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撮っておきの音楽家たち|ギドン・クレーメル|林喜代種

ギドン・クレーメル(ヴァイオリン奏者)

2016年6月7日 サントリーホール
photos & text by 林喜代種(Kiyotane Hayashi)

今年の6月来日公演で、ギドン・クレーメルはピアノの共演者に2015年チャイコフスキー国際コンクール4位のリュカ・ドゥバルグを選んだ。来年70歳になるクレーメルにとっては、これまでアルゲリッチ、ツィメルマン、シフ、アファナシエフなど同時代のヴェテラン・ピアニストと共演してきたが、今回最も若い世代で1990年生まれのフランス出身で話題のリュカ・ドゥバルグである。その理由は「最も興味を惹かれた個性」が彼だったからだと語っている。
近年クレーメルは未来を担う次世代の演奏家と盛んに共演している。1997年クレーメルが50歳の時に立ち上げた「クレメラ―タ・バルティカ」が来年創設20周年を迎える。この室内オーケストラはバルト三国の若い演奏家を集めた楽団である。
創設時のメンバーは4人残っているが、あとは若いメンバーであるものの、演奏の質は維持されているという。
クレーメルはまたマスタークラスにも意欲的に取り組んでいる。「年長者として次の世代のために橋をかける可能性をいつも探しているから」とも語っている。
ギドン・クレーメルはラトビアのリガ生まれ。4歳より父と祖父よりヴァイオリンの手ほどきを受ける。7歳でリガの音楽学校に入る。16歳で国内の音楽コンクールで優勝。モスクワ音楽院ではダヴィッド・オイストラフに師事。パガニーニ国際コンクールやチャイコフスキー国際コンクールで優勝。1975年初来日。今回の来日公演では「アナザ―・ロシア」とよく知られている「フランスもの」の2つのプログラムで聴衆を魅了した。
演奏が終わって袖に引っ込む時、ピアノのリュカ・ドゥバルグをクレーメルが労わるような仕草が印象的だった。「ラジオから流れる音楽を20秒聴いて、それが誰の音楽で、どのような作風をもっているのかが分かるかどうか」「似たような音楽や演奏が溢れている時代だから自分の道を進み、個性を育てなさい」と助言していると語っている。

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