注目の1枚|シベリウス:交響曲第3番 ハ長調 op.52|藤原聡

ジャケットシベリウス:交響曲第3番 ハ長調 op.52
同:第6番 ニ短調 op.104
同:第7番 ハ長調 op.105

ミネソタ管弦楽団
指揮:オスモ・ヴァンスカ

text by 藤原聡(Satoshi Fujiwara)

録音:2015年5月、6月
録音場所:オーケストラ・ホール(ミネアポリス)

レーベル:BIS
商品番号:BIS-2006(SACDハイブリッド)
輸入盤オープン価格

ヴァンスカとミネソタ管弦楽団のシベリウス:交響曲全集がこの度めでたく完結した。2011年6月に第1弾である第2番と第5番、2012年5月&6月に第2弾となる第1番&第4番を録音、それぞれすぐにリリースされていたのだが、その後にミネソタ管弦楽団の理事会と楽団員の労使紛争でオケ内部が決裂状態となり、それに嫌気がさしたためかは定かではないがヴァンスカが音楽監督を辞任してしまう。これでシベリウスの残りの3曲は録音されずじまいか…、と思っていたところに、多くの要望とヴァンスカ自身の強い希望のため、昨年5月と6月にその3曲が録音されたのだ。

さてその演奏であるが、彼らのこれまでの2枚のシベリウス録音、あるいは昨年11月のヴァンスカ読響客演時の演奏を聴かれた方ならばお気付きと思うが、ことシベリウスの交響曲の演奏に関しては、この指揮者のラハティ交響楽団時代のものとは最近の演奏はかなり趣が異なって来ている。ラハティ時代のものは、オケの響きを精緻かつ綿密に練り上げ、解釈自体もあまりドラマティックな方向に踏み切らずに音楽の静謐さを前面に感じさせるものであった。対して、ミネソタとの録音(そして来日時の読響との演奏)で感じられるのは、その音楽はよりドラマティックに、テンポや音量の対比も大きくなり、いわば豪放になっている。その精緻な音響構築は変わらないものの、ヴァンスカの中でのシベリウスの捉え方に変化が現れている、と思われるのだ。

今回の3曲。第3番では第1楽章でのリズムの微細な変化、第2楽章での非常に遅いテンポを採用した沈鬱な表情(第2番でも第2楽章のテンポがラハティ盤に比べ相当に遅くなって「濃厚化」していたのを思い出す)、第6番での、一般にイメージされるような清澄さ(吉松隆氏は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」とのイメージの類似について書かれている)とはやや相貌の異なる、いささか激しい音楽としての構築、そして第7番での、幻想的というのとは感触の違う、非常にリアリスティックで生々しい音楽(テンポ変化の巧妙さが特筆される)。以前の2枚の録音と当録音では3~4年の開きがあるが、最初の2枚でともすると感じられたオケの「アメリカ臭」(具体的には金管楽器)は当録音については全く感じられず、さらに指揮者とオケのシンクロ度も明らかに高まっていることが感じられる。よりヴァンスカの「音」になっているのだ。

今回の3曲(そして前の2枚)、最大公約数的なシベリウスのイメージには必ずしもはまらない音楽が展開されている。よりスタンダード的な演奏をお求めならラハティ盤、さらに踏み込んだ個性的な演奏を聴きたいのならばミネソタ盤。だがしかし、両方聴くのが1番である。ヴァンスカの変貌。演奏解釈の多様さ。様々な条件の違いから立ち表れる音響の差異。これは楽しい。