『原爆小景』|)にくわしい。

第1部<水ヲ下サイ>、冒頭、「水ヲ下サイ アア 水ヲ下サイ」と女声が静かに歌いだし、他の声部が徐々に加わり、「死ンダハウガマシデ」でピークとなり、その後再び抑えた声で「水ヲ、水ヲ」と繰り返し、「天ガ裂ケ 街ガ無クナリ」でまた大きく盛り上がる。原民喜の詩自体の力もあるが、林の音楽の持つ反原爆の訴え、半世紀過ぎても力強い。 毎年この曲を歌い続けてきている東京混声合唱団、米大統領の広島訪問のあった今年、より強く訴えかけるものがあったように感じた。人の声だけの音楽は人間の一番奥底まで揺する力がある。

後半は、林光の宮沢賢治の詩による合唱曲と、新実徳英のヒロシマを歌った<祈りの虹>がとりあげられた。
最初の《無声慟哭》は、賢治が妹トシ(とし子)の死の悲しみをうたった詩に付曲された無伴奏合唱曲。身近な人間の死と向き合うことは誰にでも起こりうること。林の作品は賢治の詩と同じように、内に秘めた思いを静かに歌いだす。
新実の《祈りの虹》は、もともと男声合唱のために書かれた。作曲家自身、演奏機会が増えることを望み、混声合唱へ編曲している。ピアノが入ることもあり、かなりダイナミクスの大きい曲となっている。こちらの演奏では、限界近くまで声を張るところもあったが、作品の求めるものを十分に充たしていた。

戦後71年目の「八月のまつり」、プログラムに指揮者・大谷が書いているように、「日本が『戦争をしない国』であったのは本当に良かった」という気持ち、それが核廃絶に向けた動きに着実につながるよう努力することが求められている。